小樽を代表するガラスブランド「北一硝子」。前身の浅原硝子の初代社長、浅原久吉が薩摩切子の技術を学び、1901年、石油ランプの製造を始めたことにさかのぼる。電気が普及していない当時、ランプは家の中を照らす明かりとして必需品だった。また小樽の生活を支えたニシン漁用の浮き玉も製造。これらを端緒に、小樽のガラス産業は栄えていった。
北一硝子も市内に10店舗以上を展開しているが、中でも人気のある「三号館」は明治時代には、みがきニシンなどが置かれていた漁業倉庫だった。「三号館」の変遷ひとつをとってみても、北一硝子は、小樽の歩みや文化と切り離せない地場に根付いたブランドと言えるだろう。
店内では「カントリー」「和」「洋」とテーマ別に、グラスや器をはじめとする多彩なガラス製品のほか、ステンドグラス、石油ランプも販売している。
カフェレストランの「北一ホール」は、光の全く入らない空間に167個の石油ランプが灯る。小さな炎の明かりがガラスを光らせ、ぬくもりのあるほのかな光に満たされる。外が寒ければ寒いほど、その温かさをいっそう感じられるだろう。唯一無二の魅力あふれる空間ゆえ、土日など行列は必至だ。9時から9時30分には、スタッフが一つ一つランプに火を灯す点灯式が行われる。