KICK BACK CAFE

  • レストラン
  • 仙川
  • 価格 1/4
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タイムアウトレビュー

東京のなかでもどこか独立した営みが感じられる小さな街、仙川。駅からのびる裏通りに沿って進むと、小広場が現れる。そこは、80年代に建てられたビルの日陰でコーヒーを楽しむ客で賑わっている。真新しいブティックや輸入食品を売るワゴンがあちこちにみられ、うるさい寿司屋の呼び込みだけがそのかすかなヨーロッパの趣きを壊している。

この異世界を少し進んだ先に『キックバックカフェ』がある。まるで高校の食堂のような活気に満ちた場所だが、それは悪いことではない。それどころか、その気取らない雰囲気が他のレストランとは違う魅力を醸し出している。このカフェのすべて(オーガニックでヴィーガンにも考慮したメニューから、おしゃべりでのんびりしたスタッフ達まで)が、時間に追われない生き方を追求しているようだ。少し調べたところ、カフェをはじめたのは、恋愛・結婚カウンセラーである若い男性で、彼は教会経営やライブ演奏、執筆、セミナー主催の合間を縫って、カフェに携わっているようだ。彼の生活に“スロー”の要素があるとは想像できず、東京で一番忙しい人に思えてくる。

コンセプトは何であれ、料理は、足を運ぶに十分な価値がある。まずは『ジャングルサラダ』なるものを注文した。新鮮なグリーンサラダに深く覆われているのは、パプリカパウダーがふられ、皮の奥までスパイシーな旨味が詰まったケージョンチキン。添えられた手作りマヨネーズを合わせるとカロリーオーバーになると思いつつも、肉にからめながらきれいに食べてしまった。このサラダだけでも、メイン料理となり得たが、信頼を置く人からの情報によれば、このカフェの一番人気はヴィーガンメニューにあるとのことだった。

この国には、すでにすばらしい“豚骨”があるというのに、ヴィーガンラーメンをすすめるとはおかしな話だ。だが、キックバックカフェの“豆乳だし”は、豚に挑戦状をたたきつけた。もちろん、『豆乳ラーメン』なんて書くと、読者の中にはオエッとなる人もいるかもしれない。正直、僕らだって食べたいとは思わなかった。でも、豆乳とゴマ、繊細な手つきで揚げられた豆腐とネギの調和は見事だった。確かに、少々お腹に重くて湯気が立つほど熱々のラーメンは、夏に相応しいとは言えないが、寒いシーズンであれば理想的な一品になること間違いない。

最後は、ヴィーガンメニューから選んだが、こちらは少々不満足に終わった。ヴィーガン・チョコサンデーとは、やもすれば“危険”なスイーツがヘルシーになったかのように聞こえる。それもそのはずで、実際は脂肪分に全く欠ける一品だった。ケーキは固くぽろぽろ崩れ、同じくアイスクリームは削りながら食べるありさま。次は、パウンドケーキと生クリームを注文するつもりだ。

室内の一端には大きなステージがバンドやDJのためにしつらえてあり、夜のパーティにひととき集う機会は十分にありそうだ。だがここでは、カフェの名前の由来に倣うことをおすすめしたい。晴れた日曜日の午後、仙川までゆっくりと普通電車で来たら、おいしい食事とおおらかな雰囲気の中で、“リラックス”(キックバック)しよう。スローライフの意味をみつけられるかもしれない。

詳細

住所
東京都調布市若葉町2-11-1 パークスクエア武蔵野 1階
東京
アクセス
京王線『仙川』駅(徒歩約5分)
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