origami PRODUCTIONS
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origami PRODUCTIONSの支援が示す、コロナ収束後の道筋

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「文化は良き時代において享受されるぜいたく品ではない」「アーティストは生命の維持に必要不可欠な存在である」。この言葉は、ドイツのモニカ・グリュッタース文化相がコロナ禍における文化支援について語った時のものだ。

日本では、4月7日に発表された緊急事態宣言に際して、108兆円規模の経済対策が用意された。そこには事業者向けの支援策もあり、「個人事業主は上限 100万円の範囲内で、前年度の事業収入からの減少額を給付」する旨が明記されている。フリーランスのクリエーターやアーティストも受けることができる補償がようやく整備されつつある。

しかし、クラスター発生のリスクが高いとされる「3密」空間であるナイトクラブやライブハウス、劇場、ギャラリーを活動の場にしてきたアーティストたちは、最長で来年の夏から秋ごろまでステージでの活動を自粛または制限し続けなくてはいけない可能性がある。もしそうなった場合、補償だけを頼りに食いつなぐことはできない。なにか新たな道筋が必要だ。

先の支援策が発表される数日前、ある音楽プロダクションが2つのプロジェクトを発表し、話題となった。

そのプロダクションとは、OvallやKan Sano、mabanuaら、ジャズやソウル、ヒップホップをバックグラウンドに持つ人気プロデューサー、ミュージシャンが所属しているorigami PRODUCTIONSだ。 

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プロジェクトの一つは、ライブができなくなり収入源を断たれたアーティストに向けて、同プロダクションに所属するプロデューサーやミュージシャンたちの楽曲を版権フリーの素材として無償提供する『origami Home Sessions』。もう一つは、代表の対馬芳昭が自己資金の2,000万円を音楽シーンに寄付する目的で立ち上げた『White Teeth Donation』である。

大きな反響を呼んだこれらの企画は、コロナ以前から対馬のなかにあった音楽業界に対する問題意識がベースになっているという。2,000万円の資金は、業界のシステムや意識の構造改革のために自らが行動できるようにと、かねてから貯めていたものだ。

窮地をしのぐだけでなく、文化を守るためのプロジェクトはどのような道筋を作るのか。対馬にプロジェクトの経過について、そして今後の展望について聞いた。

拡散するコラボ音源、継続的な収入源にも

3月30日にスタートした『origami Home Sessions』は、すでに多くのコラボレーション音源を生み出している。この斬新なプロジェクトがすんなりと受け入れられ拡散されたのは、もちろんプロダクションの所属アーティストたちの人気によるところも大きいが、それと同時に作り手目線での「使い勝手の良さ」がしっかりと想定されていたことにある。

「このプロジェクトのメリットは、アーティストが録音物をオンラインにあげてその場ですぐに利益化できることです。

また、利益のためだけでなく、遊びやプロモーションとしてデモ段階のものをアップして楽しんでもらう。その上で、良い反応が得られたら本格的に録音するなど、さまざまな使い方ができると思います。

ファンにとっては、同じ曲をさまざまなシンガーやラッパーが歌い、ミュージシャンが演奏を重ねる様子を楽しむことができます。みんなを巻き込み、かつ家にいながら楽しめるものなんです」

実際に、Twitterなどで発表されているコラボレーション音源は、昨今話題の「#うちで踊ろう」動画と同じく、気軽なノリで発表されているものも多い。トラックに歌やラップを乗せる人、トラックをリミックスする人など、アプローチもさまざまだ。こうした音源をマネタイズにまで繋げているケースも出てきているのだろうか。

「現時点では、Bandcampでの販売が多く見られます。アップした音源の金額を自由に設定できて、手軽に販売が可能です。最低価格100円から、という設定も可能なので、投げ銭感覚でより大きい金額を払ってもらえる場合もあります。

アグリゲーター経由でApple MusicやSpotify、LINE MUSICといったストリーミングサービスへの配信もできるようになりました。こちらは一回の再生当たり0.5円前後の利益です。こうしたプラットフォームでは、例えば多くのフォロワーがいるプレイリストに入るなど、一度なにかの輪に入れば長く聴かれることになります。時間と空間の制約がないので、長期間の安定したマネタイズが望めるでしょう。

また、このプロジェクトの場合、バージョンはは違えど同じ楽曲が数多くアップされることになるので、リスナーが何度も同じ曲を耳にする可能性が増えます。そうなった場合、もしかするとそれがメガヒットに繋がるかもしれない。未知の結果を生まれる可能性も、楽しみなんです」

2,000万円の寄付は、未来への投資

ドネーション企画『White Teeth Donation』も、すでに「目の前の生活に危機が迫っている音楽関係者」を対象にした寄付がスタートしている。一見、無私の聖人のような行為にも映るが、対馬がこれを行うのはあくまで合理的な理由からだ。

「日本の音楽業界は音楽を売っているのか、アーティストを売っているのか、という議論になることがよくあります。音を聴いているのか、それともアーティスト自身にファンが付いているのか? 現状では日本は圧倒的に後者になります。

そのような環境の中で、私の周りのアーティストは『音』を主体にしているアーティストが多いのです。キャラクターで売ることや有名人になることを目標とせず、演奏や歌を良いと思ってくれた人たちにファンになってもらう。

お茶の間に知られるチャンスなどそもそも望めない、相対的にはマイノリティーな存在なわけですが、技術を持っているので日々のパフォーマンスで生活していくことは可能なんです。しかし、今回のような危機に見舞われると何もできなくなってしまう。小中規模のライブハウスやエンジニアなども同じ構造で回っているので、今回たくさんの関係者があっという間に窮地に立たされてしまいました。

でも、日本の音楽文化は日々そういった小さくてマイナーな現場から生まれています。それらのアーティストや関係者が根こそぎいなくなると、この先の日本の音楽文化そのものが終わってしまうんです。

そうなったら当然、彼らを『商売道具』とする私の仕事もなくなる。遅かれ早かれ終わってしまうのであれば、早いタイミングで私の気持ちとやりたいこと表明し、理解してもらう。それと同時にアーティストや関係者が直面している危機を回避して、ポジティブな気持ちを取り戻してもらおうと。私がレーベルオーナーである以上、それはいずれ自分に返ってくるという判断で決断しました」

収束後の音楽シーンに多様性を

自らの仕事を「(アーティストの)人生においてガードレールのような存在になる事」としている対馬は、この危機的状況にあるからこそそうしたスタンスを見せることで、業界に対して変化を呼び起こそうとしているようにも見える。

彼がパンデミック収束後の日本の音楽業界に望むもの。それは多様性だ。

「今回のコロナ禍では、あらゆる場面で日本と海外の違いが浮き彫りになりましたが、それは音楽業界も一緒です。

日本の音楽カルチャーの良い部分はキープしながらも、海外の音楽や芸術に対する姿勢を見習い、もっとたくさんの人に多様性のある音楽シーンを見せていく必要があると思っています。アイドル文化やJ-POPを否定するつもりはありませんが、テレビなどのマスメディアで扱われるのは、それらがほぼ全てを占めています。他の国を見渡しても、これは日本の大きな問題だと思っています。

多様性を受け入れて、バランス良く音楽を受け入れてもらう音楽シーンを作っていくことが今後の理想的な形だと思っています」

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