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ビール片手にパラ競技。最先端デジタルゲーム「サイバーボッチャ」体験ルポ

ビール片手にパラ競技。最先端デジタルゲーム「サイバーボッチャ」体験ルポ

パラリンピック競技「ボッチャ」を気軽に体験してもらおうと、ITベンチャーの1→10(ワントゥーテン)が今年8月、デジタルゲーム「CYBER BOCCIA(サイバーボッチャ)」を開発、発表した。事前の知識は必要なく、気軽に体験できるので、競技人口の増加や認知度向上、障害者スポーツへの理解促進など、様々な面で期待を集めている。

「カジュアルに誰もが楽しめる」。1→10のウェブサイトにはそう書かれているが、実際はどうなのか。12月13日、タイムアウト東京は天王洲にある同社のオフィスを訪れ、サイバーボッチャを体験してきた。パラ競技の経験も知識もないに等しい私たちが、果たしてどれだけ楽しむことができたのか。感想を記事にまとめた。

 

 

サイバーボッチャ

 

 

 

ボッチャは、「重度脳性麻痺者もしくは同程度の四肢重度機能障がい者のために考案された」(日本ボッチャ協会)スポーツ。ルールはいたってシンプルで、2チームに分かれ、白い「ジャックボール(目標球)」に向かい、赤と青のボールを6球ずつを投げる。相手よりもどれだけ多くのボールをジャックボールに近づけられるかを競う。

 

使用されるボール

 

 

実際は10×6メートルのコートを使うが、この日体験したサイバーボッチャは、4.5×2.5メートルのもの。バーやゲームセンターなどに置くのにちょうどいいサイズ感だ。ゲームが開始されると、コート上に映っていた映像が動き始め、コンピューターが自動で先攻チームを選び表示してきた。近未来的な雰囲気がなかなかイケてるではないか。

 

 

 

近未来的なデザインのコート

 

 

 

先攻後攻が決まったら、早速試合開始。この日は、タイムアウト東京と交流のあるN社と対戦だ。

サイバーボッチャのボールは、ボッチャで使用されるものと全く同じもの。重さ約275グラム、周長約270ミリで、皮革(または合皮)なので少し柔らかい。先攻チームがジャックボールをコートに投げ入れるのだが、想像よりもボールが飛んでしまう。コートが小さいので狙ったところに投げるのは簡単な気がしてしまうが、腕の振りや手首の使い方、体の向きなどに意識を集中させながら、慎重な投球が求められるようだ。

 

 

高い集中力が求められる

 

 

投げ入れると、コート上部に取り付けてあるカメラがボールの位置情報を把握し、瞬時にジャックボールまでの距離を表示する。実際のボッチャではメジャーを使い測るが、1→10代表取締役の澤邊芳明は「そんなのダサいじゃん」とばっさり。なるほどテンポが良い上にグラフィックが洒落ていて、気分を高揚させてくれる。

 

ジャックボールまでの距離(DISTANCE)が瞬時に表示される

 

コート上の球数によって試合中のBGMも変化する。球数が増える終盤には、勢いのある音楽になるため、否が応でも白熱してくる。仲間内でビール片手にプレーすれば、間違いなく盛り上がるはずだ。

ボッチャの面白いところは、敗色濃厚に見えても、一発逆転のチャンスが必ずあること。ジャックボールの周辺を相手チームの球が囲んでしまっていても、思い切りボールを投げてみれば、一気に飛び散らせることもできるからだ。1→10では、これを「爆破」と呼ぶらしい。なかなか的を得ている。

この日は終始タイムアウト東京チームがリードし続け、N社の皆さんの「爆破」の試みも失敗。終わってみれば4対0の圧勝だった。

 

タイムアウト東京が完封勝ちを収めた

 

 

「カジュアルに誰もが楽しめる」。この言葉は嘘ではなかった。簡単にルールを覚えられるし、男女の力の差もそんなに影響しないように思えた。それでいて、奥が深い。味方の球を守るために、別の球でジャックボールの前に壁を作ったり、邪魔な球を吹き飛ばしたり、戦略性もある。競技自体の面白さに加え、音楽とグラフィックによる演出がかっこいいため、デートにもぴったりだ。

1→10では来年以降の実用化、常設化を目指している。バーなどのナイトシーンで、ビリヤードやダーツに代わる存在として楽しんでもらいたいという。東京五輪の大会組織委員会のアドバイザーも務める澤邊は、狙いについて「(パラリンピックの)認知度は上がっているのに、興味を持ってもらえない。競技の魅力や選手のすごさを紹介するだけでは観戦者を増やすのは難しいんです。それなら、パラから一番遠いところ(ナイトシーン)に置いたらどうなるかなと考えました」と話す。サイバーボッチャの収益の10パーセントは、日本ボッチャ協会に寄付される。「楽しくわいわいゲームして、知らないうちにパラリンピックに協力しているというわけです」。

類似の開発を行っている企業は世界中を見渡してもないらしく、既にイギリスBBCが取材に来るなど、多くの注目を集めている。バーに設置されたこのデジタルゲームに、大勢の人が熱狂している未来の光景が頭に浮かんだ。

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