「マトリックス レザレクションズ」について知るべき7のこと

2021年12月公開のシリーズ4作目を「デコード」

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Andy Kryza
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私たちが最後に『マトリックス』の世界に入ったのは、約20年前。史上最も象徴的で影響力のあるこの映画シリーズは、『レボリューションズ』で賛否両論のうちに幕を閉じた......。そう思っていた人も多いだろう。

しかし、この冬に続編『マトリックス レザレクションズ』の全世界公開が決定した。黙示録後のハイテクが発達した世界へ再び引き込まれ、カンフーの革命家たちが機械に立ち向かう姿を目にすることになる。

本作でも、キアヌ・リーブスは『マトリックス』の「生みの親」である監督のラナ・ウォシャウスキーと戦いに戻る(長年の協力者である妹のリリーは不在)。それ以外は、2019年夏に新作の計画が発表されてから、かなりのことが伏せられてきた。

1999年公開の1作目で、洗練されたデジタルノワール(デジタルと黒)なデザインとマシンガン撮影によるアクションシーンで映画界に衝撃を与えて以来、神秘性が魅力のシリーズであるから、それも当然かもしれない。

ここでは『マトリックス レザレクションズ』について、分かっているいくつかのことを紹介する。

1. 予告編の公開

2021年9月初旬、シリーズ公式ウェブサイトであるWhatistheMatrix.comが復活。予告編公開までのカウントダウンが分単位で表示され、ユーザーに「赤いカプセル」か「青いカプセル」のどちらかをクリックするように促すという、ちょっとしたバイラルマーケティングが行われた。

そして2日後、ついに公開された予告編は、ジェファーソン・エアプレインのサイケデリックな曲『ホワイトラビット』が流れる、神秘性とアクション性が盛り込まれたものだった。

詳細や意味合いについては後述。ただ、目を見張るような映像にはミステリー、重力無視のパルクール、バイクチェイス、破壊的なカンフー、真面目なこのシリーズでは意外なユーモア、そしてたくさんの銃など、期待を裏切らない要素が満載だ。

2. 新作の公開時期

当初は2022年4月に公開予定だったが、2020年、アメリカでの公開日が2021年12月22日(水)に繰り上げられることが決定。新作の進行状況だけでなく、(アメリカでは)最近のほかのワーナー・ブラザース作品と同様、今作が劇場公開同日にHBO Maxでも公開されることが明らかにされたことに、多くの人が驚いた。

ロックダウンも緩和され、映画館の営業が再開されつつある今、HBO Maxはこの公開モデルを撤回するのではないかという憶測もある。しかし今のところ、新しい『マトリックス』を劇場公開と同時に家庭でも視聴できるようにすることは、堅持されるようだ。

3. ストーリーの手がかり

『マトリックス レザレクションズ』は、シリーズ1作目で登場した、機械が支配し、人間が電池になる秘密の世界と同様、その詳細は極めて曖昧だ。しかし、今回の予告編には、このリバイバルが一体何なのかを示す、多くの手がかりが見られる。

前回の『マトリックス』では、キアヌ・リーヴズ演じる「選ばれし者」(ネオ)は、ヒューゴ・ウィーヴィング演じる破壊的なエージェント・スミスを打倒。人類、そして人類を奴隷にしていた機械の両方に救いを与えた後、キリストのようなポーズをとって死んだ。一方、キャリー・アン・モス演じるトリニティも、大乱闘の前に殺害されている。

新作予告編の冒頭は、トーマス・アンダーソンに戻ったかのように生きているネオが、現代のサンフランシスコで普通の生活を送るシーン。彼はマトリックスにおける「死の前の冒険」を知らないようにも思えるが、緑のデジタルグリッドが見え、実存的危機に陥ってしまう。セラピストから処方された真っ青なカプセルを飲み続けることで、自分を抑えているようだ。

続きのシーンで、ネオは生きているかのように見えるトリニティとインディーズ書店で再会。その時点では、どちらも自分たちのつながりを理解していないようだが、その後は肩を並べて戦っている。

Photograph: Warner Bros. Pictures
Photograph: Warner Bros. Pictures

若き日のモーフィアス(あるいはそう思われる人物)も登場。ネオとその人物がスパーリングをしているのは、1作目に登場のと同じような道場だ。これは、ネオが武術の達人であることを自認した「カンフー習得」のセリフから始まるトレーニングシーンを再現したものだろう。ただ、予告編でのネオはすでにゴッドモードになっており、日本風の建物をゆがめながら、相手を体当たりで倒している。

いくつかのシーンでは、ネオが鏡を使ってさまざまな場所を移動。これまでのシリーズ作品でも見られたルイス・キャロルの雰囲気がより強くなっているといえる。さらに、ネオが邪悪なエージェントに追われる前に、狭い場所に身を隠している様子も見られる。

短い予告映像の中には、アクションシーンもたっぷり。例えば、トレンチコートを着たヒーローと悪役は壁を超え、中に浮いて行き来する。バイクチェイス、高速列車での爆発的な戦いも見られ、触手のついたロボットや人間電池、サブマシンガンを2丁振り回すキャラクターたちも登場。そしてネオがその力を最大限に発揮し、念力でヘリコプターにミサイルを撃ち込む場面もある。とにかく、すごい映画になりそうだ。

ストーリーに関して、新作にはタイムトラベルの要素があるのではないかとの憶測があるが、リーブス自身がIndieWireに「過去に行くことはない」と語り、そのうわさを否定している。

