インタビュー:STEVE NAKAMURA

きゃりーぱみゅぱみゅのビジュアルを支えるアドリブ感
作成者: Kunihiro Miki |
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インタビュー:三木邦洋
撮影:鈴木大喜

ラフォーレミュージアム原宿で2016年12月16日(金)から開催されるきゃりーぱみゅぱみゅのアートワーク展『KYARY PAMYU PAMYU ARTWORK EXHIBITION 2011-2016』に先駆け、彼女のデビューから現在までの5年間のアートワークを一冊に収めたビジュアルブック『きゃりーぱみゅぱみゅアートワークス 2011-2016 | STEVE NAKAMURA』が発売された。きゃりーぱみゅぱみゅの鮮烈なヴィジュアルイメージを確立させた張本人である、アートディレクターのSTEVE NAKAMURA(スティーブ・ナカムラ)が手がけた作品の数々を、ラフ画とともに見渡すことのできる一冊だ。タイムアウト東京マガジンの表紙のディレクションも手がけるSTEVEだが、アナログな手法で驚くほどモダンなイメージを産み出す彼に、創作の姿勢や人生観を語ってもらった。

『きゃりーぱみゅぱみゅアートワークス 2011-2016 | STEVE NAKAMURA』にはスティーブさんが手がけたきゃりーぱみゅぱみゅのビジュアル約300点が収録されていますが、作品をまとめて見渡してみて、どんな印象でしたか。

スティーブ:まずはこんなにいっぱいやったんだ、ということ。ひとつひとつ、その場では分からないけれど、ものすごくエネルギーを使ったなと思う。あと、全体をまとめてみると流れがあったんだなと。僕は(制作において)アドリブを大切にしているんです。きゃりーとの仕事では、その場でのアイデアを実験、試すような作品が多かった気がした。それが全部まとまったものを観ると、ドキュメントでもあり、ひとつの作品でもあると感じたな。

制作時に意図していたわけではないけれど、流れができているのを感じたと。

スティーブ:きゃりーの作品は、時間がない中で思い浮かんだものを形にしているので完璧じゃなくても、アイデアが伝わることが大事。いちいち振り返ることはしない。完璧に作り上げる仕事もあるけれど、きゃりーに関しては、アドリブ感の方が大事だったな。

彼女の第一印象は、覚えていますか。

スティーブ:初対面する前に、彼女のブログを見せてもらっていたんですが、ビジュアルの面で見ると、ほかの女の子より見る感覚が明らかに変わっていた。だから面白く作れる可能性を感じた。

スティーブさん自身の手法と、相性が良いと思ったわけですか。

スティーブ:うん。彼女の計算されていないところ、狙っていないところが、僕にとって大事なポイント。狙い過ぎていないようなビジュアルが好きです。

幅広い表現を試すことができそうという期待があった?

スティーブ:というよりは、彼女がいいように驚くアイデアを持ってくるようにしています。彼女に合わないものを作ってやってもらっても、楽しくならないし、それは表情にも出てしまう。だから、半分精神的なことかもしれない。あとは、前にやったものとは被らないようにする。それは本人のためでもあり、自分の作品ですからね。気持ちが入らないと、良いものって作れないから。

―彼女のアートワークと広告を作るプロセスはどう違いますか?

スティーブ:広告の世界だと、マーケティングをして、今これが流行っているからとか、若い人がどうとか、計算で動くけど、僕がきゃりーを手がけるときはそういうことには、乗らない。自分がその場の面白いと思うネタをすぐ形にする。

デビュー作の『もしもし原宿』のときは、日本のポップカルチャーに新しいテイストを持ち込むんだという狙いもあったとのことですが、この5年間で彼女自身がポップカルチャーの中心に位置するようになりました。当時と今で、彼女をディレクションする意義に変化はありますか。

スティーブ:グラフィックやジャケットは彼女の一番純粋な表現で、それは本人も感じていると思う。人前でパフォーマンスする状況に対して、グラフィックの撮影は一番人数が少ないし、自然な小さな環境で、集中できるから。もっと媚びない感じで、個人的な気持ちが出ると思う。それは変わらないことだし、挑戦する気持ちがないとできない。老若男女に受けるようにと意識して作っていたら、面白い物はできない。とはいえ、この作品集を見たらわかると思うけど、そんなに失礼なことはやっていない。遊びなんですよこれは。グロテスクな部分も、変わった組み合わせも、ポップカルチャーで遊んでいるということ。

ポップカルチャーの受容については、スティーブさんが生まれたアメリカと日本では感覚が違うのではないですか。

スティーブ:そうですね。違うと思います。でも、違うカルチャー同士をうまく組み合わせると、時々ピンとくるときがある。誰も見たことのないアブストラクト過ぎるものより、みんながどこかで見て少し記憶にある外国のポップカルチャーや文化を引き出す。一番やりたくないのは、みんなが同じところで影響されているものを扱うこと。自分が経験したものから持ってくることが大事だと思いますね。

