「Zenith of Ballet―至高の舞―」出演のマリアネラ・ヌニェス&ユーゴ・マルシャン『ジゼル』より第2幕のパ・ド・ドゥ|画像提供:Hugo Marchand
「Zenith of Ballet―至高の舞―」出演のマリアネラ・ヌニェス&ユーゴ・マルシャン『ジゼル』より第2幕のパ・ド・ドゥ|画像提供:Hugo Marchand
「Zenith of Ballet―至高の舞―」出演のマリアネラ・ヌニェス&ユーゴ・マルシャン『ジゼル』より第2幕のパ・ド・ドゥ|画像提供:Hugo Marchand

東京、1月に観るべき舞台5選

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』の舞台、世界屈指のダンサーらによるガラ公演「Zenith of Ballet」など

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テキスト:高橋彩子

新たな年、2026年がスタート。初芝居にふさわしい舞台が目白押しだ。歌舞伎座の「壽 初春大歌舞伎」では新年らしい華やかな演目が並ぶ。『ISSA in Paris』は小林一茶を題材にミュージカル界を代表する作曲家が贈る新作ミュージカルの世界初演だ。

村上春樹の長編小説の初の舞台化であり、フランスの振付家フィリップ・ドゥクフレが演出・振付を手がける『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』も、ワールドツアーを控えての世界初演となる。

「Zenith of Ballet ―至高の舞―」は、パリ・オペラ座、英国ロイヤル・バレエ団、マリインスキー・バレエなど世界の檜舞台で活躍するダンサーたちの華麗なる競演だ。

アイルランド出身の劇作家でノーベル文学賞も受賞しているサミュエル・ベケットの傑作戯曲『ゴドーを待ちながら』と、本作を上演中のバックステージで出番を待つ代役の姿を描いたアメリカの劇作家デイブ・ハンソンの『ゴドーを待ちながらを待ちながら』の一挙上演も見逃せない。

どれを観るか、全て観るか。楽しく迷いたい。

壽 初春大歌舞伎 

壽 初春大歌舞伎
『女殺油地獄』河内屋与兵衛を演じる松本幸四郎(左)と中村隼人|画像提供:松竹

歌舞伎座では、正月らしく華やかな演目が並ぶ。

まず昼の部の最初は、曾我十郎祐成(そがのじゅうろうすけなり)と五郎時致(ごろうときむね)の兄弟による父の敵・工藤祐経(くどうすけつね)の仇討ちを描く正月恒例の「曽我物」などめでたい舞踊三題からなる『當午歳歌舞伎賑』。萬歳に中村梅玉、曽我五郎時致に坂東巳之助。

続く『蜘蛛絲梓弦』は、能や日本舞踊などさまざまな作品になっている源頼光と蜘蛛の精の戦いを題材とするもの。尾上右近が早替りを含む8役で奮闘する。

そして『実盛物語』は、源平の合戦を描いた『源平布引滝(げんぺいぬのびきのたき)』全五段の中で最もよく上演される三段目。源義賢から源氏の白旗を預かった小万だったが、平家方に奪われそうになったため、平家の侍ながら源氏に心を寄せる斎藤実盛に、白旗を持つ腕を切り落とされる。その腕は海を流れ流れて、小万の父であり義賢の奥方・葵御前を匿っている九郎助と小万の子供・太郎吉のもとに辿り着き……。実盛が太郎吉との戦場での再会を約束して別れるラストまで、見どころいっぱいの時代物だ。実盛に中村勘九郎、小万に中村七之助。

夜の部は、『女暫(おんなしばらく)』から。歌舞伎十八番の一つ、『暫』でピンチに陥った人々を救うスーパーヒーロー、鎌倉権五郎が立役によって演じられるのに対し、こちらは女方の演じる巴御前が主役。つまり女版「暫」というわけだ。スケールの大きさはそのままに、しかし時折女性らしさも見えるのが楽しい。巴御前を中村七之助が勤める。

続く『鬼次拍子舞(おにじひょうしまい)』は、尾上松緑と中村萬壽による古風な舞踊。山樵(やまがつ)姿に身をやつした平家の武将・長田太郎の前に、平判官康頼の妻・松の前が白拍子姿で現れ、常盤御前が平清盛を殺すために凶器を仕込んだ笛を奪い返そうとする。

そして最後は近松門左衛門の傑作、『女殺油地獄(おんなごろしあぶらのじごく)』。油屋河内屋の与兵衛は、放蕩に明け暮れ、勘当の身となる。親の印判を勝手に使って借りた金銀二百匁(もんめ)の返済期限が迫る与兵衛は、豊島屋の女房・お吉に借金を頼みに行くが……。与兵衛がお吉を手にかける油まみれの殺戮シーンは大迫力。与兵衛には日替わりで、既に何度も演じている松本幸四郎と、昨年初役で演じて今回が二度目の中村隼人。相手役のお吉もやはり日替わりで、坂東新悟と中村米吉が勤める。

