TOKYO MUSIC BOX #25 Roji

テキスト:
Kunihiro Miki
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in collaboration with KKBOX 

Roji

値段:¥¥

音量:

照度:

この一杯:ceroの曲名にちなんだカクテル

テキスト:高岡謙太郎

定番スポットや老舗バー、注目の新店まで、魅力的なミュージックスポットを、店主、スタッフがセレクトしたミュージックプレイリストとともに紹介する連載企画『TOKYO MUSIC BOX』。

今回は、阿佐ヶ谷駅北口、居酒屋の連なるスターロードの2階にあるカフェバー、Roji。どこか懐かしさを感じさせる、味わい深い雰囲気のこの店は、西東京や中央線界隈のミュージシャンに親しまれ、ライブハウスでは語りきれなかった話を腰を据えて話すことのできる希少な場となっている。そうした常連客が集うこの店は、『フジロック』などにも出演するバンドceroのメンバー、高城晶平がカウンターに立つ。

隣の中野や高円寺とは違った、阿佐ヶ谷ならではの落ち着いた街の雰囲気に溶け込んだ内装。店内に揃えられた教会の椅子やアンティーク調の飾りガラスは、一昨年に逝去した高城の母親の趣味だという。2016年の10月で10周年を迎える同店だが、当初はバーとしてスタートした。母親がほぼ毎日立ち、音楽好きの父親が裏方、大学生だった高城がバイトという家族経営だった。店を開く際、店名の候補として挙がっていた曲が、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングのこの曲だったという。

「最後まで迷った店名の候補が、『アワ・ハウス』なんです。うちの父親はCSNY(クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング)が好きで、『アワハウス』がいいんじゃないかと言っていましたが、母の意見でRojiに決まりました。曲を知っていたらいいと思いますが、直訳すると『私たちの家』なので宗教くさいなと思って(笑)。子どもの頃に父親がかけていたので、すごく好きな曲です。改めてこの曲を聴くと、この店の裏テーマになっているかなと思います。みんなの憩いの家っていう感じが店にあるかなと。西東京の雰囲気に自然と合うというか、そういうところにすごく惹かれます」。

現在は音楽を介して知りあった高城の友人や、もともと客だった人が日替わりでバーテンを担当している。「僕自身は、ほぼ週1で月曜日だけ立っています。あとは店でイベントがある時に、PAをやったりDJをしたり。最近は音楽活動の方が忙しくなって、なかなかお店に毎日立てないんですよね」。

おすすめのフードメニューは、開店以来のメニューであるチリビーンズを使った『チリコンカン』や『焼きチーズカレー』など。母親が大阪出身だったことから、お好み焼きもメニューに並んでいる。ドリンクでオーダーが多いものは、ceroの曲名にちなんだカクテル。「僕が出勤していない間に、父親とか友人が勝手に作っちゃったんですよ(笑)。でも店にとってプラスになればいいかな。ceroのライブを東京に観に来た人が、Rojiに寄って注文してくれるんですよ。あとは地元にちなんだ『阿佐ヶ谷ハイボール』がよく出ますね」。

開店当初は近所の客が多かったが、高城のミュージシャン仲間であるシンガーソングライターの王舟が遊びに来てから、彼が連れてくる音楽仲間との交流が始まり、関係が広がっていった。

「店に来てくれる自分の友達のなかで、『KKBOX』にあるものを入れてみました。王舟をはじめ、MANNERSの見汐さんとか、シャムキャッツの夏目くん、NRQの牧野さんは昔からよく来てくれる大事な常連さんです。みんな良い音楽をやっているので、彼らの曲を織り交ぜたセットリストにしました」


「僕は名前が晶平なんですけれど、僕のことを曲にしてくれたのかと思ってすごく嬉しかったんです。だけど、本人に聞いたら違うそうで(笑)。勝手に自分のテーマソングだと思っています。NRQはインストグループなんですが、二胡をやっている吉田くんは高校の先輩で、西東京の仲間という感じです。これもうちの店に合う内容で、西東京というエリアの雰囲気なんでしょうね」。


そのほかの常連客には、DJのMOODMANをはじめその周辺のクラブ関係の人々もいるという。ライブハウス界隈とクラブ界隈の双方の人脈が共存している店というのは珍しい。「10年来の常連客とクラブミュージック好きがうちで出会って、映画仲間になったり。すごくいいなと思う瞬間がいっぱいありますね」。渋谷ハイファイレコードのバイヤーでありライターの松永良平も常連客のひとりで、彼がアメリカでの買い付けで買ってきてくれた一枚がこちら。

「最近よく聴いているアメリカの80年代のボーカルグループで、この曲は、Chee Shimizuさんの作ったディスクガイド『obscure sound 桃源郷的音盤640選』にも入っていて。マンハッタントランスファーのような男女混成のコーラスグループなんだけど、ちょっと変でバレアリックというかジャンル区分不能な感じ。僕はそういうものが好きなので、オブスキュアという言葉は自分たちのルーツだと思っています」。

母親が切り盛りしていた時代と現在で、出入りする客の顔ぶれは変わったが、高城いわく「常連客はフェードイン、フェードアウトして入れ替わっていく」ものだという。「今は5期目ぐらいの感覚ですね。2年くらい期間でゆっくり変っていく感覚です。ずっと変わらないことも良いですが、それだと風通しが悪くなっていきますよね」。さまざまなジャンルの音楽を受け入れ、まさに「オブスキュア」な音楽を作り続けているceroの背景には、なにかに偏らず自然体のままに続いてきたこの店の空気があるに違いない。中央線でゆるやかな夜を過ごしたいのなら足を運んでほしい。

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