Noism0+Noism1『私は海をだきしめていたい』
撮影:松橋晶子 提供:りゅーとぴあ | 「Noism0+Noism1『私は海をだきしめていたい』」
撮影:松橋晶子 提供:りゅーとぴあ

東京、7月に観るべき舞台5選

スーパー歌舞伎『もののけ姫』やNoism0+Noism1、結城座『狂人教育』など

広告

タイムアウト東京 > カルチャー >東京、7月に観るべき舞台5選

7月も多種多様な公演を通して、人間の普遍的なテーマが浮かび上がる。

宮崎駿の名作アニメの世界が歌舞伎になるスーパー歌舞伎『もののけ姫』と、坂口安吾の独自の世界をサティの旋律とともに綴るNoism0Noism1『私は海をだきしめていたい』は、全く違う切り口ながら、どちらも人間と自然のあり様をとらえた作品と言えるだろう。

寺山修司の初期戯曲に取り組む結城座『狂人教育』は、人形劇を通して人間の本質に迫る作品。イプセンの『人形の家』を大胆に現代化した『NORA』は、女性の生き方に加え、現代のコミュニケーションも大きなテーマにしていると言えそう。

また、『サンセット大通り』は過去の栄光にすがる大女優の妄執の行方をサスペンス調で描き出すミュージカル。大女優ならぬ大歌手(ディーヴァ)のサラ・ブライトマンが降臨する。

過去の作家と現代のアーティストによる珠玉の舞台を楽しもう。

宮崎駿の漫画をもとにした新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』初演から約6年半。今度は同じく宮崎駿原作・脚本・監督の映画をもとに、スーパー歌舞伎『もののけ姫』が初演される。

エミシの村を襲うタタリ神を倒したため、死に至る呪いを受けた少年アシタカは、掟により村を追われ、呪いを断つ道を探すために西の国へと旅立つ。シシ神の森を目指す旅の途中、山犬に育てられた少女サン、製鉄の拠点であるタタラ場を統率するエボシ御前と出会ったアシタカは、鉄を作るために森を破壊し生命の源であるシシ神の首を狙う人間と、シシ神の森に縄張りを持つ猪一族らとの戦いに巻き込まれていく……

スーパー歌舞伎は故・二代目市川猿翁が1986年に創始したもので、従来の歌舞伎の手法と現代的なスペクタクル要素を融合させ、様々な題材を舞台化してきた。今回は、その猿翁の孫である市川團子がアシタカに扮し、サンを中村壱太郎、エボシ御前を中村時蔵、猪神一族の最長老・乙事主を猿翁の息子である市川中車が演じる。人間と自然のあるべき姿を問いかけるこの感動巨編。その世界を堪能しつつ、色褪せないテーマを噛み締めたい。

※7月3日~8月23日/新橋演舞場/昼の部は11時から、夜の部は16時から/休演日は7月8・13・21・27・31日、8月3・10・17日/料金は3,000円から(席により異なる)

江戸糸あやつり人形結城座が、歌人で劇作家の寺山修司が書いた『狂人教育』を上演する。初代結城孫三郎による創設以来、380年の歴史を持つという結城座は現在、「結城孫三郎」の名を息子に譲り一つ前の名に戻って活動する三代目両川船遊、その息子の十三代目結城孫三郎らが中心となって活動。『伽羅先代萩』『壺坂霊験記』などの古典や、唐十郎『秘密の花園』、カフカの『変身』など、その上演作は多岐にわたる。糸で操られた小さな人形の繊細さと、ふとした瞬間に見せるダイナミズムは、唯一無二だ。

 『狂人教育』は寺山が1962年、「人形のための実験劇」として書いた作品。ト書きによれば、舞台は「元伯爵ドン・ベンベンドッサが住んでいたと思われる『人形館』」。それぞれに個性的な祖父母、父母、娘と息子の6名からなる人形一家の誰か一人に狂人がいると医師に言われたことから、一家は(そして観客も)狂人探しをすることになる。異分子であれば狂人に認定されると考えた人形たちは皆、同じ行動を取り始め……

演出の松本修は本作を「同調圧力」についてのストーリーとし、世界中にはびこる差別や排斥の問題と接続するという。果たして狂気とは、そして人間とは何なのか。人形だからこその趣向を味わいながら、今なお色褪せない寺山の問いかけを受け止めよう。

※7月8~12日/中野ザ・ポケット/時間は日付により異なる/料金は5,600円、ペア10,500円、30歳以下3,300円、学生2,000円

広告

あの『オペラ座の怪人』の初演時、作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーのミューズとしてクリスティーヌ役を歌い演じ、約3オクターブの音域や透き通った「クリスタル・ボイス」で世界を魅了したサラ・ブライトマン。1990年の『アスペクツ・オブ・ラブ』を最後にミュージカルの舞台に立つことがなかった彼女が2024年、約33年ぶりに復帰したロイド=ウェバー作曲のミュージカル『サンセット大通り』の日本公演がまもなく開幕する。