※1月2日~25日/歌舞伎座/昼の部は11時から、夜の部は16時15分から/料金は5,000円から(席によって異なる)

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『ISSA in Paris』

『ISSA in Paris』
画像提供:梅田芸術劇場

江戸時代の小林一茶と現代のYouTuberを繋ぐ奇想天外なミュージカル『ISSA in Paris』が世界初演される。作詞・作曲は、名作『ナイン』『タイタニック』でトニー賞最優秀作詞作曲賞に二度輝いた作曲家モーリー・イェストン、演出はミュージカルを色彩豊かに立ち上げることで知られる藤田俊太郎、出演は海人(ISSA)に日本のミュージカル界を牽引する海宝直人、小林一茶に次代を担う若手ミュージカル俳優の岡宮来夢、ほか。

顔も本名も隠し、一茶の俳句の世界を題材にした英語の歌をYoutube上に「ISSA」のアーティスト名で発表した海人は一躍脚光を浴びるが、母が俳句界の大御所であると判明し、批判を受け、次の曲を書けずにいる。一方、母は若き日の一茶の空白の10年間はパリにいたという仮説を立て、病を押してパリに渡り、命を落とす。その母が遺した小説に描かれたフランス革命前夜のパリでの一茶と、現代のパリへ渡った海人の人生は、やがて交錯し……。

この『ISSA in Paris』の発端は、学生時代に日本の文学や哲学も学んだイエストンが、一茶が娘を天然痘で失った悲しみの中で詠んだ「露の世は露の世ながらさりながら」という俳句に感銘を受けたこと。それだけに、本作には身の回りのささやかな物事に目を向ける一茶の俳句への愛と敬意が溢れている。一茶の俳句が劇中に多く登場するのは勿論のこと、その句を歌にした〈露の世は〉や俳句について人々が歌う〈俳句〉など、和の旋律や楽器の要素を取り入れたり一音が一拍に呼応していたりと、日本語の俳句の美学を意識させる曲も多い。そして、感動の大団円で歌われる〈一つの言葉〉はイエストンらしい豊かで壮大なメロディーで、分断や憎悪が進むこの世界においてどうあるべきかを伝えてくれる。            

※東京公演は1月10日~30日/日生劇場/昼の部は13時(土曜は12時)から、夜の部は18時(17時)から/休演日は13、19、26日/料金は10,000円から(席、曜日によって異なる)

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『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』

『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』
画像提供:ホリプロ

作家・村上春樹が1989年に発表し、国際的な評価も高い長編小説「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」が、初めて舞台化される。

“ハードボイルド・ワンダーランド”の計算士である“私”はある日、博士の孫であるピンクの女の案内で博士に会い、機密情報保護のため自分の脳を使って情報を暗号化する「シャフリング」を依頼されるが、実はシャフリングの開発者である博士は"私"にある思考回路を埋め込んでおり、このために世界の終りが迫り来る。一方、世界の終り”の”僕”は、門番に影を切り離されて壁に囲まれた街に入り、夢読み”の仕事をしている“が、次第に失っていた記憶を取り戻していく。交互に進む、“私”と“僕”の二つの世界。その先にあるものとは?

演出・振付を担うのは、フランスを代表する世界的アーティストのフィリップ・ドゥクフレ。31歳でアルベールビル冬季オリンピック開・閉会式を演出し、サーカスとダンスと映像を融合させた手法で人々を魅了。日本では自身が主宰するダンスカンパニー「DCA」の公演(日本文化を扱った『IRIS(イリス)』を含む)のほか、佐野洋子原作の『DORA〜100万回生きたねこ』、楳図かずお原作『わたしは真悟』を手がけ、高い評価と人気を誇る。今回は、人間の脳内や内面に迫る物語を、どのように視覚化するのか、期待が高まる。

に藤原竜也、僕”に駒木根葵汰/島村龍乃介(Wキャスト)、 “ハードボイルド・ワンダーランド”の司書と “世界の終り”の彼女に森田望智、 “世界の終り”の影に宮尾俊太郎、“ハードボイルド・ワンダーランド”のピンクの女に富田望生。日本での初演後は、シンガポール、中国、イギリス、フランスでのツアーも予定されている。

※東京公演は1月10日~2月1日/東京芸術劇場/昼の部は12時30分、13時30分から、夜の部は17時30分、18時30分から/定休日は13日、19日、26日/料金は6,000円から(席によって異なる)

