1. パボ
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  2. Wine おぅ.ばん
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  3. The Four-Eyed
    The Four-Eyed
  4. ピッツェリア ルメン
    ピッツェリア ルメン
  5. 酒席 しょう田
    酒席 しょう田

真・歌舞伎町ガイド

元No.1ホストのカリスマ経営者、手塚マキが導く大歓楽街の名店

テキスト:
Kunihiro Miki
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浄化作戦を経てコマ劇場が閉館した今もなお、歌舞伎町は人々の生々しいエネルギーで駆動する魅惑の街だ。定番スポットを回る観光客向けのツアーガイドはいるが、この大歓楽街の真の顔を知る案内人は稀だろう。

本記事を監修してくれた手塚マキは、歌舞伎町のホストクラブやバー、美容室などを十数軒を経営するSmappa! Group の会長であり、歌舞伎町商店街振興組合の常任理事を務める人物。街の顔である彼がセレクトしてくれた店は、「客引き・ぼったくり」の危険なイメージとは正反対の、温かく人懐こい雰囲気の「台風の目」のような店だった。驚くほどおいしくて安いビストロや、ファッショニスタが集うショップ、「夜の赤ひげ先生」の薬局など、この街の良心ともいえる一面を垣間見ることができるだろう。

なお、当初は10軒の掲載を予定していたが、うち1軒のマッサージ店が取材中に営業停止になったため9選という並びになったことも、歌舞伎町らしいエピソードとして記しておきたい。

  • ショッピング
  • 東新宿

ラブホテルのエントランス脇の通路を抜けると現れるセレクトショップ。国内外のインディペンデントなブランドのアイテムやヨーロッパで買い付けた古着を取り扱う。オーナーは、ファッション誌のフォトグラファーとして活躍してきた藤田佳祐。ディレクター/バイヤーは渋川舞子が務める。

手塚マキのコメント:
今の歌舞伎町への貢献度が高い店です。感度の高い若者のたまり場になっていて、今まで歌舞伎町になじみの無かった人たちが来るきっかけになっている。僕も藤田くんも、歌舞伎町の面白さについての感じ方が同じで。ここをきっかけに他の店にも親しんでもらえたらいいなと思う。

うちのスタッフたちもかなり通っていますし、藤田くんも彼らがかっこよくなるようにいろいろアドバイスしてくれている。それぞれのホストのスタイリストであって、お兄ちゃん的存在でもある。麦の音の制服もここに作ってもらっています。これまでの歌舞伎町にはない新しくて大事なピースなので、いろいろ一緒にやっていきたいです

ゴールデン街にある、予約必須のフレンチビストロ。12席ほどのコンパクトな店内で、「お箸で食べられるビストロ料理」を提供する。店内の黒板にはその日のおすすめが書かれており、ワインと楽しみたい一品料理からがっつりとした肉料理まで、いずれも手の込んだメニューが並ぶ。L字カウンターに座りながら、手際よく料理ができていく様子を眺めるのも楽しい。

「秘密の名店。本当はあまり紹介したくない。ますます予約が取りにくくなる。でもご飯屋さんなのにゴールデン街の距離感も感じられる、ザ・歌舞伎町な店としては10選から外すことはできない。とにかく安くて、おいしい。相場の半額くらいの感覚で食べられる。ワインをボトルで頼んでがぶ飲みしながら旬の料理をたらふく食べてください。ここのメンチカツは絶品。シェフはキリストみたいなイケメンです。酔わせたら最高なので、ガンガンテキーラを飲ませてください。予約したほうが良いと思いますが遅い時間なら入れたりするかも。……無理かな」

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風林会館の1階で1967年から営業している喫茶店パリジェンヌ。言わずと知れた、歌舞伎町の人間交差点だ。

「リトル歌舞伎町酒池肉林。ここは、ホストやキャバ嬢の面接をしていたり、同伴している人たちとか、やくざの方がいたり、借用書を書かされていたり(歌舞伎町の人はそういう交渉は密室でやってはいけないことを知っている)とか、歌舞伎町の縮図ですね。だけど、全然怖くないです。ネットワークビジネスの勧誘を眺めているのとかも面白いですよ。ここの「コスモポリタンドリア」はうまいです。ランチメニューはお得で、歌舞伎町で昼間働いている方々が集まります。その景色も意外かも。会社も結構あるんです。ブルーベリーのシェイクで僕は体調を整えます」

歌舞伎町のど真ん中にある区役所。公共施設とはいえ、ここにもやはり歌舞伎町らしい魅力がある。

「ノスタルジック! 探検すると面白い。皆さま一生懸命働いている。食堂が安くて、季節ごとのメニューとかもあったりして学校の食堂を思い出す懐かしさ。大人数でも入れますし便利です。あと、たまに1階ロビーで展示をやっているのですが、過去に観たものでは中学生が人権をテーマにした作文の展示が、外国人など多様な人がたくさん住んでいる新宿区ならではの内容で、移民や差別、ジェンダーなどをテーマにした純粋な文章に涙しました。図書館も一応あって新聞とかも読めます。自販機も安いです。

あと、玄関前にある「平和の灯」は、広島市平和記念公園内にある「平和の灯」と長崎市平和公園内にある「誓いの火」をひとつのガス灯に合わせたものらしいです」

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深夜営業をしている調剤薬局。「夜の女神」を表すニュクスの名の通り、歌舞伎町のオアシスとしてさまざまな事情を抱えた人々がここを頼りに夜通し出入りしている。

