Photo: Kisa Toyoshima
Photo: Kisa Toyoshima

昼は和菓子屋、夜はおでん屋?Seihoプロデュースの渋谷の隠れ家へ案内

Mari Hiratsuka
テキスト:
Mari Hiratsuka
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2018年4月、音楽ユニットSugar’s Campaignでの活動など、媒体の垣根を越えた表現をし続けるマルチアーティストSeihoが、渋谷円山町に住所非公開のおでん屋「そのとうり」をオープンした。今年7月には、同所で日本茶と創作和菓子の店「かんたんなゆめ」の営業も開始。ここでは「出汁(だし)を作り上げる過程と、音楽を作っていくことは似ている」と話すSeihoの隠れ家を案内したい。

おでんはコースでの提供(3,000円〜)で予約制

Seihoはオープンのきっかけを「東京にライブで来るようになったころ、先輩たちがよく、東京にはこんな店があるんだと驚くようなところに連れて行ってくれたんです。そんな場所を作りたくて。また、音楽を演奏するノウハウや思想を別のことにアウトプット出来ないかなと思ったんです」と明かす。

店長を務めるのは、Seihoと同じ関西出身で、Sugar’s Campaignにもゲストボーカルとして参加している、あきおだ。

あきお

コンブとカツオベースにした出汁が自慢の同店だが、日々細かな試行錯誤を繰り返している。「出汁をとる過程は音楽に向き合っている瞬間にすごく似ているんです。どのマイクでレコーディングしようとか、聴いた人がワクワクしてくれるかな とか」(Seiho)。「オープンから1年はインストールの年だったが、これからどうバージョンアップさせていくかという段階です」(あきお)。

最近は煮こごりもメニューに加わった。自家製のひろうすや半熟状態で提供する、ふわとろの餅チーズ巾着など、ぜひ賞味したいメニューがいくつもある。金、土曜は朝5時まで営業しており、ライブやクラブ帰りの客も訪れ、出汁で味わうかすうどんが好評だ。

生の山椒(さんしょう)をウォッカに漬けこみ、ソーダで割って木の芽を加えた『山椒と木の芽のサワー』(600円)

「そのとうり」は夜のみの営業になるが、日中の時間帯に、同店の店舗を使い、日本茶と創作和菓子の店「かんたんなゆめ」が営業している。店を切り盛りする寿里は前職は有名パンケーキ店の各地新店舗立ち上げ業務に携わり、おでん屋「そのとうり」の立ち上げも手伝っている。

寿里

「私が勤めていたパンケーキ屋の、一番人気は宇治抹茶でした。みんな和菓子が好きなのに、作法やイメージで肩に力が入っちゃうんです。ケーキなら好きに食べてるのに不思議だなと思って」と会社を辞し、起業。

子どもの頃からお菓子が大好きで、よく手作りしていたという彼女は、「忙しい毎日でも、甘いものを食べると元気が出たり、お茶を飲むとホッと一息つけたり。そんな風に、お菓子とお茶を通して、人が笑顔になれる場所を作りたいんです」と微笑む。

店舗では、3種のうちから好きなもの2種類とかぶせ煎茶をセット(1,600円)で提供。テイクアウトもできる

写真左側の『嬉々~KIKI~』は、寿里の出身地である宮崎のチーズまんじゅうを模した、上生菓子だ。ネリキリにカテゴライズされる、正統派の和菓子だが、2種のクリームチーズを使った餡にレモンがきいていて、今まで食べたことのない先鋭的な味付けでありながら、懐かしさも感じる。

ペアリングの茶はかぶせ煎茶を使用(取材時は奈良県の『月ヶ瀬茶』だったが、季節や菓子に合わせて、変えていくという)。低温で抽出した一番茶の出汁のような味わいを楽しんだ後、二番茶とともに和菓子を提供する。そして最後に、開いた茶葉は、おひたしとしてサーブ。和菓子はもちろん、「お茶って、こんなふうに楽しめるんだ!」と、お茶のポテンシャルにも開眼必至だ。

持ち帰り用の手提げ袋にも描かれている、キュートなイメージイラストは、イラストレーターのマエガミマミ(maegamimami)によるもの

店名の「かんたんなゆめ」は、栄枯盛衰のはかなさについて語っている、中国の故事「邯鄲(かんたん)の夢」に由来しているのだとか。少し勇気を出して登った、雑居ビルの細い階段の向こうには、白昼夢のような空間が広がっていた。「ねりきりと日本酒って絶対合うと思うんです」と、日本酒好きの寿里がセレクトした日本酒とのペアリングも用意しているので、本当に白昼夢を見ることもできるだろう。

そのとうり公式Twitterはこちら

かんたんなゆめ公式Instagramはこちら

テキスト:長谷川あや

写真:豊嶋希沙

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