タイムアウトの軌跡を振り返る

70ポンドの制作資金で始まった創業時から数百万人の読者を擁する現在まで

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Time Out editors
timeout
Time Out
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全ては1968年に始まった......

1960年代ロンドンのカルチャーに魅せられ、そこで起きているイベントの信頼できる情報が必要だと考えたトニー・エリオットは1968年、キール大学の夏季休暇中に「タイムアウト」を創設。彼はケンジントンにある母親の家のキッチンテーブルで、最初のエディションを70ポンドで制作した。その資金は、20歳になったばかりの彼のために叔母がくれた誕生日プレゼントの一部であった。

タイムアウトはほかとは一線を画したマガジンで、それまでに見たことがないものだった。そこにはアート、映画、コンサート、観劇、レストランなど、ロンドンで最高な時間をすごすための情報がまとめてあった。そしてやがて、人々のシティーライフを変えることにもなるのだ。

Tony Elliott, photographed in 1970 by Jeremy Beadle and 2018 by Andy ParsonsTony Elliott, photographed in 1970 by Jeremy Beadle and 2018 by Andy Parsons

1970年代

今日まで使われることになるアイコニックなタイムアウトのロゴを生み出したアートディレクターのピアース・マーチバンクも加わり、1971年、エリオットはタイムアウトを週刊に変更。雑誌はすぐにシティーライフに欠かせないガイドとなった。ロンドナーたちの日々のお出かけがより楽しくなるような情報を、広い分野から毎週提供し、アンディー・ウォーホルやデヴィッド・ボウイ、ジャック・ニコルソンらにインタビューも行った。

LGBT+ の権利のような政治的主張のキャンペーンを展開し、『ノッティングヒルカーニバル』の急速な発展にも寄与した上、1973年には伝説的なイギリスのコメディー集団、モンティ・パイソンが客員編集者を務めている。

Time Out covers, 1968 to 1974Time Out covers, 1968 to 1974. Warhol: Pearce Marchbank/Peter Brookes. Churchill: Pearce Marchbank/Roger Perry

1980年代

1981年の労働争議の後、タイムアウトはタイムアウトは「ゲイ&レズビアン」やナイトライフのセクションもマガジンに加えて、ライフスタイルに改めて力を入れるようになった。

 
また、テレビ情報を発信する規制緩和のためにキャンペーンを展開したり、ハンター・S.トンプソンとジョージ・マイケルと意見を衝突させたり、1980年代の終わりにはタイムアウトブランドを世界に広げていくための計画を立てていた。 

1990年代

1990年代を通して、タイムアウトはロンドンの生活とカルチャーの一部としての地位を盤石のものとした。90年代最初のインタビューはダミアン・ハースト、トレイシー・エミン、スパイスガールズで、ヤングブリティッシュアーティストの「センセーショナル」で論議を巻き起こした展示に協賛し、ブリットポップや『トレインスポッティング』の影響を受けた現象を擁護してもいる。

1995年に立ち上げられたタイムアウトニューヨークは急速な成功を収め、そのことでタイムアウトというブランドが海外でも通用することが存分に証明されたのだった。同じ年には世界各地で展開を始めただけでなく、初のウェブサイトも立ち上げている。このサイトには、オンライン時代に向かう道を照らしてくれるエキスパートたちのおすすめ情報が詰まっていたのだ。

Time Out covers, 1980 to 1996Time Out covers from 1980 to 1996. Video games: Pearce Marchbank. Weird Sex: Kirk Teasdale. New York: Troy Word 

2000年代

イスタンブールを筆頭に、ドバイやサンクトペテルブルク、テルアビブ、北京、シドニーといった新しい都市がタイムアウトのフランチャイズパートナーに加わり、タイムアウトを自分たちの街でも展開したいと考えた各都市のローカルエキスパートたちによって運営された。

タイムアウトニューヨークが立ち上げた、子どもと一緒に過ごす家族向けの情報を集めたキッズブランドは、後にロンドンでも採用されて成功する。タイムアウトロンドンが作ったiPhoneアプリも、タイムアウトブランドをデジタルでも発展させていく礎になった。

2010年代

新時代の始まりにあって、タイムアウトのeコマースのプラットフォームも立ち上げられ、ユーザーは記事を読むだけでなく、その都市のベストな体験を予約することもできるようになった。2012年にはタイムアウトロンドンは週刊のフリーペーパーとなり地下鉄や駅で配布されて、ロンドンで最も広く読まれるフリーマガジンになっている。これをきっかけにして、ニューヨーク、シカゴ、マイアミ、バルセロナ、香港なども、このフリーマガジンというビジネスモデルを採用した。

