TOKYO MUSIC BOX #27 JUHA

テキスト:
Kunihiro Miki
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in collaboration with KKBOX 

JUHA

値段:¥¥

音量:

照度:

ポイント:北欧を感じさせる佇まいの内装
この一杯:一橋学園駅の名店 南風配達人の豆を使ったコーヒー

テキスト:高岡謙太郎

定番スポットや老舗バー、注目の新店まで、魅力的なミュージックスポットを、店主、スタッフがセレクトしたミュージックプレイリストとともに紹介する連載企画『TOKYO MUSIC BOX』。

今回紹介するのは、西荻窪駅にある喫茶店、JUHA。大場俊輔と大場ゆみの夫婦で切り盛りしている同店がオープンしたのは、2010年3月。店名の由来は、フィンランドの映画監督アキ・カウリスマキによる無声映画『JUHA(邦題:白い花びら)』から。独特なテンポと静けさが魅力のカウリスマキ作品にも通じる、落ち着いた雰囲気の一軒だ。

錆び加減が味わい深い入口のドアは、映写室で実際に使われていたもの。映画『JUHA』で流れるような楽曲を総称して「ロマンスミュージックカフェ」と名付け、開店当初は劇中で流れるような戦前タンゴやクラシックを店内でかけていた。現在は主にモダンジャズのレコードが多いという。

今回のプレイリストのテーマについて聞くと「ジャズは女性ボーカルの方が人気があるので、男性ボーカルの特集があまりないんです。チェット・ベイカーやルイ・アームストロングは有名ですが、こういう小粋なものもあるんだよ、という紹介がしたくて。年代と曲名と小編成のものでまとめました。実際、お客さんの反応も良くて、ここからジャズに入ってくれる人もいます」と語ってくれた。

「この曲は珍しくオスカー・ピーターソンが歌いながらピアノを弾くんです。オスピーが歌っていることを知らない人が多いので。声がナット・キング・コールに似ていて、びっくりする方も多いですね」。

客層は、杉並区という土地柄なのか作家や漫画家が多いという。時には客席でゲラのチェックが行われる光景も。「基本的に本を読みに来る女性の方が多いです。なので、彼女たちの邪魔をしないように、けれど、心に残るような選曲を心がけています」。

フレッド・アステアのこの曲とは、自らが客として出入りしていた喫茶店で出会った。「アステアは小粋の極地なんです。僕の好きな店、吉祥寺のかうひいや3番地で知りました。かうひいや3番地もジャズ専門とは謳っていないけれど、50年代のモダンジャズをよくかけていますね」。

喫茶店という空間で音楽と出会ってもらえることを意識して、プレイ中の曲はレコードジャケットが飾られる。

もともとガレージパンクを聴いていた大場俊輔は、喫茶文化に触れて昭和から続く喫茶店に通うようになる。新宿の珈琲らんぶるで働きながら、同じ通りにあるレコードショップで毎日のようにジャズのレコードを買い求める日々。一方、妻のゆみは、今はなき下北沢の名店、ジャズ喫茶マサコで働いていたという経歴を持つ。その当時に、写真家の沼田元氣による喫茶文化に関する書籍と出会い、さらに、2005年の雑誌『Pen』のジャズ特集と植草甚一特集の号に触発されたことをきっかけに、より喫茶文化やジャズに傾倒していったという。ちなみに、店内の椅子はジャズ喫茶マサコから引き継いだものだ。

プレイリストでは、彼らのルーツであるジャズとパンクを繋ぐ曲も選んでくれた。「モーズ・アリソンはモッズの連中も聴くんです。 この『パーチマン・ファーム』はモッズのアーティストがカバーしていますね。ジョージィ・フェイムが広めた曲でもあります」。

最近ではランチ営業も始めた。メニューの定番は『キーマカレー』。北欧のスパイスの入ったケーキ『ミュークペッパルカーカ』や喫茶マサコの名物メニューだった『あんトースト』など、喫茶店らしいメニューが揃っている。

「自分のなかではカフェではなく喫茶店という意識で、コーヒーが美味しくなるような選曲をしています。だから激しいジャズはかけないんですよ。歴史のある喫茶店も減っていっているので、今の形で喫茶店文化を残していきたいなと思っていますね」。20席ほどのこの小さな空間には、廃れゆく昭和のジャズ喫茶文化への深い愛情が満ちている。淹れたてのコーヒーで喉を潤しながら、アナログから響く小粋なジャズにロマンスを感じてほしい。

 

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