産官学民連携の新組織 渋谷未来デザインが設立。夏野剛らアドバイザーとイノベーション創出を目指す

テキスト:
Kunihiro Miki
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渋谷という街の10年後、20年後が明るいものになるために、今すべきこととは。

渋谷の民間企業や行政、学校、市民らとともに、街が抱える課題の解決や未来像の具現化を進める新組織「一般社団法人渋谷未来デザイン」が2018年4月2日、設立された。4月25日には記者発表会が開かれ、同法人の代表理事 小泉秀樹(東京大学教授)と渋谷区長 長谷部健らに加え、アドバイザーとして参加する佐藤夏生(EVERY DAY IS THE DAY共同代表)、夏野剛(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究所特別招へい教授)、林千晶(ロフトワーク社長)らが登壇した。

活動内容は、テクノロジーの活用や実証実験によって都市の付加価値向上に寄与する「体験デザイン」、パブリックスペースやビッグデータの活用に向けたワークショップや研究事業を実施する「空間価値デザイン」、市民の発意によるプロジェクトを実現させるための支援事業や、多様な個人・組織の活躍を推進するイベント実施を行う「市民共創事業デザイン」など5つの事業が軸となる。

今後は、組織の骨格や仕組みづくりを行いつつ、5G(次世代通信規格)インターネットなどの最先端テクノロジーの実証実験や、居住者が多く個性的な店が立ち並ぶ笹塚・幡ヶ谷・初台の街づくりを進める「ササ・ハタ・ハツエリアのビジョン共創」、昨年に初開催されたダイバーシティがテーマのイベント『DIVE DIVERSITY SUMMIT SHIBUYA(DDSS)』の運営と実施などが計画されている。

渋谷区長 長谷部健

記者発表会の冒頭では長谷部が挨拶を行い「渋谷区が抱える課題は多様で、すべてを行政で解決することは難しい。民間としっかりと連携することで早期の解決が望める事象は多く、様々なセクターがクロスして解決に当たっていくためのエンジンとして、渋谷未来デザインを育てていきたい」と、同法人へ寄せる期待を語った。

佐藤、夏野、林の3人は「フューチャーデザイナー」と呼ばれる7人の有識者に名を連ねる。パネルトークでは、事業を時代に適した方法で進めるための新しいマインドセットについて語られた。林は「東京にイノベーションがなかなか起こらない原因には、インフラや治安が一定の水準を満たしているせいで、課題が見つけられないことにある」とし、佐藤は「今見えている課題も重要だが、まだ見ぬ可能性に注目し想像することで、そこに追随する形でテクノロジーや民間のリソースがいかされる」と述べた。

壇上左から:金山淳吾、佐藤夏生(EVERY DAY IS THE DAY共同代表)、林千晶(ロフトワーク社長)、夏野剛(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究所特別招へい教授)、長谷部健渋谷区長、小泉秀樹代表理事

夏野は「渋谷は、テクノロジーによって乱雑さと猥雑(わいざつ)さがそのままの形で機能しているという点で、世界的に見ても最もポテンシャルを秘めている街と言える。『ブレードランナー』で描かれている未来都市は、まさに渋谷のよう。渋谷は世界のベンチマークになっている」と街への期待を口にし、未来の作り方について「ノウハウやスキルの『積み上げ』が未来を作ったのが20世紀。21世紀における未来の作り方は、それとは大きく異なり、社会をどうしたいかという『意思』が最も重要。『意思』の実現のためにテクノロジーの使い方や作り方を考える。今はまだテクノロジーに圧倒され、社会制度が追いついていない状況なので、フューチャーデザイナーとして『こういう社会にしたい』という部分をやっていきたい」とも。

公民学の連携を謳(うた)う組織・施設が多く登場するなかで、同法人がブレイクスルーのきっかけとなるか。今後の展開に期待したい。

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