北朝鮮
テドンガン(大同江)からの眺め

北朝鮮を知る

ハンバーガー事情からSNS、専門家の情報まで。北朝鮮の真実を知る

テキスト:
Hahna Yoon
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翻訳:小山 瑠美

※タイムアウトソウルの記事を転載

あなたが北朝鮮について知らなかった7のこと

今年は2016年ではなく105年

世界では2016年かもしれないが、北朝鮮では故キム・イルソン(金日成)の生誕(1912年4月15日)を元年とする主体暦が使われている。

ハンバーガーが買えないわけではない

ソウルで美味しいハンバーガーが見つからない?ピョンヤン(平壌)の「Samtaesong」(シンガポールの企業がオープンさせたアメリカンスタイルのレストラン)に行ってみてはいかがだろう。アメリカに由来する英語表現は禁止されているので、「ハンバーガー」を注文するのに一苦労するかも。代わりに「バンズつきのひき肉」というように注文しなければならないのだ。2014年の時点でメニューにある最も安いハンバーガーは、1.77ドル(約189円)。

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「韓国映画のプリンス」の拉致事件が映画化された

「韓国映画のプリンス」の拉致事件が映画化された

かつて「韓国映画のプリンス」と呼ばれた映画監督、シン・サンオク(申相玉)。その作品はもちろん、彼が送った人生も有名だ。彼は故キム・ジョンイル(金正日)に拉致され、離婚した元妻である女優チェ・ウニ(崔銀姫)と再会し、映画のエグゼクティブプロデューサーとなった独裁者のもとで、多額の予算をかけて完全に規制された作品を制作した。皮肉にも、韓国のスタジオは、1970年代後半にパク・チョンヒ(朴正煕)大統領によって閉鎖された。シン・サンオクとチェ・ウニの再婚、ウィーンへの逃亡、キム・ジョンイルの肉声を録音したテープについての物語は、ラジオ番組『This American Life(原題)』への出演や、『サンダンス映画祭』、『ベルリン国際映画祭』などで公開された最新ドキュメンタリー映画『The Lovers and the Despot(恋人と独裁者)』を通じて世に知られることになった。同作はマグノリアピクチャーズが配給することが決まり、2016年に劇場公開が予定されている。

北朝鮮はKポップと愛憎関係にある

2012年はPSY『Gangnam Style(カンナムスタイル)』が世界的な現象になったこともあり、Kポップの当たり年だった。北朝鮮でも同様だったが、韓国のプロパガンダだと考えられていた。脱北者の情報によると、2012年に結成され、北朝鮮政府が「少女時代」にたとえる音楽グループ「ワンジェサン軽音楽団」がいる。けばけばしい紫色の衣装を着て、クルクル回転し、速足でステップを踏む女性たちを想像してほしい。Kポップは盛んに密輸されており、CDやUSBメモリで違法に流通している。北朝鮮にいるときに「韓国のプロパガンダ」が聴きたくなったら、国境にある韓国側のラウドスピーカーからApink、BIGBANG、イ・エラン(Lee Ae-ran)、GFRIENDなどの曲が流れているので覚えておこう。

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キム・ジョンイルの視察を見るのが大好き

キム・ジョンイルの視察を見るのが大好き

ポルトガルのアートディレクター、ジョアン・ローシャ(João Rocha)は、『Tumblr』で始めた写真のコレクション『Kim Jong Il Looking at Things(キム・ジョンイルの視察)』で最も有名。タイトルからして率直だが、写真のキャプションも「紙パックジュースの視察」、「化粧品の視察」などとシンプル。『Facebook』ページには、5万8千人以上のフォロワーがいる。ジョアン・ローシャの活動はSNS上だけにとどまらず、2014年には自身が編集を手がけた同名書籍が出版された。『Tumblr』は、ここ3年ほど更新されていないが、同ブログを真似た『Kim Jong Un Looking at Things(キム・ジョンウンの視察)』が随時更新されている。

タイムアウトソウル:キム・ジョンイルが亡くなったとき、どんな気持ちでしたか。寂しさを感じましたか。

ジョアン・ローシャ:彼が亡くなって一番に感じたのは、奇妙だけど、解放感だね。僕の記憶が正しければ、ブログを始めて2年たつところで、もうそれに熱中できない状況になった。ほかのことを始める準備はできたけど、同時に人々が楽しんでくれているのが嬉しかったし、皆を落胆させたくもなかった。彼が亡くなって、突然ブログに使用期限が設けられた。徐々にキム・ジョンイルが視察する写真は消えていく。写真を全部アーカイブするのに約1年かかったけど、それが終わった後は嬉しかったよ。

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二日酔いにならないアルコールがあるらしい

二日酔いにならないアルコールがあるらしい

最も効果的な二日酔いを治す方法といえば、ソウルではお酒を飲んだ後にカムジャタンを食べること。最近、北朝鮮は「二日酔いにならないアルコールを開発した」と主張している。2016年1月に発行された英字紙『ピョンヤンタイムズ』の記事によると、有機栽培されたケソン(開城)高麗人蔘をベースにしたドリンクで、美味しいのはもちろん、MERS、SARS、エイズまで治るかもしれないとか。

