ローザス、アトラファイブ『和声と創意の試み』
Photo: Anne Van Aerschot 提供:彩の国さいたま芸術劇場 | ローザス、アトラファイブ『和声と創意の試み』
Photo: Anne Van Aerschot 提供:彩の国さいたま芸術劇場

東京、6月に観るべき舞台5選

鶴屋南北の歌舞伎『盟三五大切』、オペラ『エレクトラ』、イッセー尾形主演の『セールスマンの死』など

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今月のオススメ公演には、愛や死をディープに描いた作品が揃った。歌舞伎『盟三五大切(かみかけてさんごたいせつ)』は、痴情のもつれと運命のいたずらに翻弄される人々を描いた鶴屋南北の芝居。バレエ『白鳥の湖』は、魔術師ロットバルトの呪いで白鳥に変えられたオデットを救おうとしたジークフリード王子がロットバルトの娘オディールに愛を誓ってしまう物語。オペラ『エレクトラ』は母とその愛人に父を殺された王女が父の復讐を願い、それがかなうまでを描く。いずれも、ドロドロとした世界が、舞台になるとこうも美しく心を奪うものになるのかと驚かされるはず。

一方、『セールスマンの死』はもう少し現代的な、サラリーマンの苦悩や悲哀に焦点を当てた作品。また、『和声と創意の試み』はヴィヴァルディに乗せて送る力強いダンスだ。 梅雨も近づいているが、魅力ある舞台で、じめじめした暑さを忘れよう。

六月大歌舞伎

盟三五大切
画像提供:松竹『盟三五大切』メインビジュアル

6月の歌舞伎座は話題作が目白押し。 中でも見逃せないのが、夜の部の通し狂言『盟三五大切』だ。船頭の三五郎は勘当された父から百両の金が必要だと言われ、妻の小万を深川芸者にして金を稼いでおり、やがて小万に思いを寄せる源五兵衛を騙して百両を手に入れる。その百両は源五兵衛が主君の仇討ちに参加するために必要な金だったが、実は三五郎の父が金を必要としていたのも、主君にあたる源五兵衛のためなのだった。騙されて復讐に走る源五兵衛。やがて三五郎は真実を知り……。

運命に翻弄される人間の業を、凄絶な美しさと共に描く、鶴屋南北の名作。騙す三五郎と騙される源五兵衛を、中村勘九郎と尾上松也が日替わりで交互に演じる趣向も面白い。小万には中村七之助。同世代の三人を中心とするドラマに注目だ。

このほか、昼の部では中村時蔵が女方の大役“三姫”の一つである雪姫に挑む『祇園祭礼信仰記』や、中村獅童が映画やテレビドラマで知られる子連れの主人公・拝一刀を実子の中村夏幹の“子連れ”で演じる歌舞伎版『子連れ狼』など、見どころは多い。

※6月3~25日/歌舞伎座/昼の部は11時から、夜の部は16時30分から/休演日は10・18日/料金は5,000円から(席によって異なる)

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新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』

新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』
撮影:長谷川清徳 画像提供:新国立劇場バレエ団『白鳥の湖』

新国立劇場バレエ団がピーター・ライト版『白鳥の湖』を再演する。2021/2022シーズン最初の演目としてバレエ団初演したプロダクションだ。

父王の死後、新たな王となったジークフリードは、結婚相手を選ぶよう求められる。21歳の誕生日の夜、友人ベンノとともに白鳥を追って湖へ向かうと、一羽の白鳥が美しいオデット姫の姿となる。オデットは魔術師ロットバルトの呪いで、昼は白鳥の姿に変えられ、夜になると人間に戻れるのだ。呪いを解くには、純粋な男性からの永遠の愛と結婚の誓いが必要だと知り、ジークフリードはオデットに愛を誓う。翌日の舞踏会に、ロットバルトがオデットそっくりに変身させた娘オディールを伴って現れる。ジークフリードはオディールをオデットと思い込み……。

このプロダクションの特長は、イギリスの振付家らしい演劇性と論理性。従来の『白鳥の湖』ではジークフリードの父の不在の理由は不明だが、本プロダクションは王の葬儀の場面で始まり、また舞踏会では通常は物語と関係なく挿入されることの多い各国の踊りが王子の花嫁候補の踊りとセットになっている。そしてこうした工夫の全てが、悲劇を盛り立て、ドラマティックな結末へと観客を誘う。

主役のオデット/オディールとジークフリード王子には6組。バレエ団の層の厚さがうかがえる。見比べるのも楽しい。

※6月5~14日/新国立劇場/昼の部は13(14)時から、夜の部は18時30分から(日によって異なる)/料金は6,050円から(席によって異なる)

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ローザス、アトラファイブ『和声と創意の試み』

ローザス、アトラファイブ『和声と創意の試み』
Photo: Anne Van Aerschot 提供:彩の国さいたま芸術劇場『和声と創意の試み』

ベルギー出身の振付家アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル主宰のダンスカンパニー、ローザス(ROSAS)と、モロッコ出身の振付家ラドワン・ムリジガ率いるアトラファイブ(A7LA5)が2024年に初演した『和声と創意の試み』が、日本で上演される。

