観光資源を活性化させる、ナイトタイムとモーニングタイムの有効活用

Mari Hiratsuka
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Mari Hiratsuka
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4回『「楽しい国 日本」の実現に向けた観光資源活性化に関する検討会議』がこのほど、大手町で開催された。出席したのは、有職者の小西美術工藝社 代表デービッド・アトキンソンや、ランドリーム社 代表原田静織のほか、観光庁関係者らあわせ26名。検討会では、モノ消費からコト消費に移行している観光の需要を踏まえ、体験型の観光を充実させ、訪日外国人旅行者の滞在による、消費を促していく取り組みが話し合われた

検討会ではこれまで、チケット購入の簡素化や、新たな日本文化と生活体験の充実など、国内外の現状と課題について有職者からヒアリングを行ってきた。第4回では、観戦型スポーツとデジタルアーカイブの活用、ナイトタイムとモーニングタイムの有効活用、ホールや劇場空間の活用がテーマになった。

森ビルの取締役執行委員の河野雄一郎は、同社が2009年に始めた『六本木アートナイト』を例に出し、ナイトタイムエコノミーの活性化について、魅力あるコンテンツづくり、ハードの整備、交通アクセスの充実、安全性の向上を挙げた。

河野は、「六本木アートナイトは、現在70〜80万人の人が訪れる催しに成長している。しかし、集客数は日の入りから終電までが圧倒的(に多い)。交通の確保が必要」と深夜の公共交通の不足について指摘。「週末の終電を延長したり、夜間使用していないバス路線を観光向けのバス会社に委託したり、ナイトタイムに必要な場所を巡回するなどして足を確保するべき」と提案した。

モーニングタイムの推進に携わる、京都市産業観光局の横井雅史は、今まで朝観光ツアーを日本人向けに行ってきたが、2017年12月から通訳ガイドの育成もスタートさせた。「あまり知られていないが、清水寺は朝6時からオープンする。この時間に行けば人も少なく、ゆっくり観光することができる」と、朝時間を活用することによる時間の分散や、満足度の向上などの利点を挙げ、「滞在日数を促進する効果が期待できる。インバウンドによる伝統産業や商店街の振興などの経済活性化を目指したい」と話した。

京都 清水寺

これに対し、飛騨地域に根ざした旅行会社、美ら地球(ちゅらぼし)代表の山田拓は「朝や夜の時間帯を有効活用することによって消費は伸びるかもしれないが、運営コストもかかる。消費がコストを越えるように取り組みを具体的に検討しないといけない」と指摘した。

タイムアウト東京代表の伏谷博之は、「具体的なターゲットをイメージする必要がある。実際に活性化された時、取り組みが客に届かないのではもったいない。働き方改革の推進によって、日本人自らも外に出て、消費をしながら文化を楽しむべきでは」と話した。

後半では、Jリーグやプロ野球(パ・リーグ)におけるインバウンドビジネス、NTTドコモとKDDIのARとVRを活用したインバウンドビジネスについて、ヒアリングが行われた。

Jリーグやプロ野球はアジア圏(タイやベトナム、台湾など)でのファンの獲得に成功している。一方で、日本に来て観戦するハードルが高い。チケットシステムが日本人向け(コンビニでの発券や郵送がほとんど)で、購入すること自体が難しいからだ。歌舞伎や能、コンサートなども同様。前回の検討会でも、チケットの電子化や、共通サイトの製作、多言語化などインフラの整備が話し合われた。

今後の検討会では、今まで挙がった意見を基に、さらに具体的な議論を行う。検討会は全8回行われ、2018年3月に提言がまとめられる。

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