阿波根昌鴻 写真と抵抗、そして島の人々
画像提供:学校法人東京工芸大学演習地・十字架の看板を立てて訴える若者 1955年

米軍基地に非暴力の抵抗、沖縄のガンジー・阿波根昌鴻による写真展が開催

埼玉県東松山の原爆の図 丸木美術館で、今なお苦しめられる伊江島を「抵抗」を知る

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
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「米軍基地」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。関東に住んでいるなら国内最大級の横田空軍基地や、横須賀海軍基地がまず想起されるだろうか。あるいは、世界で最も危険な基地と呼ばれる普天間基地や、その移設に関して国と県の対立が日々報道される辺野古など、沖縄について考える人もいるかもしれない。

では、米軍による土地の強制接収が進み、一時期は島全体の3分の2以上もの面積が基地となっていた伊江島についてはどうだろうか。

沖縄本島北部にある本部港からフェリーで西へ30分ほどのところにある伊江島は、太平洋戦争末期に最も苛烈な激戦地となった一つだ。数多くの旧日本軍兵だけでなく、疎開せず島にとどまった島民の約半数が命を落としたといわれている。終戦後も島民の苦難は続き、土地の強制接収に始まり、弾薬の爆発事故や、演習中の墜落事故などがしばしば起こっている。

この度、埼玉県東松山市にある「原爆の図 丸木美術館」で、写真展「阿波根昌鴻 写真と抵抗、そして島の人々」が開催される。今なお島面積の35%以上を米軍用地が占める伊江島で、101歳で死去するまで反基地運動、平和運動を率いてきた阿波根昌鴻(あはごん・しょうこう)が遺した写真の数々を紹介する展覧会だ。

阿波根昌鴻 写真と抵抗、そして島の人々
画像提供:学校法人東京工芸大学演習で使われた1トン爆弾 1955-67年

「沖縄のガンジー」と呼ばれ、非暴力の抵抗を志した阿波根は、米軍の横暴や射爆演習場による被害を記録するためにカメラを入手し、1955年から記録を開始した。その量は膨大なもので、生前に唯一の写真集として発表された「人間の住んでいる島」(1982年)に掲載されたもの以外にも、島の人々の肖像や日常を写した写真が数多く残っていることが分かり、調査が進められた。

調査とともにネガフィルムから高精細デジタル化を行い、本展のキュレーションを務めたのは東京工芸大学芸術学部写真学科の小原真史(こはら・まさし)。ダム建設によって失われていく村の姿を撮影し続けたアマチュア写真家・増山たづ子による写真展のキュレーションなども手がけた、信頼できるキュレーターの一人だ。

本土での初めての展覧会となる本展では、3000枚以上のネガから選ばれた未公開を含む約350点のデジタルプリントを展示する。関連企画として、小原らの登壇するトークイベントも予定されている。

入館料は一般900円、18歳未満600円、小学生400円で、会期は2024年2月23日(金・祝)~5月6日(月・振休)。阿波根による歴史的かつ文化的に重要な作品が、新たな形で保存され、広く公開されることを喜びたい。

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