Photograph:David James
Photograph:David James

新3部作を手がける監督ライアン・ジョンソンが語るスター・ウォーズ

映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』監督にインタビュー

Joshua Rothkopf
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Joshua Rothkopf
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ライアン・ジョンソンは、インディーズ映画の知的SFアクション『Looper』(2012年)を完成させたとき、「僕は3本の映画を作った!3部作が完成した」と、キャリアが頂点に達したかのようなジョークを言った。しかし、それはまだだったようだ。2017年、大学のクールな若手教授のようにスタイリッシュなボタンダウンに身を包んだジョンソンは、最大の話題作を全世界とシェアしようとしている。アメリカのメリーランド州出身の監督は、どうやって、映画『スターウォーズ/最後のジェダイ』の監督に抜擢(ばってき)され、熱狂的なファンたちに「新世代のジョージ・ルーカス」と呼ばれるまでになったのだろうか。タイムアウトがインタビューをした時点では、映画は公開されていなかったが、ジョンソンの未来はすでに約束されている。今後、スターウォーズシリーズを3本監督することが決まっているからだ。この契約は彼のアイデアへの大きな信頼を意味しているだろう。

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ミレニアム ファルコンのプラモデルを作って、部屋で投げたりしてた

まだ観ていない映画についての監督インタビューは、あまりしたことがありませんが今日はよろしくお願いします……

喋ってはいけない映画についてのインタビューっていうのも、僕もあまりしたことがないよ。だから僕らは同じ穴のムジナだ。

少しずつ進めてみましょう。今、おいくつですか

あと数日で44歳になります。

ちょっと早いですけど、お誕生日おめでとうございます。ということは、スターウォーズ世代ですね。子供の時はファンでしたか

スターウォーズは僕の世界のすべてだったんだ。4歳のとき、父が僕を車に乗せて映画館に連れて行ってくれて。1970年代に子どもだった僕は、映画を何度も観に行くことはできなかった。映画館で1度観たらそれきりだ。当時は映画というよりも、僕の年代の人からよく聞くことかもしれないけど、映画のキャラクターのフィギュアが大きな役割を果たしていたんだ。

私もヨーダのフィギュアを4つ裏庭で壊しました

僕らは同じ経験をしてきているね。僕が初めて「創造した劇」は、スターウォーズの世界を舞台に、フィギュアのキャストたちとだったんだ。

スターウォーズのベッドシーツで寝ていましたか

もちろん!『アンダールーズ(Underoos)』 (子ども向けのスーパーヒーローの下着ブランド)も持ってたな。ミレニアム ファルコン(宇宙船)のプラモデルを作って、部屋で投げたりしてた。僕もフィギュアを壊してたな。壊さなかったものといえば、ハンマーヘッドとウォーラスマンくらいだったかもしれない。

何十年か後に、それをガレージで見つけて、涙を流しませんでしたか

まさにその通り。面白いことを言うね。今回、初めてミレニアム ファルコンのセットを歩いたとき、自然と感情的な反応が起きたんだ。息が詰まって、どうしようもなくなった。映画を思い浮かべたんじゃないんだ。『ケナー(Kenner)』(玩具メーカー)のフィギュアや、子どもの頃にファルコンの中にいる自分を想像したことを思い出していたんだ。狼狽(ろうばい)したよ。

Photograph: © David James, L to R: Johnson with Carrie Fisher (Leia)

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「スターウォーズ」にしたかった

−スターウォーズの直前に公開されたジョージ・ルーカスの『アメリカン グラフィティ』(1973年)を再び観て気付いたのですが、そこにテーマが揃っていました。ノスタルジアや友情、マシーンに対する情熱などです。ルーカスの映画スタイルやスターウォーズが、どうしてここまで文化として根付いたのだと思いますか

有名なことだけど、ルーカスは神話学者のジョセフ・キャンベルと、彼の著書『英雄の旅』についてよく語っていたよね。同書には、英雄になることではなく、大人になることについて書かれていたんだ。

−子どもっぽいことは止めること、周りを意識することについての本でしたね

その通り。大人になるにつれ、新しい力を得るけど、その力はまだよく理解できない。小さな世界から大きな世界へ入って行くのは、とても不安なことだから。『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(1980年)では未知の暗い世界に入って行く。悪人だと思っていた人物が、自分の父親だったり。こうやって人生のロードマップを示していることが、映画が支持されてきた理由だと思うね。