これまで日本でも、スティーヴ・ライヒ、ジョーン・バエズ、マイルス・デイヴィス、バッハなど様々な音楽を、ただの伴奏ではなくダンスと密接に関わるものとして緻密に扱ってきたケースマイケル。今回、ムリジガとの共同振付作として選んだのは、誰もが耳にしたことがあるであろうヴィヴァルディの《四季》だ。3つの楽章からなる4曲一つ一つに季節の名がつけられたこの曲を、ダンサーたちが躍動感たっぷりに踊っていく。具象的な作品ではないが、現代の四季を考える上で欠かせない環境問題などの視点も入っているという。

長きにわたってダンスの最前線を走っている1960年生まれのケースマイケルに対し、ムリジガは1985年生まれ。マラケシュとチュニジアでダンスを学んだ後、ケースマイケルがモネ劇場と共同で設立したパフォーミング・アーツ・リサーチ&トレーニング・スタジオ「P.A.R.T.S」で学び、ローザス公演などにも関わってきた。両者のコラボレーションによる新鮮な舞台を、ぜひ。

※6月19~21日/彩の国さいたま芸術劇場/19日 19時30分から、20・21日 14時から/料金は5,000円から(席によって異なる)

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セールスマンの死

セールスマンの死
画像提供:インプレッション『セールスマンの死』メインビジュアル

アメリカの劇作家アーサー・ミラーの名作戯曲『サラリーマンの死』。1949年に発表され、トニー賞ベストプレイ賞やピューリッツァ賞を受賞し、その後も数々の名優が主人公を演じてきた本作が、小川絵梨子演出、イッセー尾形主演で上演される。

アフリカで財を成したアメリカンドリームの体現である兄に憧れ、彼に付いて行かなかったことを悔やみつつセールスマンとしての仕事を誇っている主人公ウィリー・ローマン。しかし60歳を過ぎ、仕事での思うような成果は出せなくなっている。それでも彼は、ずっと抱いてきた強い男のイメージを、自身にも息子にも課そうとするが……。

時代が移り変わる中、過去の栄光のイメージから離れられない主人公の姿や次世代との摩擦・齟齬など、現代の日本でも頷くことの多い普遍的な世界。コメディアン、そして俳優として独自の世界を作っているイッセー尾形が、どのようにサラリーマンの生き様と死を体現するか、そしてウィリーの長男ビフ役の中島裕翔、ウィリーの妻リンダ役の高橋惠子らとともにどのような家庭のあり様を造形するのか、注目だ。

※6月26~28日/東京芸術劇場 プレイハウス/昼の部は12時から、夜の部は17(18)時30分から(日によって異なる)/料金は9,500円から(席によって異なる)

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新国立劇場 オペラ『エレクトラ』

新国立劇場 オペラ『エレクトラ』
画像提供:新国立劇場『エレクトラ』メインビジュアル

新国立劇場がリヒャルト・シュトラウスのオペラ『エレクトラ』を上演する。ギリシャ悲劇をもとにフーゴー・フォン・ホフマンスタールが台本を書き、1909年に初演されたオペラだ。

物語の背景にあるのは、ギリシャ連合軍とトロイア王国が10年にわたって戦い、ギリシャの勝利に終わったトロイア戦争。ギリシャ側の総大将だったミュケナイ王アガメムノンは、戦利品として捕らえたトロイア王女カッサンドラを愛妾にして帰国するが、妻クリテムネストラとその愛人エギストによって殺害されてしまう。アガメムノンとクリテムネストラの娘エレクトラは父を慕い、復讐を願って、父と同じく命を狙われるも脱出したオレストの帰りを待ちわびている。やがてオレストが帰還し、復讐は果たされる。

ほぼ出ずっぱりで父への思慕や母たちへの怒り、そしてオレストの帰還の希望などを歌うエレクトラ役は、力強い歌声や高い表現力が求められる難役。この役で近年、評判を得ているエストニア出身のドラマティック・ソプラノのアイレ・アッソーニや、国際的なメゾ・ソプラノであるクリテムネストラ役の藤村実穂子、オレスト役を歌うラトビア出身の名バス・バリトン歌手エギルス・シリンスらの歌唱に期待は高まる。

そしてもう一つ楽しみなのが、ドイツ出身のオペラ演出家ヨハネス・エラートの演出。現代的な解釈や鋭い心理描写で話題になることも多いエラートは今回、どのようなドラマを見せてくれるだろうか。上演は休憩なしの約1時間45分を予定。オペラにしては短いので、芝居のような感覚で観て聴いてみるのはいかがだろう?

※6月29日、7月2・5・8・12日/新国立劇場 オペラパレス/14時から(6月29日 19時から)/料金は7,700円から(席によって異なる)

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Contributor

高橋彩子

舞台芸術ライター。現代劇、伝統芸能、バレエ・ダンス、 ミュージカル、オペラなどを中心に取材し、「SPICE」「AERA」「The Japan Times」や、各種公演パンフレットなどに執筆。第10回日本ダンス評論賞第一席。年間観劇数は250本以上。現在、ウェブマガジン「ONTOMO」で聴覚面から舞台を紹介する「耳から“観る”舞台」、エンタメ特化型情報メディア「SPICE」で「もっと文楽!〜文楽技芸員インタビュー〜」を連載中。

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