「夜の赤ひげ先生! 僕は飲みに行く前には悪酔いしないための薬とか、飲みの合間にはテンション上げるために滋養強壮剤みたいなものを飲んだりとか、要するに合法ドーピングをするために使っています。ホテルに行く前のカップルが来ていたり、悩める水商売の男女の相談窓口。滋養強壮剤はボトルキープができるんですけど、うちのスタッフの名前が書かれたボトルをいくつか見つけて、心配になりました」

ブルゴーニュのワインを中心に扱うワインバー。メニューやワインリストはなく、店主が日替わりでおすすめするワインや料理を提供している。歌舞伎町の喧騒(けんそう)が嘘のような、落ち着いた雰囲気の空間で、一期一会のマリアージュを楽しむことができる。

「歌舞伎町で唯一のワイン専門店。ワイン以外ばかり飲んだら怒られます。ワインを飲む店だよ!と。ここのマスターが僕のワインの師匠です。初めて行った時は、食材のリストだけ渡されて、どういう料理を作ってほしいのか、それにどんなワインを合わせたいか決めろと言われて、泣きそうになりました。今はそのシステムではないですが、メニューはないです。真摯にワインと向き合う姿勢がある人にはいろいろと教えてくます。

面倒と思う人もいるかもしれないけれど、ワインという不思議なものには、それだけのことをする価値はあるし、必ず期待に応えてくれます。マスターは味覚について探求している人なんです。例えば、1〜2万円くらいのワインを2時間かけて、その変化を感じながらじっくりと飲む楽しさを知ることができるんです。」

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街に不思議と溶け込んでいる、歌舞伎町公園にある弁財天。年に一度、5月に開帳される。変圧器などに描かれている龍虎の絵画は、2018年1月に開催された「歌舞伎町アートプロジェクト」の一環として、画家の東學(あずまがく)が描いたもの。

「本尊は1913年に上野から持ってきたもので、その後周辺は空襲で焼け野原になっちゃうんですが、この本尊はどこかのおばあちゃんが保護していたおかげで焼けずに残ったんだそうです。

この弁天様のある公園の下にあるのが、11チャンネルっていう老舗のファッションヘルス。ヘルスの上に弁天様がいるというね。しかも面白いのが、11チャンネルも弁天様も、どちらも土地は歌舞伎町振興組合の持ち物なのです。お祭りの時の様子も最高です。弁天様に向かって神主と一緒に祈願するのですが、それはイコール11チャンネルに向かって祈っているのです。ありがとうイレチャン」

予約必須の人気イタリアン。天然酵母を使った生地を窯焼きにするナポリピッツァは、もちもちとしていながら軽い食感の生地と素材にこだわった具材の一体感がたまらない。「ミシュラン東京2014 ビブグルマン」も受賞している。手塚のお気に入りは、生ハムとマスカルポーネ、グリーンペッパーを乗せた「ベッラドンナ」(美しい女)。

「歌舞伎町の贅沢!! 自分へのご褒美に使います。上品な料理とちょっと気張ってワインを飲んだりすると歌舞伎町感はなくなります。とにかくピザがうまいです。前菜から肉食べて、ピザ食べてパスタ食べて……といつも食べ過ぎてしまいます。夜遅くまでやっている(26時閉店、L.O.25時)のもうれしい。不良のシェフがちょっと笑顔で挨拶してくれると幸せを感じます」

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歌舞伎町1丁目、新宿LOFTの裏の路地にある居酒屋。新宿で長年クラブをやっていたママが2006年にオープンした。歌舞伎町で飲み歩く人たちや元ボクサーだったママの息子の知人たち、はたまた日本食が食べたい外国人観光客など、客層は多彩だ。ブリカマ焼きや刺し身盛り、栃尾の油揚げなどが定番だが、「マッキーはいつも、豚しゃぶとワインだね」とのこと。

「ママと、あとママのクラブでナンバーワンホステスだったちゃこちゃんの二人でやっているお店。二人とも美人です。当時のクラブのお客さんだったおじいちゃんたちも多く来ています。豚しゃぶが本当においしくて。全然アクがでないんですけど、肉の仕入れ先とかは教えてくれないんですよ。あと、自家製梅酒もおすすめです。先日酔っぱらってツケにしてしまって、そのことをすっかり忘れて次に行った時に、なかなか言い出せないちゃこちゃんがかわいらしかったです。」

手塚マキ プロフィール

手塚マキ プロフィール

歌舞伎町でホストクラブ、バー、飲食店、美容室など10数軒を構えるSmappa! Groupの会長。1977年、埼玉県生まれ。歌舞伎町商店街振興組合常任理事。JSA認定ソムリエ。1997年から歌舞伎町で働き始め、ナンバーワンホストを経て、独立。ホストのボランティア団体「夜鳥の界」を仲間と立ち上げ、深夜の街頭清掃活動をおこなう一方、NPO法人グリーンバードでも理事を務める。2017年には歌舞伎町初の書店「歌舞伎町ブックセンター」をオープンし、話題に。2018年12月には接客業で培った「おもてなし」精神を軸に介護事業もスタート。近著に、『裏・読書』(ディスカヴァー)がある。
Twitter:@
smappatekka

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