TOKYO MUSIC BOX #13 NO TRUNKS

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
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※プレイリストは記事下部
in collaboration with KKBOX 

NO TRUNKS

値段:

音量:

照度:

出会い:★★

ポイント:ヴィンテージのアンプ、スピーカー

この一杯:麦焼酎 焼酎屋 兼八

テキスト:高岡謙太郎

定番スポットや老舗バー、注目の新店まで、魅力的なミュージックスポットを、店主、スタッフ、常連客がセレクトしたミュージックプレイリストとともに紹介する連載企画『TOKYO MUSIC BOX』。

第13回は、中央線の国立駅にあるジャズ&ダイニングバー、NO TRUNKS。ジャズ全盛期の音響機器でレコードを堪能できる数少ない場所だ。録音物の再生だけでなく、小規模のジャズの生ライブもあり、中央線界隈のジャズコミュニティの盛り場となっている。 

駅からほど近いビルの5階。手入れが行き届いた店内は、落ち着いた雰囲気で入りやすい。客層は60代から20代の後半で、8割型男性だという。店長の村上寛いわく、「ジャズファンはそもそも年齢が高い」とのこと。

店内を見渡してまず気になってしまうのが、ヴィンテージものの音響機器。60年代のジャズ喫茶で置かれていたアンプとスピーカーで、当時の鳴りを体験できる。セッティングされているアンプは『Macintosh C38』、スピーカーは『AlTEC 828G』。

プレイヤーの再生ボタンを押すと、説得力のある鳴りが響く。ひとつひとつの楽器の音像から演奏者の姿が立ち現れ、しばし呆気に取られた。サウンドシステムの重要性を痛感する。この店でレコードを聴けば、ジャズの魅力がいち早くわかるはずだ。

壁面を見ると、棚にはレコードとジャズに関する書籍が隙間なく詰め込まれ、戸棚を開けると秘蔵のレコードがズラリとお目見え。

ダイニングバーと称するだけあって、キッチンが広く、メニューが豊富だ。アルコールは泡盛、芋焼酎、焼酎が多い。1日に3合は呑むという村上のオススメは、『麦焼酎焼酎屋兼八』。

週末には小規模なライブも行われ、満席になることもしばしば。演奏は主に生音で、ボーカルにはマイクを立てる。『フジロック』などにも出演するビッグバンド、渋さ知らズの小編成ライブが行われる時は、若い客も集まるそうだ。渋さ知らズとは、かつて村上が新星堂に勤めていた時代に彼らをサポートしていた頃からの、長い付き合いなのだそうだ。

ライブのみならず、『新譜試聴会』に『戦前ブラックミュージック』、『ジャンル問わずギターベスト3』『年代を絞り1965年に制作された音源のみ』『アーティストの1周忌』など、趣向を凝らした試聴会イベントも数々企画される。村上のフェイバリットであるジョン・コルトレーンの特集も頻繁に行われているという。

村上のジャズ通は、音楽誌『レコード・コレクター』や『クロスビート』に批評やレビューを寄稿していた過去が裏付けている。彼自身は、音楽評論家の故 中村とうようの大ファンだという。

20代から20年以上、レコードショップに勤務していた村上は、積極的に日本のジャズを後押しし、自らインディーレーベルを立ち上げるほどの熱の入れようであった。その後、2001年にNO TRUNKSを開店する。オープン当初の国立は、ディスクユニオン、オーディオユニオン、国立楽器、クラシック喫茶のジュピターなどがあり、音大生も多くいる音楽の街でもあった。

店名のNO TRUNKSの由来は「緊張のあまりトランクスを忘れたボクサー」のこと。元は、レコードショップ時代に有志10数人で立ち上げたレーベルの名前。「ほとばしる情熱、だけどどこか抜けている」ことから名付け、そのレーベル名を店の名前にもしたという。

また、店名には「Jazz & Spirits」という冠も付けられている。「ジャズって看板を掲げているけれど、ジャズ以外も好きで。ジャズの魂が入っているものだったらなんでも好きですね」。今夜も店内では、村上の魂を揺さぶった楽曲が響いているはずだ。 

そんなNO TRUNKSのプレイリスト第3弾は「NO TRUNKSで出会う、古く新しい音楽」。お客さんの力石礼子が選んだ10曲は、ジャズピアニストであるギル・エヴァンスのファンキーな一曲や、ジョー・パスの金物の鳴らし方が軽快な「C.E.D.」など、一風変わった曲が多く、ジャズのパターンの幅広さ、様々な手法を取り入れる実験精神を感じさせるプレイリスト。

プレイリストリンク 先:KKBOX

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[プレイリスト]

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第1弾は「NO TRUNKS 激推し、打楽器系ピアニスト」。ジャズを愛し、日本におけるその歴史を全力でサポートしてきた彼の熱い思いが込められている。「フュージョンと云う名のジャズ(?)が一世風靡して30から40年経過した現在。演奏者もリスナーも、その頃の状況を知らない人たちがオトナになった。フュージョンとしか思えない演奏を新しいジャズだと考えている若者が目につく。そんな感慨を私に抱かせる新譜が多い昨今のジャズ状況。クラシックやムードピアノもどきの欧州ジャズピアノはもうほどほどに。 ジャズピアノは昔、打楽器のように弾いた!」。

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