TOKYO MUSIC BOX #23 8bitcafe

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
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in collaboration with KKBOX 

8bitcafe

値段:¥¥

音量:★ 

照度:

ポイント:店内を埋め尽くす往年のゲームグッズ

この一杯:ゲームをモチーフにしたカクテル 

テキスト:高岡謙太郎  

定番スポットや老舗バー、注目の新店まで、魅力的なミュージックスポットを、店主、スタッフ、常連客がセレクトしたミュージックプレイリストとともに紹介する連載企画『TOKYO MUSIC BOX』。

今回紹介するのは、今年で11年目を迎える8bitcafe。新宿御苑からほど近い新宿3丁目駅のC5出口の向かいのビル。その5階にある同店は、国内初のゲームをコンセプトにしたカフェバー。1980年代、90年代のゲームを中心としたポップカルチャーを話題にしながら盛り上がることのできる、大人の秘密基地として評判だ。

店内でまず目を見張るのが、所狭しと置かれている20世紀末ごろのゲームグッズ。『ファミリーコンピュータ』などのゲーム機本体はもちろんのこと、ゲームソフト、説明書、『パワーグローブ』などの特殊なコントローラーだけでなく、ほかでは手に入らない『ゲームボーイ』の販促品の巨大な筐体なども置かれ、ゲーム好きには格別の居心地の良さがある。店の奥にある『ドラゴンクエスト』の顔ハメや玉座は自作したという。 

数多くのゲームが制作され、ある意味日本から育ったといっても過言ではない、ゲームミュージック。黎明期のゲーム機本体の音源チップは、現在のように多様な音楽的な表現ができなかった。しかし、当時の制限された音数のなかで工夫が凝らされた楽曲は、現在もリスナーの心を揺らす。店内のBGMには、ゲームミュージックの影響を受けた現在の音楽なども流れる。店長のナヲにプレイリストを選定してもらい、まずは8bitサウンドを取り入れたチップチューンと呼ばれるジャンルのアーティストとの出会いから話を始めてももらった。


チップチューンとジャズの融合にチャレンジし続けるYMCKとの出会いは、開店した1週間後。新宿のタワーレコードでのインストアライブに遊びに行った後、店を開けたら打ち上げでメンバーが来たという。アルバムに参加していたファミコン名人として有名な高橋名人も同席していて驚いたそうだ。「この曲は店の周年イベントのライブで毎回やってくれる曲です。『カレーだよ!』ってフレーズを替え歌にして歌ってくれる、お祝いソングですね」。


ヒゲトライバーとは所属レーベルが店でやっていたイベントが出会いの切っ掛け。そこから店の常連になり、ヒゲドライバーという名前のカクテルも作られ、ファンが訪れることも。「この曲が一番キラーチューンでめちゃめちゃ反応がいい。まさにアンセムです。ネット上で10年以上やっていてキャリアが長い方です」。


ライブでは悪のヒーローのような被り物をするサカモト教授。普通に客として来ていたが、素顔はわからず気付かなかったそうだ。「サカモトさんはゲームミュージックを牽引する方で、この曲を弾いてくださいってカセットを渡すと寸分違わず弾いてくれる。しかもバカテクなんですよ。この曲はファミコンの『マザー』の曲で、名曲過ぎて」。


『ゲームボーイ』や『ニンテンドーDS』などの小型ゲーム機を使って、巫女の格好でライブパフォーマンスをするOmodaka。寺田創一名義で90年代にハウスをリリースしていた作品が最近再評価が高まっている。「元々この曲が店で超人気になっていて、友人の結婚式でご本人に会う機会があり声を掛けました。すごい気さくな方で会う前から大ファンでしたね。今年の『フジロック』に寺田創一が出演したので行ってきたのですが、最前列で『寺田さん!ファンです!』って観ていましたよ(笑)」。

8bitの電子音を取り入れた楽曲に深い愛着を持つナヲに、その思いの丈を聞いた。「ゲームミュージックを小さい頃から聴いていて、ゲームの音色に親しんで育ってきてから、そういった音色を取り入れた音楽はすっと体に入ってきて、身近に感じるものがあるんです。違うジャンルでもチップチューンの音が入っていると面白いなって思いますね。例えばYMCKさんはジャズと混ざっていたり、みなさん違うアプローチでそれぞれカラーが違うことが魅力的なんです。ゲームを扱うと店自体オタクっぽくなりがちですが、そこをいかにオシャレな感じでバランスよくやるかが店の重要なテーマかな」。


ナヲのもうひとつの大きなバックグラウンドが、渋谷系だ。フリッパーズ・ギターの数百人規模のファンイベントを行っていた過去も。「エイプリルズは、ネオ渋谷系で一番有名なバンドですね。この曲は途中でラップが入るんですが、ラップの部分を僕が歌って共演したこともあって思い入れが深い曲です。オープン前から仲が良くて、フリッパーズ・ギターのファンイベントに出てもらって、付き合いも10年くらいになります」。


元々はDJバーを経営していた兄の影響もあって、自分の趣味をいかしたバーを始めたナヲ。その時のコンセプトが「来たい人が、探して来る店」。ゲーム文化を愛する人々が集うなかには、海外のメディアでも紹介された影響もあって外国人の客も多い。昔、兄のバーでかかっていた印象深い曲がこの『The Books』だ。「幅広さが出るように個人的に好きなThe Booksも入れました。変な感じの曲で、サンプリングミュージックというか、曲調がパパッと変わってコラージュ的に変わっていく曲が好きなんですよね。これはあまり店内BGMに向かないんですが、思い入れのある曲なんです」。

店内にはDJブースもあり定期的にDJイベントが行われるという、ほかのゲームバーにはない音楽への力の入れ具合。半年ごとに行われる8bitcafeの周年イベントは、アーティストをまとめて観ることのできるチャンスだ。ノスタルジーを感じさせるゲームミュージックの音色を使い、新たに再構築するアーティストの楽曲をぜひ店内で聴いてほしい。

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