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東京を揺るがす『ガス人間』は何がすごい?注目したい5つのポイント

ヤクザも警察も翻弄される五つ巴の攻防

Rikimaru Yamatsuka
テキスト
Rikimaru Yamatsuka
作家
ガス人間
『ガス人間』 | UTA演じるガス人間
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1950年代、『ゴジラ』が人気を博していた東宝が、「低予算でも面白い特撮を作れないか?」という発想から制作した『変身人間シリーズ』。その第3作目にあたる『ガス人間㐧一号(1960)』が、このたび66年の時を超えて全8話のドラマシリーズ『ガス人間』として現代版リブートされた。

生放送のテレビ番組で出演者が突如として膨張しそのまま爆死、この怪事件の犯人であると主張する「ガス人間」を追って、正義感に満ちた警部補の男性と、なにやらワケありそうな報道記者の女性がやがて巨大な陰謀に巻き込まれていく……。というSFサスペンスである。

Netflixで2026年7月2日から配信されるや否や話題呼びまくりの本作だが、本稿ではその5つの見どころを紹介したい。

1. 群像劇としてのおもしろさ

ガス人間
『ガス人間』小栗旬と蒼井優

本作はあらすじやティーザーをみるかぎり、物理攻撃は通じないわあらゆる障壁をすり抜けるわワンピースのスモーカー大佐みたいな異能力をもつ「ガス人間」に、パンピーどもが翻弄されおびやかされるという二項対立型のシンプルなパニック映画に思えるが、その構造はかなりトリッキーだ。

ガス人間VSパンピーではなく、実際は、「ガス人間VSヤクザVS警察VSメディアVS政治家」という五つ巴の構図でドラマが進行する。作劇と人間関係の構築を同時に進めながら、登場人物ひとりひとりがそれぞれ持っている「謎」や「秘密」を解き明かされていく構成は、まさしく群像劇である。

登場人物も派閥もムチャクチャ多いのに、うまく交通整理されていて、かなり観やすいのもポイント。

2. いとしのエリー!

サザンオールスターズ
Netflixシリーズ「ガス人間」世界独占配信中サザンオールスターズ

本作で鍵を握るのはサザンオールスターズの名曲「いとしのエリー」である。

ある楽曲があらゆる登場人物を繋ぐ群像劇というと『マグノリア(1999)』があるが、本作は「いとしのエリー」が事あるごとに流れ、しかもそれが単なるダッサイコテコテの感動演出にとどまらず、ドラマを貫通し牽引するマクガフィンとして機能している。

この大ネタ使いっぷりは勇気ある大英断だし、とてもセンスが良い。ちなみに桑田佳祐は作曲したとき、それを原由子のまえでピアノで弾き語ったのちにプロポーズしたという。

3. VFXがすごい

ガス人間
『ガス人間』UTA演じるガス人間

見どころといえば、そりゃあなんといってもタイトル通り「ガス人間」である。壁を抜け、空を飛び、車をひっくり返す異形のおそろしさを、実にうまく映像で表現している。VFXを担当したのは『シン・ウルトラマン』や『ゴジラ-1.0』などを手がけてきた世界的クリエーターチーム・白組であるが、質感表現がすばらしい。

オリジナル版は手描きアニメやドライアイスを用いてガス人間の異形ぶりを表現していたが、本作はそこにリスペクトを捧げつつも、ちゃんと当世風のリッチな画作りをみせている。

エピソード3の、ガス人間から逃げ惑うカーチェイスシーンなどは、マーヴェル作品などと比較しても遜色のないクオリティーで、「日本ですごいアクションなんか撮れるワケないよ(笑)」という向きを黙らせるだけの画力がある。

4. 脚本のうまさ

ガス人間
『ガス人間』劇中シーンより

本作はたんなる娯楽サスペンスではなく、社会派としての側面も持ち合わせている。社会的弱者からの搾取やメディアの暴力性など風刺的な描写が多く盛り込まれており、権力構造を批判し、「仕方がなかった」という言葉が権力者をふとらせているのだと告発する本作は、かなりシリアスだ。このあたりの社会性は『イカゲーム』にも通ずるところがある。

オリジナル『ガス人間第一号』も安保闘争などの社会的背景を取り入れた左派的情熱の強い作品だったが、本作もその精神性を受け継いだような形か。本作はそれらが単なる、「これはリベラルでソーシャルなポリティカル・コレクトネスに配慮した作品なんですよ~~~」というアリバイ作りのための演出に終わらず、人物描写やサスペンス部分にもちゃんと接続されている点が秀逸だ。

脚本は『寄生獣 -ザ・グレイ-(2024)』のヨン・サンホとリュ・ヨンジェが共同執筆しているが、とにかくこのコンビは作劇がひじょうにうまい。うまいだけでなく、センスがナウい。緊迫したシーンの中にもユーモアをまじえるというジェームズ・ガン以降のハリウッド作劇法を採用しており、随所で光るギャグセンスにはおもわず唸らされる。

全体的にトリッキーだし、オルタナティヴ。メジャー邦画やドラマにもっとも欠けている感覚かもしれない。

5. キャストが豪華

ガス人間
『ガス人間』広瀬すずと林遣都

まぁ、なんやかんやキャストが豪華ということだ。これにつきるというか、これだけで観る価値がありまくる。本作はNetflixと東宝がガップリ組んで制作されたシリーズだが、往年の東宝をおもわせる実に華やかなキャストとなっている。

しかもその豪華っぷりをことさらにアピールするのでなく、「え? あの役って◯◯がやってたの? うっそー!」となるような、意表を突くかたちで登場させている点は大きな見どころ。事実、筆者は本作の竹野内豊と広瀬すずを鑑賞後に検索して初めて気づいた。こうしたキャスティングの妙を支えているのは、各キャストの確かな演技力である。

主役を演じた小栗旬と蒼井優の的確な演技プランは、ややもすると突拍子もなくみえるSFドラマにリアルな重厚感を与えることに成功しているし、ガス人間を演じるUTAの存在感は圧巻だ。これが演技初挑戦だというから、おそるべき大器である。本作の「色気あるヴィラン」は、オリジナル版には無かった要素のひとつであろう。

とにかくみなさん素晴らしいのだが、小栗の叔父で警視総監の役を演ずるピエール瀧の芸達者ぶりにはもはや拍手である。ピエール瀧が小栗旬にタバコを差し出しながら「体に悪いものはうまいんだ!」と力説するシーンなどはもう何ていうか、確信犯でしょう。

Netflixシリーズ「ガス人間」世界独占配信中

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