4. 1作目との関連

Photograph: Warner Bros. Pictures
Photograph: Warner Bros. Pictures

予告編には、ネオの目覚め、赤いカプセル、カンフートレーニング、街でヒーローを導くたくさんのウサギのタトゥーなど、1作目に登場した多くの要素が盛り込まれている。しかし、今回の新作がこれまでの作品からどのように変化するかを予想して結論付けるのは、あまりにも早い。『マトリックス』シリーズの面白みの一つは、人々にいろいろ想像させたり、暗唱に執着させたりするところのはずだ。

この予告編は既視感があるのは確かだろう。暗唱についても、ややメタ的なコメントも散見さられる。しかしファンは、既視感とはマトリックスでの不具合を意味することを知っているはずだ。新作の全貌が明かされていないわけだから、予告編に出てくる要素が1作目と重なるのはむしろ当然といえる。

5. 引き続き登場するキャラクター、キャスト

ネオとトリニティは死からよみがえるトップスターであるが、生身の人間としてであるのか、彼らの個性に基づいた新しいプログラムとしてであるのかは、まだ分からない。

ナイオビ(ジェイダ・ピンケット・スミス)は、フランスの情報売買プログラムであるメロビンジアン(ランバート・ウィルソン)、悪役のエージェント・ジョンソン(ダニエル・ベルンハルトが)らと共に登場。ナイオビは、これまでの続編には短時間しか登場しなかったものの、ビデオゲームのスピンオフ作品では重要な役割を果たしていた。

残念ながら、このシリーズのスター2人が戻ってこないという事実も受け止めなければならない。ヒューゴ・ウィーヴィングは、タイムアウトのインタビューで、スケジュールの都合によりエージェント・スミスとして再び象徴的な黒いスーツとサングラスを身に着けることができなかったと話した。

一方、シリーズでも最も印象的なキャラクターであり、1作目に出演したキャストの中で唯一の生き残りであるモーフィアスを演じたローレンス・フィッシュバーンは、ReelBlendのインタビューで「私は関与していません。私が言えることは、ラナ・ウォシャウスキーが私よりもよくその質問に答えてくれるということだけです」と答えている。ちなみに、フィッシュバーンは、『ジョン・ウィック』の4作目でリーブスと共演している。

6. 新しいキャラクターとキャスト

一部のファンは、人気キャストの欠落に早くから動揺しているかもしれないが、新しく加わる俳優陣は十分に魅力的。このラインアップであれば、多くのファンが、(現実を見るために)「赤いカプセル」を選びたがるはずだ。

​​予告編で印象的なのは、ネオのセラピスト(ニール・パトリック・ハリス)。青いカプセルを大量に供給していることや、新作のバイラルマーケティングキャンペーンで不安をあおるようなナレーションを担当していることから、彼は不吉なキャラクターであるように思える。

『マインドハンター』や『ハミルトン』に出演しているジョナサン・グロフは、予告編でマトリックスの特質についてジョークを飛ばしている人物として登場。多くの人は、彼は悪役として登場するのではないかと推測している。

また予告編に一瞬だが写り込んでいるのがプリヤンカー・チョープラ・ジョナス。オラクルのようなキャラクターで出ているようだ。

最も話題になっている新顔は、『ウォッチメン』や『キャンディマン』のスター、ヤヤ・アブドゥル=マティーン2世。多くの人が、彼はモーフィアスの昔の顔を演じるのではないかと推測。役柄のトレードマークである丸いサングラスをかぶった彼は、ネオとのスパーリング、エージェントへの攻撃、赤いカプセルの投与、哲学的な発言などをしていることから、マティーンがモーフィアス、あるいは彼を元にしたプログラムを演じていることはほぼ確実だといえる。

Photo: HBOYahya Abdul-Mateen II in Watchmen
Photo: HBOYahya Abdul-Mateen II in Watchmen

また、『ゲーム・オブ・スローンズ』や『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』、Netflixの人気シリーズ『アイアン・フィスト』や『ディフェンダーズ』に出演していたジェシカ・ユー・リー・ヘンウィックも、重要なキャラクターを演じているようだ。

映画全体と同様にどんな役柄なのかはまだ謎に包まれているが、ヘンウィックは先日Empireに、自身のアクションシーンには、これまでのシリーズ作品でも求められたような激しいトレーニングが必要だったことを明かし、「映画の本編を見ていないので、何が入っていて入っていないのか分かりませんが、何カ月も毎日トレーニングしました」と語っている。予告映像ではヘンウィックによる、重力に逆らったようなアクションシーンが見られる。

さらに詳細は不明だが、クリスティーナ・リッチとエレン・ホルマンも出演している。

7. リリー・ワシャウスキーは不参加

SF界のコーエン兄弟と呼ばれているワシャウスキー姉妹は『マトリックス』3部作、『ジュピター・アセンディング』『スピード・レーサー』『クラウド・アトラス』などで仕事を共にしてきた。しかし『マトリックス レザレクションズ』にリリーは不参加。ラナの超大作映画では初のソロ作品となった。

リリーは、テレビ批評家協会のオンラインイベントで実施された、彼女が携わっているShowtimeの番組『Work In Progress』についてのインタビュー(Entertainment Weeklyに掲載)の中で、「機械との戦い」に参加していないことについて、次のように詳しく語っている。

「性転換後、『クラウド・アトラス』『ジュピター・アセンディング』、そして『センス8』の第1シーズンを立て続けに制作していたので、すっかり疲れてしまい……。1つのプロジェクトにつき100日以上の撮影を3回繰り返したわけですから、自分もダメになります。だから、この業界から離れる時間が必要だったんです。アーティストとしての自分を取り戻りたくて、学校に戻って絵を描いたりして過ごしていました」

映画『マトリックス レザレクションズ』は、2021年12月に公開予定。日本版公式ウェブサイトはこちら

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