旧日立航空機立川工場変電所
画像提供:東大和市立郷土博物館

壁に生々しい銃痕、戦禍伝える旧日立航空機立川工場変電所が8月公開

東大和市の文化財、これまで見学できなかった2階も初公開

テキスト:
Genya Aoki
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東京都立東大和南公園の一角に、第二次世界大戦中にタイムスリップしたかのような生々しい傷跡が無数に残る戦災建造物があるのを知っているだろうか。

この旧日立航空機立川工場変電所は、戦争末期に数多くの空襲を受け、壁面に無数の銃撃跡が残っている文化財だ。2020年から改修工事のため公開を中止していたが、2021年8月後半ごろに工事を終え、公開を再開する予定であることが分かった。今回、これまで見学できなかった2階の一部も初めて公開する。

旧日立航空機立川工場変電所
画像提供: 東大和市立郷土博物館

同施設は、昭和13(1938)年に建設された軍用機のエンジンを製造する軍需工場に高圧電線で送られてきた電気の電圧を下げて、工場内へと送る重要な施設として稼働。そのため、太平洋戦争末期になると数多くの空襲を受けた。昭和20(1945)年には、3度の攻撃にさらされて、従業員など100人以上が死亡、工場の8割方が壊滅したとされている。変電所は爆風で窓枠や扉が吹き飛び、壁面には機銃掃射や爆弾の破片による無数のクレーター状の穴ができた。しかし、鉄筋コンクリート製の建物本体は生き残り、スレートや編み機の製造など平和産業に転換、1993年まで操業を続けた。

東大和市は、外壁に刻まれた生々しい爆撃の傷跡などが「戦争で多くの尊い命が犠牲になったことを雄弁に物語っている」として、1995年に文化財に指定。戦争の悲惨さや平和の尊さを伝えるため、2016年からは月に1回公開されてきた。

2020年から耐震補強の必要性や老朽化による雨漏りのため、公開を中止。弾痕を残しながらの外壁の補修や、耐震補強などを実施。ついに2021年の夏に完了し公開を再開、今後は週2回の頻度で内部観覧できるようにしていく。

この夏は、貴重な戦災建造物を通して、戦争の愚かさと平和の素晴らしさを感じてみては。

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