飯島望未
Photo: Keisuke Tanigawa | 飯島望未
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インタビュー:飯島望未『SWAN -Ballet cross Reading-』

出産を経てフリー1年目、バレエ漫画の金字塔への挑戦

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テキスト:高橋彩子(舞台芸術ライター)

多くのバレエ少女(少年も?)のバイブルだった有吉京子の漫画『SWAN ―白鳥―』(平凡社刊)が、連載開始50周年の今年、初めて舞台化される。ミュージカルなどを手がける小林香が脚本・演出を手掛け、バレエ監修・振付は新国立劇場バレエ団出身の福田圭吾。登場人物1人につきリーディングキャストとバレエキャストの2名が表現し、主だった役のバレエキャストは豪華なトリプル/ダブルキャストが登場する。ヒロインの聖真澄を踊る3人のうち、昨年、所属していたK-BALLET TOKYOを退団し、フリーとなって新たな活躍が期待される飯島望未に聞いた。

真澄よりも小夜子に惹かれた幼少期

―漫画『SWAN』は以前から読んでいましたか?

読んでいました。バレエを習い始めた頃、母が『アラベスク』(山岸凉子)や子供向けの『トウ・シューズ』(水沢めぐみ)などとともに『SWAN』を買ってくれて、その作画や世界観がすごく印象的でしたね。私は主人公の(聖)真澄より、(真澄の先輩でありライバルでもある京極)小夜子派で、小夜子がアキレス腱を切ってしまうエピソードや、天才少女リリアナの登場など、子どもながらにすごくインパクトがあって。真澄の純粋でバレエに真っ直ぐなところも好きで、特別でしたが、その真澄にとって特別な存在である小夜子の、バレエに対して常に冷静で客観的に見ているところにあこがれていました。

―小夜子はバレエに関しては自分にも人にも厳しいんですよね。

そうですね。

でも、ライバルだから意地悪をしてもおかしくないような局面でも、真澄のいいところを分析して伝えてあげる。それは小夜子にとって自分を奮い立たせているようなところがあるのかもしれないけれど、そうすることによって自分も頑張れたのかな、とか。私が踊る日は米沢(唯)さんがなさることが多いのですが、まさにぴったりだと思います。

―小夜子もリリアナもトップにいて、決して人の足を引っ張らないところが素晴らしいですよね。

認め合って、称え合って、というのがいいですよね。現実のバレエ界でも、世界のトップとして踊る人たちと共演すると、すごく褒めてくれたり励ましてくれたりする。世界でそれぞれ闘っているからこそ、お互いを認め合っている、その温かい感じが好きです。

―勝手な想像ですけれども、どのバレエダンサーの中にも、真澄的な部分と小夜子的な部分があるのではないでしょうか?

そう思います。それこそ学生の時は、本当に真澄みたいにがむしゃらにバレエに没入している子が多いですが、プロになってくると、真っ直ぐな気持ちを忘れてはいないものの、仕事として踊ることになります。毎日、リハーサルで自分と向き合わなければならないプロは心身ともにしんどいことが多いけれど、私も自分を客観視し、同じ役を踊るダンサーがいれば分析して、いいところがあったらその人に伝えるようにしています。

いい踊りを見て悔しい気持ちになることもあるけれど、純粋にその踊りに感動することもあるし、自分も学べますから。私は引っ張るキャラではないですが、どんな瞬間でも他の人は見ているので、おこがましいようですが後輩に伝えていけたらいいなと思うし、後輩が私を見て何か受け取ってくれるものがあったらいいですね。

飯島望未
Photo: Keisuke Tanigawa飯島望未

言葉と踊りのケミストリー

―リーディングとバレエを担う2人が同じ役を演じる『SWAN』。こういう舞台も初挑戦ですよね。

最初はどんな風に融合できるのだろう、そんなにケミストリーがうまくいくのかな?と不思議だったのですが、初めて読み合わせをした時、聞いているだけで泣きそうになってしまって。個々のキャラクターのドラマもはっきりしていて感動したので、バレエと一緒にすることによって、より情緒的になり、芸術として成り立つのだな、などとあれこれ想像しましたね。

―リーディングキャストのうち、同じ役をなさる井桁弘恵さんとはお話しされました?

ビジュアル撮影の時に初めてお会いして、小さい頃にバレエを習っていたことなどを聞きました。たぶんバレエの真澄がいる時は常にリーディングの真澄もいるという感じになりそうなので、リンクするところが必要。彼女の声色や雰囲気を踊りでも表現したいですし、井桁さんもちょっぴり踊るので、一緒に作り上げていい化学反応ができればいいなと思います。

―稽古場では読み合わせをし、少し動き始めたところだそうですね。

はい。普通にバレエを踊る場面のほかに、せりふと一緒にマイムやコンテンポラリーに近い踊りを踊るところがあって、せりふと動きをどう合わせられるかというところも作っています。

―初恋の思いや、雪の中での心象風景などですね。K-BALLET TOKYOでもコンテンポラリーを踊る機会はおありでしたが、また違う踊りで新鮮ではないですか?

