「ライカギャラリー」で、小川康博の写真展が開催。長年にわたり世界各地を旅しながら撮影してきたモノクローム作品によるシリーズ『The Dreaming』と、松尾芭蕉の『おくのほそ道』へのオマージュとして制作された『Into the Silence』から作品を選出して展示する。
『The Dreaming』では、後年、作家が自身のネガを見返した時、そこに残されていたのは単なる旅の記録ではなく、夢のような記憶だった。遠い土地で出合った光や風景、雨や霧、名もない街角の気配は、時の経過とともに新たな意味を帯び、記憶の中で静かな余韻となって息づいている。
一方で、『Into the Silence』は、若い頃から芭蕉の俳句に魅了されてきた小川が、旅に取りつかれた一人の人間として北国を巡り、その風土や季節、そこに流れる時間と向き合ったもの。そこに写し出されるのは風景そのものではなく、旅の途中で感じた孤独や憧憬(しょうけい)、生への情熱だ。
2つのシリーズに共通するのは、移ろう記憶と時間へのまなざしである。「Dream / Silence ― 夢と沈黙のあいだ」という展覧会タイトルは、小川の作品に流れる旅の記憶と沈黙の世界を表現している。本展では、夢と沈黙、漂泊と静けさが交差する作品世界を体験できるだろう。
会場には、作家自身が制作に深く関わったオリジナルプリントが並ぶ。旅先で出合った光や風景、時間の痕跡は、写真という物質を通して一つの作品へと昇華される。豊かな階調と静かな余韻を持つ、小川の写真表現を堪能してほしい。
※11〜19時/休館日は月曜/入場は無料



