インタビュー:ライ(Rhye)

官能のグルーヴはベッドルームからステージへ

セカンドアルバム『Blood』を2018年2月にリリースしたライ(Rhye)が、2017年の『フジロック』以来3度目となる来日公演を5月18日(金)にZEPP ダイバーシティ東京で行う。ファーストアルバム『Woman』の室内的な印象を覆してくれる彼らの現在のライブは、ジャムバンドのお株を奪うかのごとくグルーヴに溢れ、観ればたちまち「シャーデーのアップデート版」という語り草も忘れてしまうことだろう。

シャーデー云々を抜きにしても、ライの中心人物であるマイケル・ミロシュ(Michael Milosh)の才能は、なかなか正面からの評価を得る機会が少なかった。2013年に『Open』と『The Fall』を発表し、その後の『Woman』で大きくブレイクしてからというもの、ライの音楽は世界中のクラブやカフェ、そしてベッドルームでプレイされてきたにも関わらず、俊英プロデューサー ロビン・ハンニバルとのデュオであると誤解されていたことで、歌手としてのミロシュの存在ばかりに注目が集まり、ライの音楽を司(つかさど)るコンポーザーとしての彼について語られることは稀(まれ)だった。

ツアーでの経験が大いにいかされているという『Blood』は、真空パックのような質感だった『Woman』とは様変わりし、清々しさすら感じられるフィジカルなグルーヴで聴き手を揺さぶってくる。『Blood』に見られる進化は、ミロシュがコンポーザーとしてもバンドマスターとしても優れた人物であることを伝えるに十分だ。今回は、メールインタビューという形で、ミロシュ本人に質問を投げかけた。

『ホワイト・アルバム』は、100万回でも聴ける

―あなたが音楽に目覚めたのはいつですか。

マイケル・ミロシュ:これまでの人生、ずっと楽器に触れてきたんだ。3歳のときにチェロをはじめて、11歳からはオーケストラで演奏をしていた。僕はいつも音楽の一部みたいなものだった。でも、音楽を本格的に作り始めたのは26歳のとき。それがちゃんとした機器でレコーディングを始めた時期だよ。それまでは、ただ楽器を弾いて、それから演技をしたり、写真を撮ったり、いろんなことを自分のペースでやっているだけだった。だから、いつから音楽を始めたかといえば、本当に幼いとき。音楽と一緒に育ったし、音楽がない自分というのを、よく知らないとさえ言えるかな。自分が何者かということを考えるとき、音楽が大きな部分を占めているよ。そのくらいだから、自分が音楽を「始めた」という記憶はないんだ。

―シンガーとしてのキャリアはいつからになりますか。

27歳だった2004年に、初めてレコード契約を結んだ時が始まりなんじゃないかと思う。僕が誰なのかってことをみんなが最初に認識した時でもあるね。最初は作曲とプロデュースからスタートして、それらの楽曲になにか足りないような気がしたから、あとからヴォーカルを加えることにしたんだ。

―最初の作品からすべてあなたが歌っているのですか。

そうだよ。アルバムのプロデュースも全部自分でやったんだ。それに楽器も全部自分で演奏した。ほかの人たちと一緒に音楽を演奏し始めたのはそれからずっと後になってからのことなんだ。最初は全部、自分ひとりでやっていたんだ。

―これまで最もたくさん聴いたアルバム教えてもらえますか。

これまでの人生すべてで?そうだなあ…、ピンク・フロイドの『ザ・ダークサイド・オブ・ザ・ムーン(狂気)』かな。

―『狂気』の素晴らしいところはなんだと思いますか。

ただ、大好きな作品だよ。すごくクリエイティヴだと思うし、プロダクションも信じられない完成度だ。なにより曲が好きなんだ。ツアー中の飛行機のなかでは、いつもノイズキャンセリングのヘッドフォンで音楽を聴いているんだけど、このレコードを聴くときはただ目を閉じて聴き入っているよ。

―古い音楽と最近の音楽、どちらを聴くことが多いですか?

主に古い音楽だね。1960年代から90年代まで。

―新しい音楽も聴きますか。

ほんの少しね。

―あなたが考える完璧な曲、もしくはアルバムを教えてください。

うーん、これは難しい質問だ。ビートルズの『ホワイト・アルバム』かな。絶対に飽きがこなくて、100万回でも聴ける。いつだってわくわくさせてくれるよ。

―あなたはライ以外にも音楽のプロジェクトを持っていますが、特にMilosh名義の作品は、よりビートに重心が置かれています。エレクトロニックミュージックにはどのような影響を受けましたか。

そうだね、Miloshの音楽はよりエレクトロニックだね。僕はテクノとかハウスが大好きなんだ。たくさんのエレクトロミュージックを聴いている。お気に入りのバンドのひとつは、オウテカ(Autechre)。ボーズ・オブ・カナダ(Boards of Canada)もすごく好きだったし、それからクラーク(Clark)も大好きだね。彼は素晴らしいエレクトロニックアーティストだよ。クラークはミロシュの楽曲のリミックスをしてくれたんだ。それもすごく気に入っている。あと、アルカ(Arca)も好きだよ。

