Scarlett | Time Out Tokyo
Photo by Mikan Hagiwara

インタビュー:スカーレット

メイクアップレッスンが大評判のドラァグクイーンに聞く

テキスト:
Mayumi Koyama
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タイムアウト東京 > LGBT > インタビュー:スカーレット

スカーレットのその見事なポートレート写真は『Facebook』のタイムラインにランダムに流れてくるニュースフィードのなかで飛び抜けて目を奪うものだった。あらゆる悪役キャラに対する敬意の表現は、ほかのドラアグクイーンたちとは比にならないほどの仕上がりであり、現在スカーレットはメイクレッスンを一般に教えている。特に、舞台照明の光源を意識した絵画的なアプローチは、ベリーダンサーやポールダンサー、バーレスクの世界などで大評判だ。

ースカーレットになった経緯を教えてください。

スカーレット:私のメイクは、もとはと言えばいじめっ子に対する嫌がらせ。新潟で中学に通っていたころ、自分は派手なものとビジュアル系ロックバンドが大好きな転校生で、同級生たちは「変なオカマがやって来た」って私をいじめました。そこで泣き寝入りすれば可愛かったのだけれど、私は可愛くないので。そのいじめっ子たちをもっと挑発してやろうと思ってメイクをして学校に行くようになりました。大学は京都の京都造形大学に入って、それと同時に『Diamonds are Forever』という日本で一番古いドラァグクイーンのパーティーの常連パフォーマーとして誘われ、クイーンとして活動するようになります。自分のセクシュアリティがどうであれ、私がドラァグクイーンになるのはとても自然な流れでした。

ーメイクアップ講座を開講されたきっかけはどのようなことだったのでしょうか。

スカーレット:2012年に東京に引っ越してきてからバーレスクダンサーの友達ができて、ある日その子にダブルライン(ドラァグクイーンがする特有のアイメイク)を軽い気持ちで教えたことがありました。彼女がそのメイクでパフォーマンスをしたところ、とても評判が良くて、その後すぐにほかのダンサーたちにもメイクを教えてほしいと頼まれ、その結果レッスンを開講することになりました。

ースカーレットさんのメイクアップ講座はどのようなものでしょうか。

スカーレット:ステージメイクは濃くする、という基本的なルールはみんな分かっていると思うけれど、いかに効果的に仕上げるかという方法を教えるプロは、これまでいませんでした。ドラァグクイーン含め、ほとんどのパフォーマーは楽屋で先輩たちのメイクを見よう見まねで覚えていくもの。私はメイクのプロではないですが、美大を卒業していることや小さなころから絵画教室に通っていたこともあって、人よりも美術の知識が豊富だったのだと思います。だから私のレッスンは、自分の顔をキャンバスにした絵画ワークショップだと思ってもらえれば結構です。誰ひとり同じ顔の人はいないのだから、ビューティーメイクの本に載っているようなハウツーをそのまま真似して効果的なメイクはできないでしょう。それぞれの顔に合ったアプローチをお教えしています。それぞれのメイクの基本的な役割や機能が分かるから、私の生徒さんたちは、ステージでも普段のメイクでも自立できるようになるのです。

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ー現在もステージでパフォーマンスをされていらっしゃいますか。

スカーレット:最近はハロウィンの時期くらいしかステージには立っていませんね。一年で一番、誇張した表現に需要が集まる時期ですから。でもステージに立つことになったら、常に誰にもできないショーをしようと心がけています。誰とも競わないし比べない。ただ自分を構成しているすべての要素を利用して表現する。それがエンターテイナーとして不可欠なマナーだと考えています。

ー衣装もご自分で作られていますが、制作の際に心がけていることはございますか。

スカーレット:自分以外の誰かのために作るときは、その人の要望を良く聞くことと何度でも着てもらえるように丈夫に作ること。自分自身の衣装の場合は、ドラァグクイーンの価値を落とさないように、何においても高級でゴージャスに見えるようにすること。黒のゴミ袋で衣装を作ったこともありますが、どんなに原材料費がかかっていなくてもそれは同じ。どんなクイーンも安っぽく見えてはいけないと思うのです。

ー今後の目標はございますか。

スカーレット:これからもこのメイクアップレッスンから様々なことに発展させていきたいと思っています。個人的な夢は、何らかの形で自分のポートレートコレクションを出したいということ。実はパフォーマンスより静止画の方が得意なのです。もし「ドラァグクイーンのタロットカード」なんてあったら面白いと思いませんか?

スカーレットのメイクアップレッスンの詳しい情報はこちら

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Photo by Leslie Kee

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