1. Tokyo meets the world: Oman
    Photo: Kisa Toyoshima Ambassador of Oman to Japan, Mohamed Al-Busaidi
  2. Tokyo meets the world: Oman
    Photo: Kisa Toyoshima (L-R) Senior consultant at Original Inc, Masashi Takahashi; Ambassador of Oman to Japan, Mohamed Al-Busaidi

駐日オマーン大使に聞く、同国が旅行者を引きつける理由

日本とオマーンの深いつながりやオマーンのSDGsへの取り組みも

テキスト:
Ili Saarinen
翻訳:
Time Out Tokyo Editors
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コーディネート:Hiroko Ohiwa

かつては海洋帝国であり、アラブで最も古い歴史を持つ国であるオマーン・スルタン国(以下オマーン)。近年「これから観光で行くべき国」として注目を集めている。アラビア半島の南東端に位置する同国は豊かな自然、多様な食文化、そして日本も登場する魅力的な歴史を有しながらも、まだ「マス・ツーリズム」の影響を受けず、独自の魅力を色濃く残す国だ。

東京在住の駐日大使へインタビューをしていく「Tokyo meets the world」シリーズ。第4弾となる今回は、オマーンのモハメッド・アルブサイディ大使に、なぜオマーンが探検好きの旅行者を引きつけるのか、その理由を聞いてみた。また、ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談では、日本とオマーンのつながりや、お台場や山梨で休暇を楽しむ理由について語るとともに、東京で本格的なオマーン料理が食べられる店などについて教えてもらった。

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Tokyo meets the world

オマーンには、多くの世界遺産がある
Photo: Courtesy of the Embassy of the Sultanate of Oman

オマーンには、多くの世界遺産がある

ー観光で行ってほしいオマーンの見どころを教えてください。

長い歴史を持つオマーンには、時代の波をくぐり抜けてきた砦(とりで)や太古の都市、現在も使用されている古代の灌漑(かんがい)システムであるアフラジ(aflaj)など、多くの世界遺産があります。「緑の山」と呼ばれるジャベルアフダル(Jebel Akhdar)の山腹に広がる段々畑の果樹園は有名です。都市部では、スーク(バザール)で色とりどりのにぎわいを感じることができるでしょう。

首都マスカットには壮大なスルタン・カブース・グランドモスクや、2011年に建設された新しいロイヤル・オペラハウス・マスカットがあります。街の近くにある、エメラルドグリーンの地下プールが美しいワディ シャブ渓谷もおすすめです。オマーンは砂や砂漠ばかりではありません。夏のマスカットはとても暑くなりますが、南部のサララは常に涼しく、緑も豊富です。約3000キロに及ぶ海岸線を持つオマーンには、素晴らしいビーチもたくさんあります。

両国における最初の交流は1619年
Photo: Kisa Toyoshima

両国における最初の交流は1619年

ーオマーンと日本には長い交流の歴史があります。東京でオマーンやその文化を知るにはどうしたらいいでしょうか。

日本とオマーンの関係が正式に確立したのは1972年ですが、両国における最初の交流は1619年にさかのぼります。ペトロ・カスイ・岐部というカトリックの日本人司祭が、マカオからローマに向かう途中、マスカットを訪れたとされています。オマーンのスルタン(国王)だったタイムール・ビン・フェイサル陛下は退位後、1935年に日本へ渡りました。

そして日本人女性、大山清子さんと結婚し、娘のブサイナ王女をもうけたのです。前国王陛下も現国王陛下、このタイムール陛下の孫に当たります。

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東京は世界最大の都市でありながら全てがスムーズ
Photo: Kisa Toyoshima

東京は世界最大の都市でありながら全てがスムーズ

ー日本に対する印象を教えてください。また、大使就任前と後では変化がありましたか。

日本は間違いなくこれまで訪れた中で最も美しい国の一つです。私が外国を訪れた際にまず注目するのは、市井の人々です。なぜなら、彼らがその国を作っているからです。日本の人々はとてもフレンドリーで、私は彼らのおかげで素晴らしい経験をすることができました。唯一存在する壁は「言葉」ですが、私は日本語を勉強してそれを解消しようとしています。なかなか大変ですが、諦めませんよ(笑)。

東京の驚くべき点は、世界最大の都市でありながら全てがスムーズなことです。緑あふれる美しい街で、観光スポットも多いのですが、公共交通機関が発達しているので、世界の大都市で見られるような深刻な渋滞がありません。