なぜかカンボジアで北朝鮮のアートをチェックできる

なぜかカンボジアで北朝鮮のアートをチェックできる

表現の自由が制限される国のアートは、どんな感じだろう。気になる人は、カンボジア、シェムリアップ市内の「アンコール・パノラマ美術館(Angkor Panorama Museum)」内にある朝鮮民主主義人民共和国によって設立された新しい美術館に行けば、北朝鮮のアートをチェックできる。同館は、北朝鮮から2,400万ドル(約25億円)の出資を受け、2015年12月4日にオープン。360度パノラマのインスタレーションがあり、その古代クメール王朝を細部にわたって表現した壁画を作り上げるために、63名以上もの一流アーティストが北朝鮮から派遣された。さらに、204席のシアター、図表、地図、絵画も楽しめる。この美術館のために多大な貢献をしたのは、1959年にピョンヤンに設立され現在は4千人もの従業員を抱える、世界最大級の美術スタジオ、美術製作会社「マンスデ(万寿台)創作社」。米『ニューヨークタイムズ』紙は、同社のアーティストたちを「現代の社会主義リアリズムを表現する達人たち」と紹介している。入館料は、外国人入場者15ドル(約1,600円)。

専門家からの言葉

ジーン・H・イ(Jean H. Lee)/ジャーナリスト

ジーン・H・イ(Jean H. Lee)/ジャーナリスト

元AP通信社韓国支局長。AP通信社ピョンヤン支局を開局。記者として活躍しながら、韓国のヨンセ大学(延世大学校)で北朝鮮研究について教えている。

もしピョンヤンに『タイムアウト』があったら、どんなスポットがおすすめですか。

豪勢に建て直された「祖国解放戦争勝利記念館」。北朝鮮のアイデンティティと政府のプロパガンダにおいて、朝鮮半島の分断がいかに重要な役割を担っているかを理解しやすい。それに隣を流れる川には、北朝鮮に拿捕されたアメリカ海軍の情報収集船「プエブロ」号が係留されていて、船を見学してみると不気味な感じがする。

北朝鮮で最も忘れられない場所はどこですか。

クムガンサン(金剛山)に勝るものはないでしょう。ゴツゴツした峰が本当に素晴らしい。登山しながら山の側面にキム・イルソンとキム・ジョンイルの言葉が刻まれているのを見て、自分が北朝鮮にいるのを思い出すけど。

南北の首都であるソウルとピョンヤン、似ている点はあると思いますか。

地理的には、都市の中心を流れる主要河川があるところ。ソウルのハンガン(漢江)、ピョンヤンのテドンガン(大同江)。都市の景観は、どちらか見分けがつかないことさえある。偶然にも、川の南部に同じ「カンナム(江南)」というエリアがある。

北朝鮮の日常生活について一番驚いた事実とは。

北朝鮮の人々が困難な環境を生き抜くために、いかにユーモアに頼っているかに驚くと思う。そういった文化の側面は、めったに伝わってこないから。

北朝鮮で出会った人で印象的だったのは。

数年前に、北朝鮮の人気卓球選手だったリ・ブンヒにインタビューする機会があった。1991年の『世界卓球選手権』では、中国に勝つために北朝鮮と韓国が初めて統一チームで出場したけど、彼女は韓国の選手とペアを組んだ選手。2012年の映画『ハナ 奇跡の46日間』では、ペ・ドゥナが演じるリ・ブンヒと韓国の人気選手だったヒョン・ジョンファとの間に芽生えた奇跡の友情が描かれている。

国際的なスポーツイベントでも、北朝鮮の選手は外国人と距離を置きがちなので、彼女としばらく時間を過ごせたのは素晴らしい体験だった。彼女はとても真面目でまっすぐな人で、ヒョン・ジョンファと組んだ経験について率直に語ってくれた。でも私が一番感心するのは、彼女が引退後に成し遂げてきたこと。彼女には脳性麻痺の息子がいて、障害者のための卓球を積極的に広めてきた。そんなふうにスーパースターが障害者のために貢献することは、北朝鮮の障害者の権利にとって大きな価値がある。

北朝鮮からのInstagram

北朝鮮からのInstagram
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インドネシア出身のジャカ・パーカー(Jaka Parker)は、北朝鮮在住のフリーランスフォトグラファー。ピョンヤン(平壌)に家族と暮らし、彼の2番目と3番目の子どもは現地で生まれた。都市の写真を撮影し、Everyday DPRK(@everydaydprk)のメンバーとして『Instagram』で写真を公開している。彼個人のアカウントは、@jakaparkerでチェックできる。

ファン・デル・ベルの北朝鮮アート

ファン・デル・ベルの北朝鮮アート
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オランダの切手販売者ウィリアム・ファン・デル・ベル(William van der Bijl)は、プロパガンダのポスターや切手を探すため、1998年に初めて北朝鮮を訪れて以来、合計24回も訪朝した。彼が集めた貴重なポスターや切手は、2015年にソウル市立美術館にて『NKプロジェクト』の一環として展示された。

読むべき、北朝鮮についての本

さらに北朝鮮について学びたくなった人は、ジャーナリストであり、『NorthKorea Confidential(原題)』共著者であるダニエル・チュードル(Daniel Tudor)が選んだ本をチェックしてみてはいかがだろう。

英語記事『Must-read books about North Korea』へ

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