−J・J・エイブラムスから作品を引き継いでいますが、最初から作品を暗い方向にしようと構想していましたか

ええと、少しはね。3部作の第2部の役割というのは、 3幕構成の映画の第2幕の役割もそうだけど、登場人物に地獄のような試練をもたらすことなんだ。彼らが谷間をどのように抜けて行くかが重要なポイントで、登場人物の性格の見せ場。だから、本作ではより強烈で、より暗い方向に転換することになったんだ。

−怖がらせないでくださいよ

同時に、スターウォーズとともに育った者として、重苦しいものにしたくはなかったんだ。「スターウォーズ」にしたかったんだ。自分にとって楽しくて、おかしい。遊園地の乗り物みたいな。仲間と車に乗り込んで、夜の街に繰り出して、冒険をしようってことなんだ。だから前作『フォースの覚醒』の時点で、J・J(・エイブラムス) は分かっていたよ。 

Photograph: © David James, L to R: Johnson on set with John Boyega (Finn) and Oscar Isaac (Poe Dameron)

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−なぜ監督に選ばれたのだと思いますか

謙そんするわけじゃないけど、制作者がなぜ僕を選んだのか見当もつかない。電話が来たとき、とても嬉しかった。この映画を誇りに思っていて、僕のほかの作品と同じ様に、とてもパーソナルな作品になったんだ。

−的確な本能を持っているからだと思います。映画の脚本も書きましたか

書いたよ。

−正確にはどういう意味でしょう。あらすじは決まっていたのか、それともただ、「書け!」と言われたのでしょうか

ある日、前作(フォースの覚醒)の脚本が送られてきて、そのときに次の展開を確認したんだ。特に決められていたことはなくて。監督がバトンタッチしただけ、というのが本当のところだと思う。『フォースの覚醒』が大好きだったから、あの物語を進めていきたいとは思った。オリジナルの6作はジョージ(・ルーカス)にとってパーソナルな映画で、それが作品に鼓動を与えたと思う。制作者が僕に指示することはなかったよ。彼らは、僕にパーソナルな何かを見つけさせようとしていたんだ。

−スターウォーズシリーズで、あと3本監督するという契約を結んでいます。制作者は『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』をとても気に入ったようですね

そうだね、そうあってほしいな。仲間意識がとても強い現場だったんだ。それがあってこそ、この映画は完成したと言える。僕は契約のときに「次の3本で、新しいストーリーを語ることができれば最高だ。スターウォーズという大きなキャンバスで、新しい登場人物を自由に描きたい」と話したんだ。

−契約の交渉で、自分自身を1976年のルーカスの地位に就かせてしまったようですね

今思うと、ジョージがスターウォーズのすべてを1枚の紙から創り上げたことは、信じられない。超現実的だ。

スターウォーズは世界の鏡。現実で起きていることを反映している

ロンドンでの撮影はいかがでしたか 

ロンドンは楽しかったよ。毎日パインウッド・スタジオに通っていて、ほとんどスターウォーズの世界で過ごしていたな。撮影所全体を乗っ取ったような気分だった。

−新エイリアンのポーグについて教えてください。予告編でポーグが登場したとき、世界は「ポーガズム」というか、昇天してしまいました。アイディアはどこから得ましたか

ロケ地をアイルランドの西南海岸にある、世界遺産のスケリッグ・マイケル島に選定したんだ。そこは鳥類保護区で、ツノメドリだらけだったんだ。ツノメドリはいつも飛び立ちたいかのように、羽をバタつかせていて。それを見て思いついたんだ。

ルーカスはしなかったことですね 

そう思う?スターウォーズは世界の鏡なんだ。結果的に現実で起きていることを反映していると思うな。『フォースの覚醒』を読む前に、主人公が女性だと聞いて、僕は椅子の上で前屈みになったんだ。40年間、男が主人公の映画を観ながら育った僕にとって、衝撃で興奮のできごとだった。もし、政界に嫌いな奴がいればダースベイダーに当てはめることができる。肝心なのは、仮面の裏に隠されているものなんだ。

ポーグ(写真右)(C)2017 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

12月公開映画をチェックする……

12月公開の注目映画5選
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タイムアウト東京が注目する、今月公開の映画を紹介する。12月は、映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』や『オリエント急行殺人事件』など注目の大作が公開。邦画では、檀一雄の原作小説をもとにした、大林宣彦の新作『花筐/HANAGATAMI』も見逃せない。

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