UNLOCK SPRING 2024 – Culture Club
Photo : Keisuke Tanigawa都倉俊一(右)とジェイコブ・ベンブナン(左)

日本文化を世界に向け発信するために必要なこと

文化庁長官の都倉俊一と「サフラン・ブランド・コンサルタンツ」CEOのジェイコブ・ベンブナンが対談

編集:
Time Out Tokyo Editors
翻訳:
Riko
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インタビュー、テキスト:マーカス・ウェブ、イリ・サーリネン、東谷彰子

本記事は、「UNLOCK THE REAL JAPANに2024年3月29日付けで掲載された「Culture Club」を翻訳、加筆・修正を行い転載。

コロナ禍を経て、インバウンドが急増している日本。その需要はモノからコトへ移行しつつある。訪れる多くの外国人観光客は、現地での体験を通し、日本独自の文化や慣習に感銘を受ける。一方、世界に向けた日本文化のPRはどうか。作曲家であり文化庁長官の都倉俊一と、都市のブランディングを手がける「サフラン・ブランド・コンサルタンツ」の最高経営責任者(以下CEO)、ジェイコブ・ベンブナン(Jacob Benbunan)は、日本文化を世界に広めるための方法について語っている。

この国を訪れた誰もが言うように、日本は古代の寺院や伝統からアニメまで、比類のない文化の豊かさを誇っている。日本に世界的なソフトパワーを与える貴重な資源だろう。しかし日本文化の世界的な人気は、おそらく「クールジャパン」と呼ばれるつたない宣伝努力よりも、むしろ海外からの関心や発見の結果であると言えるかもしれない。

日本の国際的なPR活動の失敗は、隣国である韓国の成功とは明らかに対照的だ。近年韓国は政府の支援を受け、ポップカルチャーで世界的な影響力を持つまでに成長し、日本のPR活動の不信は東京で懸念されている。では、日本はどうすればいいのだろうか。UNLOCKは、この分野の専門家2人に洞察を語ってもらった。

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文化庁長官の都倉は国際的なキャリアを持つ作曲家であり、海外における日本のイメージについて深い見識を持つ。彼によれば、日本の最大の強みは、その長い歴史と複雑な文化にある。「外国人観光客が日本を訪れるのは、日本が持つ(豊かな)文化的資産に引かれるからです。伝統や制度、習慣など、何世紀も前のものが観光客を魅了するのです」

ベンブナンも、日本文化の魅力に同意し、「細部へのこだわりや職人技、古くからの伝統は、ほかでは見られないものです」と語る。

Facebook社のMetaへのリブランディングや、ロンドンやウィーン、サウジアラビアの首都リヤドにおけるクリエーティブ地区など、地域のブランディングでも知られるベンブナンは、説得力のあるグローバルブランドを作る鍵は日本にあると考えている。「ブランドとは、提供する体験の約束であり、どこへ行っても日本を訪れるという体験は本当に素晴らしいものです」と話した。

しかし、その体験を効果的に伝えることは簡単ではない。都倉は茶の世界の一場面を想起させ、日本人の多くがプロモーションに消極的なことを説明している。

茶道の亭主は、精巧に作られた茶碗に大金を払うかもしれない。彼は茶室にその茶わんを置くものの決してそのことには触れず、知識のある客だけがその茶わんを話題にするのを期待する。そして、たとえその茶わんのことが話題に出てきたとしても、軽くあしらう。

「それは 『あら、お気づきになりましたか』 という感じです」と都倉は笑う。「自己宣伝は下品なことのように見なされています」と、ベンブナンもこれに同意した。「(卓越性の主張を期待することは)素晴らしく洗練されていますが、結局のところ、世界に(日本に)来るように言わなければならないのです」

文化庁では、日本の広報活動の改善に向けて必要な意識改革がすでに始まっている。

「全ての部署に、各分野でどのように広報できるかを考えるように、文化庁長官としてミッションを与えました」と都倉は言う。また、国内最大級のロックフェスティバルである「SUMMER SONIC」の支援を行うなど、あらゆる形でカルチャーを取り込むこともPR重視の姿勢の基軸となっている。

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ベンブナンの見解では、これらの取り組みは一貫したメッセージを持つ日本のブランド確立を目指すべきプロジェクトにとって有望なスタートとなる。「日本文化を広めるには、中核となる強力なアイデアが必要です。それは日本をブランドとして定義するものです」と彼は言う。

難しい命題かもしれないが、世界で最も象徴的な文化的イメージを活用できる日本にとって、達成できないことはないはずだ。

 

都倉俊一

作曲家。第23代文化庁長官。元日本音楽著作権協会(JASRAC)会長。70年代からヒットメーカーとして、日本レコード大賞作曲賞など主要賞を多数受賞。

ジェイコブ・ベンブナン

Meta(旧Facebook)などのブランディングを手がけた、スペインを拠点にコンサルティング業務を展開するサフラン・ブランド・コンサルタンツのCEO兼共同創業者。

世界目線で東京をもっと知りたいのなら……

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タイムアウトの海外都市ライターやエディター8人が集い、開催された座談会。テーマは「人々は何に惹かれて東京にやってくるのか」。今回は、東京観光財団とのタイアップ企画として行われた本座談会の後編だ(前編は以下の関連記事をチェック)。海外旅行客目線の東京の魅力が多いに語られた前半に続き、後半では、グローバル都市として発展し続ける東京の今後の課題や戦略についても、興味深い意見が交わされた。

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2023年、コロナ禍が収束し、東京には多くの海外観光客が舞い戻った。これまで何度も人気旅先ランキング上位にランクインしてきた東京だが、人々は何に惹かれこの都市にやってくるのか。タイムアウトの海外都市ライターやエディター8人が集い、座談会を行った。本座談会は東京観光財団とタイムアウト東京のタイアップとして企画され、2024年2月上旬に開催された。今回はその前編だ。

参加したのは、タイムアウト東京の英語版編集長であり、マレーシア出身のチーワ・リム(Lim Chee Wah)、海外のタイムアウト都市からは、イギリスのマーカス・ウェブ(Marcus Webb)、シンガポールのニコルマリー・ナング(Nicole-Marie Ng)、香港のチェリー・チャン(Cherry Chan)、タイのトップ・コアソンブン(Top Koaysomboon)というメンバーだ。そのほか、東京観光財団から山村美穂、タイムアウト東京から東谷彰子、香港出身のウィルケン・ホ(Wilken Ho)などが参加した。

話題は、特に「海外観光客はコロナ禍後の東京へ来るのか」という部分に焦点が置かれ、東京を2回以上訪れたことがあるメンバーたちの口からはさまざまな意見が飛び出した。

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