物語の主人公は、無声映画時代の大女優だったノーマ・デズモンド。トーキーの到来とともに忘れ去られ、執事のマックスと、古びた豪邸で暮らしている。ある日、売れない脚本家ジョーが敷地内に偶然迷い込むと、ノーマは銀幕への復帰のために自ら書いた『サロメ』のシナリオの推敲を依頼。ふとしたことから男女の関係となったノーマとジョーだったが、ジョーは映画会社で働く若い女性ベティに惹かれ、物語は思いもよらぬ方向へと転がっていく。

これまでにも、グレン・クローズ、リタ・モレノ、最近ではトニー賞を受賞したニコール・シャージンガーなど、様々な俳優が演じて話題を呼んできたノーマは、年輪と存在感が必要な役。ソロ歌手として活躍してきたブライトマンはノーマとは違うが、往年のスターの復帰という意味ではどこか重なるところもあるかもしれない。

そして、彼女が日本でミュージカルの舞台に立つのは初めて。どのような姿を、歌唱を見せてくれるのか、楽しみだ。

※7月10日~8月1日/東急シアターオーブ/時間は日付により異なる/料金は8,000円から(席により異なる)、25歳以下6,000円(前売りのみ)

ノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンが1879年に発表した『人形の家』が、『NORA』のタイトルで、黒木華主演により上演される。演出・上演台本はロシア出身の演出家ティモフェイ・クリャービン。2022年のウクライナ侵攻を批判したことで当局の圧力を受け、現在はヨーロッパを拠点に活躍中だ。日本では全編手話で送る才気あふれる『三人姉妹』が上演された2019年が、いわばクリャービン受容元年となったが、今回の『NORA』は、その年にチューリッヒで世界初演されたプロダクションである。

主人公は、夫ヘルメルから守られるべきか弱い存在として愛されているノラ。しかし彼女はかつて、病気のヘルメルを救うため、夫に秘密で父親の署名を偽造し、借金をしていた。その貸主クログスタは、ヘルメルがまもなく頭取に就任する銀行に勤めていたが、ヘルメルは彼を解雇しようとしていた。これに反発したクログスタは、借金と署名偽造の事実を暴露すると言ってノラを脅す。やがて真相を知ったヘルメルの反応を目の当たりにしたノラは、自らの生き方を見つめ直し、大きな決断を下す。

クリャービンの台本では、イプセンのオリジナル戯曲とは異なり、登場人物たちが様々なSNSを使いこなし、しばしば対面ではなくメッセージやボイスメッセージでやり取りをする。中には送信前に削除されたメッセージもあり、その内容は本人と観客だけが知っている。かつて女性解放運動の象徴的作品とされた本作は、現代のドラマとして、どのような新しさと普遍性を具えて私たちに迫るのだろうか。

7月15〜26日/東京芸術劇場 プレイハウス/時間は日付により異なる/料金は7,000円から(席により異なる)、25歳以下5,000円、18歳以下1,000円

広告

りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館を拠点に活動する、日本初の公共劇場専属舞踊団Noism Company Niigata。このうちのプロフェッショナル選抜メンバーによるNoism0とプロフェッショナルカンパニーNoism1が、今年生誕120年を迎える作家・坂口安吾の同名の短編小説と、その安吾が愛し今年生誕160年となる作曲家エリック・サティのピアノ曲の世界にインスパイアされた『私は海をだきしめていたい』を初演する。

この小説は、「私」が一緒に暮らす女との関係を通しての実感や意識を記したもの。不感症でありつつ性に奔放な女の肉体を愛し、ある意味では囚われている私だが、それよりもはるかに広大な肉体である海を発見し、その海を抱きしめたいと願うのだった。

振付・演出の金森穣は、男と女の二つの役柄を舞踊家11人に担わせ、男性6人はサティの装いと同じ黒いジャケットと黒い帽子・黒い傘を持つスタイル、女性5人は真紅のドレスを着ている。そのそれぞれが表す、人間の複雑で多面的な精神世界を、サティの名曲とともに味わいたい。2020年初演の金森穣版『春の祭典』も併せて上演。

なお、Noism Company Niigata20278月末をもって、りゅーとぴあ専属カンパニーとしての活動を終了することが決まっている。その後の展開に注目しつつ、まずは今の彼らの踊りを目に焼き付けよう。

7月25・26日 15時〜彩の国さいたま芸術劇場料金は6,000円、25歳以下3,000円

Contributor

高橋彩子

舞台芸術ライター。現代劇、伝統芸能、バレエ・ダンス、 ミュージカル、オペラなどを中心に取材し、「SPICE」「AERA」「The Japan Times」や、各種公演パンフレットなどに執筆。第10回日本ダンス評論賞第一席。年間観劇数は250本以上。現在、ウェブマガジン「ONTOMO」で聴覚面から舞台を紹介する「耳から“観る”舞台」、エンタメ特化型情報メディア「SPICE」で「もっと文楽!〜文楽技芸員インタビュー〜」を連載中。

おすすめ
    最新ニュース
      広告