スナックアーバン
スナックアーバン

スナックアーバンからの「水水しい」提案

テキスト:
Hisato Hayashi
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新型コロナウイルスの感染拡大防止の影響で、大きな打撃を受けている業界は数多くある。各業界の打撃や今後について、既に多くのメディアや関係者がメッセージを発信しているが、今回は政府対策本部からの利用自粛要請において「接待を伴う飲食店」と称された水商売やナイトワークに焦点を置き、ユニークな対策を試みているスナックを紹介する。 

スナックアーバンとは?

四谷三丁目駅から徒歩3分ほどの場所にあるスナックアーバンは、書籍編集者とスナックのママという、二つの顔を持つ臼井はるかが営む会員制スナック。写真家、編集者でありジャーナリストの都築響一がチーフを務めることでも知られ、ホステスたちもさまざまな活躍の場を持っており、ユニークかつチャーミングな面々で構成されている。

日頃は会員制にもかかわらず、愛好家たちで連日ににぎわう人気店。それでもさすがにこの度は営業自粛を余儀なくされ、5月6日(水・振休)まで店を閉めることを決断した。

ママが二足のわらじを履いていても、名物ホステスたちがそれぞれの分野で活躍していても、この状況で店を維持しながらホステスの健康と生活の両方を支えるのは、たやすいことではない。

LOVE URBAN! おひねりで送る愛 

snack urban

LOVE URBAN

そこで編集者のママが編み出したのが、通信販売で先払い式の飲み代を売るというアイデア。『LOVE URBAN』と題したネットショップBASEのページから、2時間制フリードリンクや、ママやホステスへの『おひねり』を購入できる

商品ラインナップは、『おひねり〜!』(1,000円から)、『フリードリンク2時間!』(4,300円)、先払い式ボトルキープの『焼酎ボトルいれちゃうぞ!』(7,500円)、『シャンパンいれちゃうぞ!』(1万,5000円/チャージ代は別)などの全7商品。ページや商品の名前には、バブル期のノスタルジーと脱力感が色濃いが、いらすとやのフリー素材もその「ゆるさ」に輪をかけている。

また、BASEで先払いした場合のコロナ自粛明け来店は、会員に限らず誰でもウエルカム。名前を聞いていた、一度行ってみたかったなど、スナックアーバンが気になっていたあなたも必見だ。

snack urban

「おひねり」はこちら 

この「おひねり」の通信販売には頭が下がる思いである。おひねりとは、いわば客からホステスやママへ、原則として見返りを求めない「無償の愛」(有償だが)のこと。商品やサービスへの対価とは別に、感謝や応援の気持ちを表すものだ。

実際の水商売の現場では、祝い事やイベント時に見かける以外にも、心と財布に少し余裕のある客が、平素からひいきのホステスに、十分にお釣りが残るタクシー代を渡すなど、粋な計らいとして存在してきた文化である。チップという概念がない日本においては、こうした「おひねり」を渡すことも、受け取ることもなく生きてきた人も多いかもしれない。

自身もスナックを愛してやまないアーバンママならではの、水商売らしい機転のきいたアイデア+行政を抜くスピードと鮮度のダブルミーニングを発揮する、実に「水水しい」提案といえよう。

ナイトワークの苦境明けに想いをはせる 

snack urban飲食店であればどこも苦しいこのご時世だが、3月30日に東京都知事から「接待を伴う飲食店などに行くことは当面控えていただきたい」と、極めて名指しに近い形で営業を妨げられたことは、水商売をはじめとするナイトワークにとって決定的な打撃となった(また4月11日午後には7都道府県をはじめ全国の繁華街に対する自粛要請が首相、政府対策本部から表明)。

もちろん、人が集まり近距離で向かい合って話すとなれば科学的にも感染リスクが高いことは理解の上、単純に新型コロナウイルスの特性と著しく相性が悪い仕事と言ってしまえばそれまでだが、その不運な特定の業種に対して行政は手を差し伸べるどころか、客側に行くことをやめろと言う。

そんな状況下でもたくましく軽快なアーバンママとホステスたちへ、心からのエールを送りたい。筆者もまた『フリードリンク2時間!』を購入しており、自粛明けが待ち遠しい。

テキスト:ヒラマツマユコ

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