2014年にはタイムアウトマーケット リスボンがオープンした。これは彼の地の最良のレストラン、バー、カルチャーが一箇所に集められた、まさにタイムアウトの理念の具現化とも言うべきもので、専門的なキュレーションという新時代を切り開いた。2016年にはCEOのジュリオ・ブルーノの主導下で、タイムアウトグループはAIM株式市場に上場、「TMO」のティッカーシンボル(※1)で将来のさらなる投資のために取引を行う。フランチャイズだったオーストラリア、スペイン、香港、シンガポール、ソウルを買収し、直営化した。

※1 ティッカーシンボルは株式市場で企業などを識別するために使われる符丁で、多くは会社名を短縮した形が採用される。「TMO」はTime Outの短縮形。

Time Out covers from Chicago, Barcelona and Hong KongTime Out covers from around the world. Chicago: Stephen Meierding. Barcelona: Diego Piccininno. Hong Kong: Phoebe Cheng

未来へ

50年以上をかけてタイムアウトはグローバルメディアとなり、315都市58カ国のコンテンツを網羅して、世界中の数千万の人々の行動に影響力を持つメディアブランドになった。

収益の大部分は今やデジタルによるものであるが、印刷物は依然として非常に熱心な読者に向けた重要な存在であり続けている。マガジンは40都市で入手可能で、雑誌とデジタルの両軸でタイムアウトブランドが成功を収めていることを証明している。世界中のタイムアウトマガジンは毎月7400万人もの読者のもとに届き、数百万人のウェブサイト訪問者を魅了するオンラインコンテンツは30万ページ以上に上る。

Time Out Market LisbonTime Out Market Lisbon

タイムアウトのハイクオリティーなコンテンツは、経験を積んだジャーナリストが編集し、ウェブサイト、モバイルアプリ、ソーシャルメディアチャンネル、雑誌、ライブイベント、マーケットといったグローバルなネットワークに展開している。2014年5月のオープン以来、タイムアウトマーケット リスボンは大成功を収め、今やおそらく当地で最も人気を博す観光スポットとなった。それは数百年の歴史を有する一つの都市において決して小さくない偉業でもあるのだ。

この成功に続く2019年、マイアミ、ニューヨーク、ボストン、モントリオール、シカゴといった北アメリカの5都市にタイムアウトマーケットが開業。ドバイ、ロンドン、プラハなど、ほかのグローバル都市でも、各地のベストにして最も著名なシェフやレストランオーナー、飲食やカルチャーの紹介する施設の開業が予定されている。

多くのことが変化しているが、タイムアウトのミッションは、人々のお出かけ体験をより良いものにすること。それは、創刊から今日まで変わっていない。

原文はこちら

タイムアウトについてもっと知りたいなら

  • Things to do
  • シティライフ

タイムアウト創業者のトニー・エリオット(1947〜2020年)が長い闘病の末、2020年7月17日に死去した。73歳だった。葬儀は家族と近しい友人同僚のみで執り行われる。 トニーは先見性に富んだ出版人にしてシティーカルチャーの倦むことなき擁護者、そしていつも頼もしい味方だった。その生涯と業績は、彼を個人的に知る機会に恵まれなかった数多くの人々をも照らし続けている。 

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  • シティライフ

どの観光ガイドブックを開いても、同じような情報ばかり。海外旅行の際にそんな気持ちになったことはないだろうか。 世界108都市で展開するタイムアウトは、その都市の住民だけが知っているようなローカルでニッチな情報を、それぞれ現地語と英語で、マガジンやウェブサイト上で発信している。

「日本語しか読めないから使えない」という人もいるかもしれない。だが安心してほしい。実は全て日本語で読めるウェブサイトがあるのだ。タイムアウト東京が運営する「Around The World(アラウンド・ザ・ワールド)」は、世界中のタイムアウトの情報を日本語で紹介している。

 

  • トラベル
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タイムアウトのワールドワイドサイトで、『36 trips we’re going to book as soon as this is over(「これ」が終わったら旅行したい36の場所)』と題された記事が公開された。同記事では、世界のタイムアウトの編集者たちが、新型コロナウイルス(COVID-19)が落ち着き、旅をするのに安全な状態になったらすぐに訪れたいと思っている目的地を熱い思いとともに紹介している。

日本も紹介されており、多くのエディターからコメントが寄せられた。ここではそれを紹介しよう。

 

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1968年にロンドンで誕生して以来、常にその街の斬新かつ良質な情報を届けるシティマガジンとして、愛されてきたタイムアウト。そんな同誌がこの度、世界各都市のタイムアウトで掲載されたニュースを集めた、待望のサイトTime Out Globalをローンチした。

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