奈良の新名所へ、鹿猿狐ビルヂングの5つの見どころを紹介

ミシュラン一つ星の人気店、シオによるすきやき専門店やギャラリーなどが入居

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Time Out Tokyo Editors
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2021年に奈良観光の拠点となる、鹿猿狐ビルヂングが2021年4月14日(水)、ならまちエリアにオープンする。鹿がトレードマークの中川政七商店 奈良本店、奈良初出店となる猿田彦珈琲、ミシュラン一つ星を獲得した人気店シオ(Sio)によるすきやき店の㐂つね(きつね)が出店し、奈良の町に新しい風をもたらしている。新しいビルと歴史ある建造物が調和し、3フロアと離れで構成された、古くて新しい複合施設での過ごし方を体感してきた。

1. 奈良晒の歴史をひもとく。 

鹿猿狐ビルヂング 布蔵(Photo:中川政七商店)
鹿猿狐ビルヂング 布蔵(Photo:中川政七商店)

鹿猿狐ビルヂングが志すのは、「古きから学び、進化し続けること」だ。300年の歴史を紡いできた中川政七商店の歴史を体感できる蔵を生かしたギャラリースペース時蔵には、生活文化の歩みを描いた屏風(びょうぶ)やアートを展示。壁面に毎年の成果物を資料として保存している421年分の桐箱引き出しがずらりと並び、フォトジェニックだ。

また、手績み手織りの麻のものづくりに触れられる布蔵には、祖業である麻に関する道具や機織り機を展示。実際に手績み手織りの麻を織る作業を見学でき、奈良の生活文化を体感、作り手と交流できるのがうれしい。麻のはがきに染型を使ってステンシルするなど、気軽に参加できるワークショップもあるのでぜひ体験してほしい。

鹿猿狐ビルヂング 時蔵(Photo:中川政七商店)
鹿猿狐ビルヂング 時蔵(Photo:中川政七商店)

また、300年を巡る本店ガイドツアーも定期的に開催する。築130年の町家、旧 遊中川 本店には、当時、麻織物の問屋として検品をするための竿(さお)や、1925年の『パリ万博』に出展した賞状や麻のハンカチーフなどが置かれ、麻織物の問屋として商いを続けていた歴史が感じられるだろう。

2. 限定商品をチェックする。 

鹿猿狐ビルヂング 新本店(Photo:中川政七商店)
鹿猿狐ビルヂング 新本店(Photo:中川政七商店)

1階と2階のフロア全体は中川政七商店の旗艦店だ。奈良晒(ならざらし)の問屋として300年の歴史を持つ同店のオリジナル商品をそろえ、アイコンとなるかや織ふきんをはじめ、生活雑貨が並ぶ。植物で染めた花ふきん、赤膚焼の小皿や箸置き、吉野和紙のポストカードなど、奈良の工芸を生かした鹿猿狐ビルヂング限定品もユニークだ。なかにはアートピースというべき伝統工芸の作品も、美術館のようなショーケースに展示されている。

約126坪の敷地面積に建てらた3階建ての新築部分を設計したのは、日本を代表する建築家の一人、内藤廣。歴史あると街並みと調和した瓦屋根が特徴で、古き良き風情とモダンな風景が自然になじむ。

2階には、ならまちの風景をゆったりと眺められるライブラリーコーナーがある。奈良の文化や生活をテーマにセレクトされた本もまた購入でき、「探す、選ぶ」ためだけではなく過ごすための空間となっている。 

3. 庭や鹿の屏風を愛で茶道をたしなむ。

Photo:SATOSHI ASAKAWA
Photo:SATOSHI ASAKAWA

奈良町店では茶道の新しい楽しみ方や学び方を提案している。季節のうつろいが感じられるおいしい菓子や選りすぐりの茶を、庭や鹿の見事な絵屏風を鑑賞しながら味わえる。奈良、樫舎監製の茶論オリジナル『葛焼き団子』はぜひ試してほしい。3つの異なる皮とあんが1本で味比べできて楽しい。

鹿猿狐ビルヂング 茶論(Photo:中川政七商店)
鹿猿狐ビルヂング 茶論(Photo:中川政七商店)

茶道体験は気軽に抹茶をたてられる抹茶と菓子つきの『自点て』(1,980円)、室町時代から伝わる茶の種類を飲み比べる『茶カブキ』(2,750円)、フォーマルな茶会、茶事の流れを学べる『茶事』(3,300円)の3種。

目の前で抹茶をたてた、濃茶ラテや煎茶などのテイクアウトができるスタンドもある。より気軽に、日常的に茶道を取り入れてほしいという気持ちが伝わってくる。開放的なテラス席で飲む濃茶ラテもまた格別だ。 

4. 奈良と東京の融合を味わう。

Photo:SATOSHI ASAKAWA
Photo:SATOSHI ASAKAWA

鹿猿狐ビルヂングの猿と狐の由来は、恵比寿で創業した猿田彦珈琲の「猿」と、代々木上原のシオによるすき焼き店㐂つねの「狐」からきている。東京で人気の飲食店が、この古都奈良でどんな化学変化を起こすのかも楽しみだ。

猿田彦珈琲では、中川政七商店の萬古焼の器で提供される『欧風バターカレー』や『ビーフストロガノフ』などのカフェメニューも展開。中川政七商店のグラスでアルコールドリンクも販売するなど、ゆったり過ごせるメニュー構成になっているのが特徴だ。感動したのは、和三盆のアイスクリームを乗せたラテフロート。爽やかな甘みが口いっぱいに広がり、まさに猿田彦珈琲と奈良の食文化との融合に驚いた。

すき焼き専門店、㐂つねのすき焼きのコースでは、大和牛を初め、先付け、サラダ、葛そうめんなどに、奈良県産の食材をふんだんに使用している。食を通じておおらかな奈良の自然の中で過ごすぜいたくを勧めている。

5. 五重塔を眺めて仕事をする。

Photo:SATOSHI ASAKAWA
Photo:SATOSHI ASAKAWA

設内でもっともユニークな点は「働く場」でもあるということ。3階のジリン(JIRIN)は、コワーキングスペースとなっており、興福寺を望む心地いい空間で仕事ができる。奈良に魅力的なスモールビジネスを生み出す「N.PARK PROJECT」の拠点でもあり、奈良の地の風土や歴史、新しさを感じる経営者を応援し、横のつながりをもたらそうという試みだ。 すでに堀内果実園やTOUN、菩薩咖喱などの成功事例も多く、奈良の町を活性化し、住む人や訪れる人の生活を豊かにするプロジェクトとして注目されている。

奈良の風景
奈良の風景

コワーキングスペースの定期契約者は、猿田彦珈琲で割引を受けられるなどの特典も。定期契約以外にもコワーキングスペースでは、1日1,500円、3時間1,000円で滞在し、デスクを使用することができる。五重の塔と向き合いながら、作業をすれば新しいアイデアも生まれ、奈良の町に刺激を受け、モチベーションもアップしそうだ。さまざまな奈良の魅力を発信し、人や文化が交流するスポットに足を運んでみてはいかがだろう。

テキスト:間庭典子

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