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全国78館のミニシアターの経営状況が明らかに、「良好」はゼロ

東京からは8館が回答、action4cinemaによるアンケート結果を公開

編集:
Genya Aoki
テキスト:
Kosuke Hori
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ここ数年でミニシアターの閉館の知らせを何度耳にしただろうか。東京だけでも、「アップリンク渋谷」をはじめ、「渋谷TOEI」「岩波ホール」がその長い歴史に幕を下ろし、2024年1月には「吉祥寺プラザ」の閉館も決まっている。

そこには、パンデミックだけではなく映画館支援の構造的な脆弱(ぜいじゃく)さがあると訴えるのは、「action4cinema / 日本版CNC設立を求める会」だ。同社はミニシアター・エイド基金の協力を得て、全国のミニシアターに経営状況についてのアンケートを実施。10の設問に対して、全国97団体78館が回答した。匿名が多かったというが、うち8館は東京のミニシアターからも回答が得られたようだ。

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画像提供:action4cinema図1

衝撃的なのは、第1問となる現在の経営状況(図1)について。7「とても良い」「良い」「やや良い」「普通」「やや悪い」「悪い」「とても悪い」の選択肢があるが、78件の回答のうち「とても良い」「良い」の回答はゼロ。「とても悪い」が5.1%、「悪い」が26.9%、「やや悪い」が35.9%と、ネガティブな回答が合計67.9%にも上った。

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画像提供:action4cinema図2
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画像提供:action4cinema図3

2019年の同時期と比較した経常利益の増減(図2)は、67.1%の映画館が減少。23.7%の映画館が増大した。また、今後の観客数の見通し(図3)は、合計77館、全体の45.3%が、厳しい予測をしている。

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画像提供:action4cinema図4

一方で、今後一年間の閉館の可能性(図4)については、78件の回答のうち、8割以上の映画館が「ない」と否定しているのが特徴的だ。

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画像提供:action4cinema図5

具体的な経済的負担ついて(図5)は、「デジタル映写機の買い替え」に関して言及。デジタル機器が主流となってから、設備投資は増大している。デジタルシネマパッケージ(DCP)の老朽化で故障が頻発し、営業できないケースも発生しているが、買い替える余力がないところも多いと考えられる。 

このほか、影響のある要因や、土地が賃貸か自社ビルかなどを質問。最後は閉館する可能性のある映画館に対して、資金調達のためにクラウドファンディングやグッズ販売などの取り組みを行っているか(図6)である。助成金が十分ではない中で、映画館の維持は各館の自助努力に委ねられている背景がうかがえる。

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画像提供:action4cinema図6

1991年に開館した横浜のミニシアター「シネマ・ジャック&ベティ」は、まさにこのケースであるため、現在クラウドファンディングを実施している。期限は2024年1月31日(水)までで、2023年12月26日(火)現在、3,561万8,175円の支援が集まっている。同館は、小規模でも価値や意義がある作品や、これから活躍するであろう若手作家の作品も多く上映し、映画ファンに愛されている。

シネマ ジャック&ベティ
シネマ ジャック&ベティ

アンケート結果を読み、何か感じることがあれば、シネマ・ジャック&ベティへの支援ページをのぞいてみてほしい。ミニシアターへ足を運んだことがない人は、これを機に一度訪れてみるのもいいだろう。残すべき歴史と文化を感じられるに違いない。

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