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Zenith of Ballet ―至高の舞― 

エドワード・ワトソン『インポッシブル・ヒューマン』| Photo:Kiyonori Hasegawa | 画像提供:日本舞台芸術振興会
エドワード・ワトソン『インポッシブル・ヒューマン』| Photo:Kiyonori Hasegawa | 画像提供:日本舞台芸術振興会

世界の檜舞台で活躍してきた至高=Zenithのダンサーたちが集結するガラ公演、その名も「Zenith of Ballet」が開催される。ガラとは、バレエの名場面や魅力的な小品をダンサーたちが踊り競うものだ。 

出演は、ベテランから中堅、若手まで多彩な顔ぶれ。長く巨匠振付家モーリス・ベジャールのバレエの体現者でありベジャール逝去後は2024年までベジャール・バレエ団の芸術監督だったジル・ロマンや、陰影深くドラマティックな表現で他の追随を許さない元英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルのエドワード・ワトソン、マリインスキー・バレエを代表するプリマとなって久しいディアナ・ヴィシニョーワ、英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルの中でも高いテクニックと華やかな存在感を誇るマリアネラ・ヌニェスは、ベテランならではの大きな存在感を発揮してくれるだろう。

また、パリ・オペラ座エトワールのユーゴ・マルシャンや英国ロイヤル・バレエ団プリンシパルの高田茜、ウィリアム・ブレイスウェルなどは、それぞれバレエ団の中でも中軸を担い、踊りに磨きをかけて充実の時を迎えている。そしてマリインスキー・バレエで頭角を表している永久メイやチョン・ミンチョルは、上り調子の若手ならではの勢いと輝きを見せてくれるに違いない。

上演演目には、ヴィシニョーワとロマンの『椅子』、ヌニェスとマルシャンの『ジゼル』第2幕のパ・ド・ドゥ、永久とチョンの『ロミオとジュリエット』第1幕のパ・ド・ドゥ、高田とワトソンの『Borderlands』など、今から楽しみな作品が予定されている。

※1月30日19時から、31日18時30分から、2月1日14時から/Bunkamura オーチャードホール/料金は7,000円から(席により異なる)

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『ゴドーを待ちながら』 『ゴドーを待ちながらを待ちながら』

『ゴドーを待ちながら』 『ゴドーを待ちながらを待ちながら』
画像提供:アイオーン

アイルランド出身の劇作家でノーベル文学賞も受賞しているサミュエル・ベケットの傑作戯曲『ゴドーを待ちながら』。二人の浮浪者ウラジミールとエストラゴンが、会ったこともないゴドーをただただ待ち続け、ゴドーが誰であり何故待つのかも明かされぬまま、これといった出来事も起きずに終わるこの作品は、不条理劇の傑作であり、20世紀の戯曲の金字塔として世界中で上演されている。

1953年に発表されたこの『ゴドーを待ちながら』 と、本作を踏まえてアメリカの劇作家デイブ・ハンソンが2013年に発表した『ゴドーを待ちながらを待ちながら』が、一挙上演される。

『ゴドーを待ちながらを待ちながら』の主人公は、ある劇場で公演が行われている『ゴドーを待ちながら』のアンダースタディ(代役)のエスターとヴァル。上演中の楽屋で、いつ来るともわからない(来ないかもしれない)出番を待つ二人の言動も存在も、『ゴドーを待ちながら』のウラジミールとエストラゴンそっくりだ。二人のとんちんかんな会話や滑稽な姿は可笑しく、また、観ている私たちの分身に思えてどこか愛おしくも物悲しくも感じられるかもしれない。

出演は、『ゴドーを待ちながら』のエストラゴンに小倉久寛、ウラジミールに横堀悦夫、『ゴドーを待ちながらを待ちながら』のエスターに加藤虎ノ介、ヴァルに津村知与支、ほか。演出を手がける文学座所属の西本由香が目指すという「ちゃんと笑えるゴドー、可笑しみを実現できるゴドー」を、楽しみにしたい。

※東京公演は、1月30日~2月15日/赤坂RED/THEATER/昼の部は13時から(1月30日は18時30分から、31日は18時から)/料金は7,700円(初日割6,600円)

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Contributor

高橋彩子

舞台芸術ライター。現代劇、伝統芸能、バレエ・ダンス、 ミュージカル、オペラなどを中心に取材し、「SPICE」「AERA」「The Japan Times」や、各種公演パンフレットなどに執筆。第10回日本ダンス評論賞第一席。年間観劇数は250本以上。現在、ウェブマガジン「ONTOMO」で聴覚面から舞台を紹介する「耳から“観る”舞台」、エンタメ特化型情報メディア「SPICE」で「もっと文楽!〜文楽技芸員インタビュー〜」を連載中。

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