日本に来て随分日がたちましたが、日本の文化はとても豊かなので、今でも毎日新しい発見と学びがあります。私は可能な限り、全ての都道府県を訪れたいと思っています。

過去に訪れたなかで印象深い場所の一つは、山梨です。山梨県の知事が全ての大使を招待し、素晴らしいプログラムで県を紹介してくれたのです。大使に対して訪問できるように手配してくれたのです。以来、イチゴ狩りやサクランボ狩り、モモ狩りなどで何度も訪れています。景色がとにかく素晴らしく、これからも何度も足を運ぶでしょう。

ー東京でお気に入りの場所はありますか。

お台場は美しい景色と緑、そして海があるので、お気に入りの場所の一つです。オマーン人にとって海はとても大切なものなのです。週末になると、お台場で美しい木や花を眺めたり、レストランで食事をしたりしています。

また、カールヴァーン トウキョウ(CARVAAN TOKYO)というレストランもおすすめです。結婚記念日で、ランチに妻を連れて利用したことがあります。主に地中海と中東の料理を出す店ですが、メニューにはいくつかのオマーン料理やオマーンのシーフードなどがあり、とても驚きました。渋谷スクランブルスクエアの12階にあります。

ー東京在住のオマーン人は多いですか。

それほど多くはありません。私たち外交官とその家族、学生が数人、日本人と結婚しているオマーン人が数人で、全員で16人。日本全体でも2324人ほどです。

ー東京でオマーンやその文化を知るにはどうしたらいいでしょうか。

オマーンのことをさらに知るためには、日本オマーン協会日本オマーンクラブが定期的にイベントや講演会を実施しています。2019年には大使館で『私の見たオマーン』という写真展を開催しました。これは、1970年代から現在までにオマーンを訪れた日本人が撮影した写真で構成されたものです。また、広島オマーン友好協会や奈良オマーン友好協会といった協会もあります。

日本はオリンピックを安全に開催できる
Photo: Kisa Toyoshima

日本はオリンピックを安全に開催できる

ー東京オリンピック・パラリンピックが安全に開催できるかどうか、議論が続いています。仮に開催された場合、東京にどのような影響を与えると思いますか。

日本の皆さんがオリンピックについてどのような決断をしようとも、その決断を支持します。しかし、私は日本はこのような状況でもオリンピックを安全に開催できると確信しています。オリンピック期間中の開催都市に滞在するのは初めてのことなので、歴史的な瞬間に立ち会えるのが今から楽しみです。

また、日本が世界に希望を与えるという意味でも、重要な大会になるでしょう。日本のアスリートが初めて金メダルを獲得した瞬間、日本中が勇気づけられ、全てが変わるのです。

オリンピックは、一定の手順を踏めば皆が安全を確保して生活できる、ということを示す好機です。ワクチンの接種率も増加しており、多くの物事が正常に戻り始めるのではないかと期待しています。オリンピック後、早ければ年末までには普通の日常が戻ってくるのではないでしょうか。

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オマーンでは持続可能性が重要視されている
Photo: Himanshu Pandya, courtesy of the Embassy of the Sultanate of Oman in Japan

オマーンでは持続可能性が重要視されている

ーオマーンと日本が協力できる分野はなんでしょうか。また、オマーンの人々は日本にどんなイメージを抱いていますか。

私は、日本がさらなる経済成長するための土台を提供したいと考えており、日本の直接投資を増やすことに注力しています。そうすることで、日本はさらに国際的な競争力を高めることができるでしょう。中東の端に位置し、インドとアフリカの両方に近いオマーンは、巨大な市場機会を提供しています。

日本はオマーンにとって素晴らしい友人であり、信頼できるパートナーです。オマーンでは日本のものは高い品質と性能を連想させ、尊敬と信頼を得ています。

その一方で、オマーンの学生がもっと日本に来てほしいと思っています。伝統的にオマーンの学生の多くは、教育を受けるために言語的な理由などから欧米諸国へ行きます。しかし、日本に来て成功した学生もたくさんいます。こうした人は、オマーンに戻ってからも日本とオマーンの関係を深める民間親善大使として活躍し、高い地位に就いていることも少なくありません。

ー日本では、SDGsが注目されるなど、持続可能な開発への関心が高まっています。オマーンはサステナビリティに対してどのような考え方を持っているのでしょうか。

SDGsとして国連で採択された目標の多くは、私たちが何世代にもわたって文化や国の方針の一部としてきたものです。オマーンでは持続可能性が重要視されており、2040年に向けたオマーンの国家ビジョンは、国連から称賛されました。