古くならない物を作りたい、という考えはありますか。

スティーブ:ずっと残ってほしいとは思いますね。あと、流行とは逆のことをする。流行ものに影響されることはあるかもしれないけれど、それをあえてやるようなことはしない。そうすれば、古くならない。だから、タイミングと環境なんですよね。みんなが赤を使っていたら、別の色を使った方が目立つよね。流行かどうか、ということより、10年後残るかどうかの方が大事。僕は子どものころから好きな物が変わっていない。

ーそれは音楽とか、アートとかですか。

スティーブ:うん。中学生のときに好きになったスティーリー・ダンとか、まだ聴いている。あのときは深く理解してなかったにしろ、感じていた。アートだと、子どものような絵を描く画家が好き。そういう絵っていうのは、ピュアな気持ちを伝える。僕にとって、かっこつけているファッション雑誌は、どうしても恥ずかしく感じる。かっこいいものって、やっぱりかっこつけてないんですよ。可愛い人っていうのもそう。僕は赤ちゃんが一番可愛いと思う(笑)。

なるほど(笑)。ピュアなものかどうか、見ているんですね。

スティーブ:そこにはすごく敏感。すぐにわかるよ。頑張っている人、強気になっている人、すぐに読める。だから、被写体が緊張しているときは、リラックスできる環境を作る。

スティーブさんの創作におけるルーツには何があるのでしょうか。

スティーブ:モダーンアートはずっと好きだけど、実は高校生までジャズを勉強していたんですよ。スティーリー・ダンのライナーノーツには色々なミュージシャンについての名前が書いてあって、そこからロックジャズを経てジャズに行った。ジャズの大事なところって、アドリブ感。バックにはベースとしての型があるけれど、その上で、アドリブできるようなスペースがある環境。その方が、気持ちが伝わる作品が作れると思うんですよ。でも、ビル・エヴァンスだったかな、1960年代のインタビューで「なぜジャズが新しいのか」という質問に対して、「ジャズは元のクラシカルのリバイバルだ」と言っていた。「クラシックも、もともとはアドリブだったけれど、その音楽を残すための方法が楽譜に書くことだったから、だんだんアドリブ感がなくなった。模倣して完璧な演奏を目指す環境になっただけ」だと言っていた。

 

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—スティーブさんはアメリカで育ち、イギリスで学ばれたわけですが、海外を拠点にしたいと思われたことはないのですか。

スティーブ:あるよ。あるけど、結局日本で11年経ってしまった……。仕事の単価はアメリカのほうが高かったりっていうことはあるけど、日本のライフスタイルが好きというのはあるね。一つ不満なのは、東京には自然が少ないということ。街中にあまりにも自然が少なくて、落ち着かないかな。とはいえ、完全に大自然のなかに住んでしまうと、僕が仕事で使う変な物とかが手に入らなくなってしまう(笑)。

逆に、東京で好きな街はありますか。

スティーブ:神保町かな。たまに休みの日に一人で本を買って、カレーか餃子かなんか食べて帰ってくるとか。あとは、東京は食べ物がすごい。和食からイタリアンから。だって、毎週旅行するわけではないし、やることって言えば、食べることじゃない?食事を目的としてどこかに行く。

今年は熱海に行かれたとのことですが。

スティーブ:『Nearly Eternal』(2016年1月にヨーロッパとアメリカで発売された、スティーブ・ナカムラとノーバート・ショルナーによる写真集)のときだね。熱海は、昔は豪華な感じだったけど、時代が動かず、あの独特な雰囲気になったわけで、そういう場所は熱海だけだと思う。例えば、ギリシャの門と和風の畳が同じ空間にあったり、あの当時の日本人が見るヨーロッパ像みたいな感じもある。それがまだ残っているのは貴重です。きゃりーの作品でも熱海で撮ったことはあるよ。日本にしかない組み合わせ。でも、この前原宿を歩いていたら、全身シャカシャカのトレーニングウェアを着て、イタリアのマフィアみたいな太ったおじさんがいたんだけど、それだけで面白かったんだよ。だから、逆のシチュエーションもあるなって(笑)。

『Nearly Eternal』より


仮に今後、時間や資金に縛られずに制作できる環境を与えられたら、どんなことをやってみたいですか。

スティーブ:やっぱり、本を作りたいね。あとは、まだそこまでのエネルギーを費やせないけど、映画とかね。

きゃりーぱみゅぱみゅと一緒に、今後やっていきたいことは?

スティーブ:この本(『きゃりーぱみゅぱみゅアートワークス 2011-2016 | STEVE NAKAMURA』)の中にあるものとは違う、何かをやりたいね。未来のことだから、その場の気持ちで決まることだけど。

『KYARY PAMYU PAMYU ARTWORK EXHIBITION 2011-2016』の詳細はこちら

『きゃりーぱみゅぱみゅアートワークス 2011-2016 | STEVE NAKAMURA』の詳細はこちら

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