展覧会「Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村」会場風景
Photo: Museum of Mom's Art

渋谷で「おかんアート」の展覧会が開幕、都築響一がキュレーターとして参加

1000点以上が集結、不要品を使った才能あふれる作品群

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
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「おかんアート」の展覧会『Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村』が、東京都渋谷公園通りギャラリーでスタートした。「おかんアート」とは、中高年の主婦などが、身近にあるものを材料に制作した作品のことだ。会場には1000点以上が集結し、専門的な美術教育とは関わらない制作者による創作やその表現と魅力に迫る。ここでは、展覧会の見どころを紹介する。

1. 日常から生み出されるクリエーティブな作品群にうなる。

本展は、作家で編集者、写真家の都築響一と、兵庫を拠点に活動する「下町レトロに首っ丈の会」の共同キュレーションにより実現。都築が「おかんアート」に興味を持ったのは、立ち寄った道の駅で売られている地元の「おかん」たちが作った手芸品に出合ったことがきっかけだった。全国で同様のものが作られているが、制作者の個性がにじみ出ている魅力を伝えたいという思いが、本展に込められている。

展覧会「Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村」作品展示風景
展覧会「Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村」作品展示風景

 会場に並ぶのは、家族が寝静まった後に居間で黙々と作ったハンドメイド品や、茶と菓子を囲み女子会を楽しみながら完成させたオブジェなど。作品を一つ一つ見ていくと、折り紙で作ったくす玉、布ぞうり、毛糸で編んだぬいぐるみといった、実家や祖母の家で見たことのあるようなものばかりであることに気付くだろう。それもそのはず、手芸キットや作り方の本を見本に制作することが多いため、伝統工芸品のような固有の風土は影響されず、全国どこでも共通の様式となるのだ。

展覧会「Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村」作品展示風景
展覧会「Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村」作品展示風景

素材に使われているのは、結束バンドやみそ汁で余ったアサリの貝殻、チラシ、つまようじなど、誰の家にもあるようなものばかり。不要品を再利用し、生まれ変わらせるという、知恵とクリエーティブな発想に思わず感心してしまう。 

展覧会「Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村」作品展示風景
展覧会「Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村」作品展示風景

実用性に優れた作品も多く、老眼鏡を置く台やトイレットペーパーのケース、手拭きタオルなど、家の雰囲気を温かくするかわいらしい装飾が施されている。

 2. 無名だった制作者の圧巻の才能を見つける。

特別展示『おかん宇宙のはぐれ星』では、都築が注目する3人の表現者による作品を紹介している。

特別展示「おかん宇宙のはぐれ星」荻野ユキ子 作品展示風景
特別展示「おかん宇宙のはぐれ星」荻野ユキ子 作品展示風景

早稲田松竹の清掃員として働いていた荻野ユキ子は、劇場にあるトイレの棚を飾りたいという思いから、総菜のトレー、牛乳パック、菓子のおまけといった廃材で「ミニジオラマ」を作ってきた。荻野が生み出す小さなステージは、トイレの中でも思わず見入ってしまうような物語性が感じられる。「オギノアート」と呼ばれ、劇場の常連にはファンも多い

特別展示「おかん宇宙のはぐれ星」会場風景
特別展示「おかん宇宙のはぐれ星」会場風景

高校時代に独学で切り絵を始めた嶋暎子は、広告チラシや雑誌を切り取りコラージュ作品を作ったり、新聞紙でしゃれたデザインのバッグを手がけたりするようになる。壁に展示された大きなコラージュ作品は、キャンバスに広告チラシを切り抜きを貼り付けて作られており、その緻密な表現は鑑賞者を圧倒させるインパクトだ。

大阪の障害者支援施設に入居する野村知広は、広告チラシを折って作る「チラシ箱」を大量に生産していた。実用的に使われるものであることから作品と認識されてこなかったが、ある職員に束の断面や折り目が美し過ぎると評価されたことがきっかけで、世に出ることへ。並べられた作品の全体像を眺めると、束ねることで偶然にできた色彩のコントラストや模様の面白さが魅力的である。

3. 身近な「おかんアート」を発見する。

展覧会「Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村」作品展示風景
展覧会「Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村」作品展示風景

現在TwitterInstagramで、「#おかんアート村」を付け、自分の身近にある「おかんアート」を投稿できる企画も実施中だ。オンライン上の展覧会『クラウド・ミュージアム』が完成されるようになっており、投稿された写真は会場の廊下にあるスクリーンにも投影される。作品づくりを楽しむ自身の親や祖母も、実は「アーティスト」であることを認識してもらう機会になるかもしれない。

展覧会は2022410日(日)まで開催。日常から作品を生み出す「おかん」の隠れた才能を感じられる展示となっている。

Museum of Mom's Art ニッポン国おかんアート村』の詳細はこちら

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