2023年11月にオープンした、白金高輪駅から徒歩3分の場所にワンオペのイノベーティブ多国籍レストラン「アティ(atti)」。シェフとの会話が楽しめるライブ感のあるカウンター、6席あるハイチェアのオープンキッチンのカウンターのほか、大きなテーブルを中央に据えた半個室がある。
オーナーシェフは、赤羽橋のフレンチ赤羽橋のフレンチ「タワシタ(Tower Shita)」でスーシェフ、代官山のビストロ「アタ(Äta)」でシェフを務め、さらに広尾「オード(Ode)」などで研さんを積んだ、松野敦。「ほかの店で出しているような料理も出しません。ここでしか食べられない料理を提供したいと考えています」と語る。作ることができるものはすべて自家製。以前いた店のレシピや料理は出さない。
メニューは昼夜ともにコースのみで、ワインのペアリングも松野自身がセレクトする。ドイツ、スイス、オーストリアのものを使うことが多いが、「国や銘柄にこだわらず、自分がおいしいと思ったものを選んでいる」。この日は、春のコース料理の一部から2皿を撮影した。
前菜は、北海道産の殻付きホタテを刺し身。コンブ塩と、福耳(東北地方の唐辛子)で作ったアチャール(南アジアのピクルス)に、山梨県産のキウイフルーツを発酵させたソースと合わせている。ホタテの卵巣はカラスミにして提供。一皿にさまざまな国、地方の食文化が凝縮した、同店の真骨頂といえる一皿だ。
メインは、猟師から直接仕入れたエゾシカのモモ肉に、切り干し大根を赤タマネギやパクチーなどで和えたアチャールを添える。このアチャールが、松野も大好きだという。野菜は8割程度は無農薬のものを使っており、自身で持つ畑で作ったものも使用している。
サスティナビリティにもこだわり、店にも自宅にもコンポストを置いて、生産者にも還元する仕組みづくりにも取り組んでいる。端材は野菜のだしを取るのに使用するほか、乾燥させて「野菜パウダー」としてパンに混ぜ込むこともある。
独創性の高いコースが楽しめる同店。ワインとの邂逅(かいこう)を含め、おいしい時間に身を委ねたい。