そうですね。せりふ部分は振付・ステージングの大野幸人さんが担当されるのですが、バレエとはかなり違うテイストなので、楽しいです。

―『SWAN』は真澄の成長物語です。踊っていて、ご自身の子ども時代のバレエの記憶が蘇ることはありますか? 例えば、漫画の冒頭、真澄は『白鳥の湖』を見て夢中になって楽屋に行き、いきなり出演者たちの前で踊り出しますよね。

そこまでではないんですけど、私がプロになりたいと思ったのが、小学校低学年ぐらいで森下洋子さんの舞台を見に行った時。オーラというか、絶対的な存在感を子どもながらに感じて衝撃だったというか、彼女みたいになりたい、あそこに行きたいと思って、帰ってすぐに家で踊り狂った記憶がありますね。

さらには2年前、森下洋子さんの『ジゼル』を拝見して改めて思ったのは、役を生きるというところもそうですし、バレエにかける情熱が消えないところがやっぱり素晴らしいということ。観に行ってよかった、と思いました。子どもの頃に感じたのもそういうことだったのかもしれません。私も役を生きること、演技や表現に強い思いがあるので。

―『SWAN』の漫画自体、フィクションである一方、森下洋子、マイヤ・プリセツカヤなど実在の人物も多数登場するので、読むと実際に観に行きたくなるんですよね。今回もプリセツカヤ役は登場し、飯島さんの出演回では、日替わりで倉永美沙さんや中村祥子さんが踊られますね。さらに、真澄の初恋の相手である草壁飛翔役は、飯島さんが出演する日は秋元康臣さん。草壁のライバルの柳沢葵役は、飯島さんの出演するうち3回を関野海斗さん。秋元さんも関野さんもKバレエ出身です。

秋元さんとはバレエ団では重なっていませんが、外部の公演で『ジゼル』などを踊らせていただいたことがあります。関野さんとは重なっていますが一緒に組むのは今回が初めてですね。普段は交わらない方たちがたくさん出演されているので、本当に楽しみです。いろいろなカンパニーの方と同じ作品を踊る機会も私はなかなかなかったので、皆さんの踊りを見ているだけで刺激的で幸せです。

飯島望未
Photo: Keisuke Tanigawa飯島望未

フリーランスとして新たなステージへ

―昨年、プリンシパルとして踊っていた K-BALLET TOKYOを退団。今年がフリーランス1年目ですね。

新たな生活には慣れましたか? まだ怒涛の日々です。特に夏はどのダンサーも繁忙期なので、さまざまな公演に呼んでいただいて、本当にうれしいし光栄なんですが、本番をこなしながら『SWAN』の稽古をしているので少し大変でもあります。ちょっと勢いがあり過ぎたかな?という感じでしょうか(笑)。

―出産という大きな経験をされ、身体が変わった部分もあるでしょうし、バレエに対する向き合い方にも少し変化があったのではないでしょうか?

妊娠中は15キロぐらい太って、産んでからも全然落ちなかったので、最初は自分の身体ではないような感覚でした。妊娠7カ月くらいで小さな舞台に立ったのを最後に、ほぼ1年踊っていませんでしたし、レッスンもしなかったので、身体を作り直すのも感覚を戻すのもひと苦労。メンタル的にも上下していて、こんな状態では踊れない、バレエを辞めようかと思った時もありました。今も感覚は完全に戻ったというわけではないのですけれども。

―その代わりに、別の何かを得たということはありますか?

フィジカル的にはないかもしれませんが、気持ち的にはあります。私は完璧主義ではないけど、自分がしたいって思ったことがうまくいかないと焦ったり不安になったりするタイプなので、以前は本番前も細かく気持ちの準備をしていたんです。今もそういうところはあるけれど、いつでもどこでも踊れるようにしておかないとダメだなと思って。子どもは予測不可能で、いつ熱が出るか分からない。だからこそ、順応力、対応力が必要になりますから。

そして、考えてみたらバレエの本番もやっぱり何が起こるか分からないし、準備したところで思うようにいかないこともある。もう少しフラットに、いつでもなんでもできる心構えをしようと考え、ちょっとずつできるようになり、バレエがより楽しめるようになってきました。

―真澄がどんどんチャレンジしていくのと同じで、飯島さんもママ1年生として新たなチャレンジをなさっているわけですよね。

そうですね。私は怠け者なので、自分に鞭打たないと頑張れないタイプなんです。ヒューストン・バレエのソリストだった時は、無理をしなくてもそのまま主役やソロをいただける環境が、恵まれていてありがたかったのですが挑戦しなくなるのが嫌で、コンテンポラリーを踊りたいという気持ちもあって、一旦辞めてチューリッヒ・バレエの方に行きました。そこで挫折して、またヒューストンに戻ってプリンシパルになり、コロナで日本に帰ってきたんです。そういうふうに、やりたいと思ったこと、挑戦したいと思ったことは結構、躊躇なくやってしまって、後から「あれ?」みたいな(笑)。

―そうなんですね。そのお話を聞くと、そこは小夜子より真澄かなという感じですね。

行動したからこそチャンスをいただけるということはありますよね。今も子どもができてフリーになると決断して、『SWAN』のような素敵なオファーをもいただけたわけですし、本当に幅が広がったと感じています。

Contributor

舞台芸術ライター。現代劇、伝統芸能、バレエ・ダンス、 ミュージカル、オペラなどを中心に取材し、「SPICE」「AERA」「The Japan Times」や、各種公演パンフレットなどに執筆。第10回日本ダンス評論賞第一席。年間観劇数は250本以上。

現在、ウェブマガジン「ONTOMO」で聴覚面から舞台を紹介する「耳から“観る”舞台」、エンタメ特化型情報メディア「SPICE」で「もっと文楽!〜文楽技芸員インタビュー〜」を連載中。

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