

黙然たる反骨 安藤照 ―没後・戦後80年 忠犬ハチ公像をつくった彫刻家―
渋谷駅前のモニュメント『忠犬ハチ公像』の初代作者、安藤照(1892〜1945年)の個展が、「渋谷区立松濤美術館」で開催。没後80年を記念した本展は、彼の彫刻家としての活動を網羅的に紹介する初の展覧会だ。
数々の彫刻家がしのぎを削った昭和時代の彫刻界で、活躍を期待された存在であった安藤。1921年の彫刻家としてのデビューから、数々の賞を受賞し、早くから頭角を現した。
1934年には『忠犬ハチ公像』、1937年には『西郷隆盛像』と、現在も語り継がれるモニュメントを制作し、彫刻家としての地位を築く。しかし、その道半ばの1945年5月、渋谷区代々木の自宅兼アトリエが空襲にさらされ、安藤もその犠牲となった。
本展では、誰もが知る『忠犬ハチ公像』の影に隠れ、これまで語られる機会の少なかった安藤の生涯について迫るもの。戦火を逃れた現存作品約30点や関連する作家の作品が集合する。
激動の彫刻界、そして戦争に向かう不安定な時代の中でも「ただ黙々と仕事をして居ります」 と語った安藤の作品は、時世の雰囲気に逆らうかのごとく、素朴で静寂だ。激しくうつろう社会を生きる現代の我々にとって、時代と黙然と戦った安藤の彫刻は新鮮に映ることだろう。
※10~18時(金曜は20時まで)/入館は閉館の30分前まで/休館日は月曜(7月21日、8月11日は開館)、7月22日、8月12日/料金は1,000円、学生800円、60歳以上・高校生500円、中・小学生100円(土・日曜・祝日・夏休み期間は中・小学生無料、金曜は渋谷区民無料)