「ポーラ ミュージアム アネックス」で、現代美術家の束芋による展覧会「束芋画 国宝」が開催。2017年から2018年にかけて朝日新聞で連載された、吉田修一による小説『国宝』のために制作した挿絵全500点を、前後期に分けて紹介する。
束芋は、浮世絵を思わせる色彩と独特のリズムを持つ手描きアニメーションを用いたインスタレーションで知られる。何気ない日常風景の中に現代社会のゆがみや人間の心理を織り込み、シュールな世界観を描き出してきた。近年は自身の内側にある記憶や、身近な物質がまとう時間などをテーマに制作を続けている。
『国宝』の挿絵制作では、まず墨による線画を描き、その後、小説の物語を読み込みながら場面ごとの感情や空気感を色彩として重ねていった。線の上に色を置く過程には、物語世界だけでなく、その時々の自身の感覚や身体性も自然と反映されていたという。
本展に当たり束芋は、新聞掲載時にはデータ上で合成していた色彩部分を、和紙に描かれた線画の上に改めて着彩し作品を完成させた。約10年前に描いた線やイメージを手がかりに、当時の感覚を現在の身体で呼び起こしながら色を重ねる行為は、作品と再び向き合う時間であると同時に、新たな発見をもたらす体験でもあったという。
新聞という日々更新されるメディアの中で生まれた作品を通して、過去と現在、文学と美術、記憶と身体感覚が交差する本展。物語とイメージが響き合いながら立ち上がる、束芋ならではの世界観を体感できるだろう。
※11〜19時(入場は18時30分まで)/料金は無料



