風と土

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タイムアウトレビュー

“わずか41%しかない日本の食料自給率(カロリーベース)を、なんとか増やしたい”、“地産地消という考え方を広めたい”そんな気運が高まりをみせる中、日本の風土にこだわった洋菓子店が2009年12月3日、オープンした。パティスリー『風と土』は、西洋の食文化である洋菓子を、できるだけ日本の土地で収穫した素材で作り提供する店だ。場所は、日本の老舗店が多いだけでなく、エルメス、カルティエ、シャネルなど、海外のトップブランドも旗艦店を出店し、“本物が集まる街”というイメージが強い東京・銀座。数寄屋橋交差点から外堀通りを新橋方向へ向かって歩くと、2ブロック目にある。店内は、客が5人も居れば混雑している印象を受けるほどこぢんまりとしているが、店に入った瞬間、甘酸っぱい香りが鼻をくすぐり、洋菓子への期待は大きく膨らむ。L字型に据えられたショーケースには、赤やオレンジ、チョコレートブラウンなど、食欲をそそる色合いの洋菓子が整然と並び、目でも楽しませる。

そんなショーケースの中で、最も興味をひかれたのが、“地層ケーキ“というサブネームが付いている『風輪』だ。純白のクリームやカフェオレブラウンのスポンジなど、色味や種類の異なるフィリングが7層重なっており、日本の大地で育った素材にこだわっていることを、地層をモチーフにすることで表現している。もちろん、素材には赤米、キビ、全粒粉、黒糖など、日本の大地で育ったものが多く使われている。上からフォークをさして、7層をいっきに口に入れると、その歯触りの違いが、また面白い。フワッと溶けてなくなるもの、ザクザクと音を出すもの、ガリガリと歯向かうもの。音でも楽しませるのだ。シェフ・パティシェの上村卓也は「開発に2ヶ月かかった。日本産の小麦粉は西洋のものと比べると、粒子が粗く溶けにくい。卵に石を投げつけているような感じだからね」と語る。この問題を解決するため、上村は試行錯誤を重ね、ドイツ製とアメリカ製のミキサー2台を使い分けているというから、日本の食材で洋菓子を作ることが、どれほど困難で根気のいることだったかを計り知ることができる。

パティスリー『風と土』では、地層ケーキ『風輪』のほか、愛媛産の大粒の渋皮栗を丸ごと使ったマロンパイ『銀座 マロニエ通り』や、国産小麦粉と北海道バター100%で焼き上げたリーフパイ『えんじゅ』など、日持ちする焼き菓子も揃う。店の並びには、1947年創業で、古くから地元の人に愛されている『洋菓子舗 ウエスト 本店』がある。果たして、『風と土』は、この歴史ある街に、新しい風を吹かすことができるのか、これからが楽しみだ。

詳細

住所
東京都中央区銀座6-4-8
東京
アクセス
東京メトロ『銀座駅』
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