じわじわくるホットなグルーヴは、JBサウンドのごとし今日のスパイスは、東京を代表する老舗カレー店のひとつ、デリーの『カシミールカレー』。現在、都内に3店舗を構えるデリーの元祖が、上野店だ。行列の絶えない同店で、不動の人気を誇るのが、『カシミールカレー』。スープカレーのようなシャバシャバとしたルーは極辛だが、口に入れると複雑なスパイスの香りとほのかな甘みを感じる。この絶妙な香りと味のバランスが、日本米との相性もぴったりなのだ。テーブルに常備されている玉ねぎのアチャールと一緒に頬張れば、スプーンが止まらなくなること間違いなし。 このカレーを音楽に例えるなら、ジェームス・ブラウンの『Bodyheat』。食べ進めると徐々に体が熱を帯びていくこの感覚はまさに、じわじわとミドルテンポで攻めてくる『Bodyheat』のシンプルなファンクサウンドそのもの。エンドレスで味わいたいグルーヴである。 デリー 上野店の詳しい情報はこちら
マイルスのトランペットのようなキレのある辛さとスパイス感
御徒町のアーンドラキッチンは、インド南部のアーンドラ州出身のシェフが作る、本格的な南インド料理が楽しめる店。
おすすめは『アーンドラスペシャルミールス』(1,650円)。日替わりカレー2種、サンバル(豆と野菜のカレー)、ラッサム(タマリンドと黒胡椒のスープ)、ポリヤル(いんげんと豆の炒め物)、パパド(豆粉で作ったインドせんべい)チャパティ(全粒粉の薄焼きパン)、バスマティライス、ピクルス、デザートが付いたスペシャルセットだ。
ミールスと呼ばれる南インドの定食スタイルで楽しむカレーの数々は、それぞれ異なる個性が際立つスパイス感の強い仕上がり。混ぜ合わせながら食べ進めると聴こえてくるこのグルーヴ感は……まるでマイルス・デイヴィス(Miles Davis)の『Pharaoh’s Dance』である。
ラッサムのキレのある辛さとスパイス感は、マイルスのトランペット。野菜のうま味が深みを与えているサンバルは、ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)のサックス、ポリヤルのピリッと効いたスパイシーさは、ジョン・マクラフリン(John Mclaughlin)のギター。食べ進むごとに、混沌(こんとん)とした秩序、ないし秩序ある混沌を生み出すあのアンサンブルが鳴り響く。
そのほかにも『ドーサセット』(1,450円)、『シェフ特製セット』(1,350円)など、南インド料理好きなら押さえておきたいセットメニューがそろっているので見逃さないように。