―なるほど。ライの音楽は、豊富な音楽経験と広い音楽性を持つあなたが、理想の音楽を表現するためのプロジェクトのように思えます。

そうとも言える。ライは僕自身のプロジェクトだし、すべてを注ぎ込んでいる感じ。それに自分がすべてを主導するようにしているから、だからまあ、その通りだよね。

―バンドマスターとして、アンサンブルにも指示を出しているのですか。

ほとんどそうだね。だけど、彼らのやりたいようにしてほしいと思うときもあるんだよ。僕は独裁者ではないし。とはいえこれは僕のプロジェクトで、僕には自分がしたいことが見えているわけだからね。

―ライのデビュー作である『Woman』の時とは対照的に、今作『Blood』はよりフィジカルで風通しの良い作品になったと思います。ライブでのパフォーマンスをあらかじめ意識して制作したそうですね。ライブを重要視するのはなぜですか。

ライブをすることは本当に素晴らしくてとても楽しいことだよ。僕は旅をするのも大好きだし、ライブをすると旅してまわることができて、世界を体感することができる。ステージに立つ感覚も好きなんだ、皆からエネルギーを受けることはすごく気持ちがいい。あの感じはスタジオでは味わえないよ。すごく特別なものなんだ。

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アジアのカルチャーはクールだよ

―『Blood』を様々なミュージシャン、プロデューサーと作り上げようと思ったのはなぜですか。

曲によって違う背景があるんだ。例えばトーマス・バートレット(ザ・ナショナルやアントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ、デイヴィッド・バーン、スフィアン・スティーヴンスなどと共演するキーボーディスト)とは、オンラインで話をするようになる数年前には出会っていて、僕はずっと彼となにか一緒にやってみたいと思っていたんだ。彼もそう思っていてくれたみたいで、コラボレーションをすることになったんだ。

(『Blood』収録の『Taste』を共作した)キング・ヘンリーとは『コーチェラ・フェスティバル』で出会った。僕は彼の作品がすごく好きだったから、なにか一緒にやろうという話をしはじめたよ。それでやってみたら、すごくうまくいったんだ。僕たちは2曲作って、そのうち1曲が僕のアルバムに、もう片方が彼のアルバムに収録されている。すごく気に入っているよ。僕は今自分の周囲に居てくれる人たちのことがすごく好きなんだ。とても自然な歩みから実現したんだよ。

―あなたのミュージシャンとしてのアイデンティティは、歌うことと作曲すること、どちらにより比重があると思いますか。

自分にとっては、音楽を作ることだよ。どちらか一方ってことじゃない。僕にとってそれらは等しく繋がっていることだよ。

―ライはあなたとロビン・ハンニバル(クアドロンなどを手掛けるプロデューサー)のデュオであるという噂が広まっていましたが、今作に彼は関わっていませんね。『Woman』制作時にロビンがあなたにもたらしたものはどんなものでしたか。

自由でいながら、互いのアイデアをシェアするというのは、多くの意味でとても素晴らしい経験だった。誰かと一緒に制作をしようと決めたのも初めてだったしね。すべてを自分ひとりでやる必要もなかったから、いくらかゆとりが持てたんだ。それが本当にすごくよかった。

―『Woman』も『Blood』も、アルバムのジャケットに使われている写真はあなたが撮ったものなんですよね。

そうだね。たとえば『Blood』に関するすべてのアートワークは、ガールフレンドと一緒に1年以上をかけて撮影したものなんだ。選ぶにも大変な量の写真を見返さなければいけなかった。でもいくつかのイメージがすごくフィットすることに気がついたんだ。奇妙なことに、これらの写真が音楽にもすんなりとハマった。これがぴったりだと感じたんだ。

―3回目の来日公演がもうすぐです。なにか楽しみにしていることはありますか。

大阪に行くのが初めてなんだ。だから街を見ること自体がすごく楽しみだよ!東京とフジロックにしか行ったことがないから、もっと日本という国を見てみたいんだ。今回は早く着けるようにして、時間に余裕があったら、田舎のほうにも足を伸ばしてみたいな。東京には4回行っていて、大好きだよ。でも、今回はもっと田舎のほうを体験してみたいんだ。

―日本以外にも台湾、韓国、タイもツアーで回るようですが、アジアの人々のパフォーマンスへのリアクションはどうですか?

これまではすごくいいよ。台湾には3回目、タイで演奏するのは2回目で、韓国も3回目だ。アジアでのライブは、毎回いつもすごくいい時間を過ごせるし、北米のオーディエンスとはやはりちょっと違うね。大人しいのに、同時にすごく熱狂してくれてもいるんだ。特別な感じだよ。アジアで公演できることはいつも光栄に思っているよ。

―アジアの音楽で、好きなアーティストや作曲家はいますか?

コーネリアス。彼はすごくいいと思う。本当に素晴らしいよ。それに昔はK-Popも聴いていたよ。すごく楽しいよね。それからタイのサイケデリック・バンドも。名前を忘れちゃったんだけど、彼らはすごくかっこよかった。アジアのカルチャーはクールだよ。好きだなあ。

―最後に、あなたの創作にインスピレーションを与えるものはなんですか。

人生。僕の人生に起こるあらゆることだよ。

―ライブを楽しみにしています!

どうもありがとう!僕も日本に行くのをとても楽しみにしているよ。

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