これは、2020年にスルタンとなったハイサム・ビン・ターリク陛下が数年かけて概要を作成し、先導してきたものです。そして、この中にはSDGsという言葉が頻繁に登場しています。つまり、ビジョンを実現するためには、SDGsは不可欠な要素ということです。

オマーンではすでに、全ての人を対象とした包括的な医療保障と、母子に対する追加的な福祉保障が実施されています。経済の多様化という点では、安価で地球にやさしいエネルギーも重要な要素です。特に水素エネルギーに注力しています。一方、リサイクルはオマーンでも今後もっと取り組んでいきたい分野です。

モハメッド・サイード・ハリファ・アル・ブサイディ(Mohamed Said Khalifa AL BUSAIDI)

駐日オマーン・スルタン国大使

高橋政司(たかはし・まさし)

ORIGINAL Inc. 執行役員 シニアコンサルタント

1989年、外務省入省。外交官として、パプアニューギニア、ドイツ連邦共和国などの日本大使館、総領事館において、主に日本を海外に紹介する文化・広報、日系企業支援などを担当。2005年、アジア大洋州局にて経済連携や安全保障関連の二国間業務に従事。 2009年、領事局にて定住外国人との協働政策や訪日観光客を含むインバウンド政策を担当し、訪日ビザの要件緩和、医療ツーリズムなど外国人観光客誘致に関する制度設計に携わる。 2012年、自治体国際課協会(CLAIR)に出向し、多文化共生部長、JET事業部長を歴任。2014年以降、ユネスコ(国連教育科学文化機関)業務を担当。「世界文化遺産」「世界自然遺産」「世界無形文化遺産」などさまざまな遺産の登録に携わる。

「Tokyo meets the world」シリーズをもっと読む

  • Things to do

新型コロナウイルスの世界的流行により日本のインバウンド観光は一時的に停止状態を余儀なくされているが、東京の多文化的な雰囲気はほとんど影響を受けていない。大きくは、この都市に住む多くのコスモポリタンな住民のおかげといえる。

この困難な時期にあっても、東京の国際コミュニティーは、ウイルスから身を守りながら東京を楽しむ新しい方法や、グリーンでサステナブルな未来の築き方まで、インスピレーションやアイデアの源であり続けているのだ。

我々が愛してやまないこの都市から世界中のイノベーティブな視点を幅広く取り上げようと、東京在住の駐日大使たちにインタビューシリーズを実施。今後数カ月にわたり、トップ外交官の協力のもと、各国のSDGsの取り組みから穴場のおすすめレストランまで定期的に紹介していく。

1人目は駐日イタリア大使、ジョルジョ・スタラーチェ。2017年から東京に駐在しているスタラーチェは、ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司と、クリーンエネルギー、サステナビリティ、東京の優れたイタリアンレストランなどについて語り合った。

  • Things to do

ベルギーといえば、多くの日本人にはチョコレートやワッフル、ビールなどが身近だろう。しかし、この西ヨーロッパの王国が、世界的な人気キャラクター、スマーフの生まれ故郷であるとともに、世界第4位の洋上風力エネルギー生産国であり、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を推進する先駆者でもあることも知ってほしい。

2019年に就任したロクサンヌ・ドゥ・ビルデルリング駐日大使にインタビューを依頼したところ、快く応じてくれた。ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントで、SDGs関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司と対談を実施。SDGsや環境に優しい世界経済に対するベルギーの貢献について詳細に語った。

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  • Things to do

駐日大使へのインタビューシリーズ「Tokyo meets the world」第3回は、インド。2019年1月から大使に就任したサンジェイ・クマール・ヴァルマに、国際情勢から東京での生活まで幅広く話を聞いた。大使は、両国間のビジネスや技術などの交流を深めるため尽力しながら、博物館巡りや皇居の庭園を散策する時間も大切にしている。

ORIGINAL Inc.のシニアコンサルタントでSDGs(国連の持続可能な開発目標)関連の業務を担当した経験のある元外交官の高橋政司との対談では、新型コロナウイルス感染症への対応からSDGsに対するインドのアプローチなど、重要な問題を語った。また、東京で一番のインド料理店を選ぶことができない理由や、インド人が日本のカレーをどう思っているかなどについても自身の考えを伝えてくれた。

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