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Image: Time Out / Shutterstock

台頭する飛行機に代わる交通手段、地球に優しい「フライトフリー」の旅

2023トラベルトレンド:なぜ鉄道やフェリーに注目すべきなのか

Ed Cunningham
テキスト:
Ed Cunningham
翻訳:
Time Out Tokyo Editors
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我々が飛行機を利用するようになる前は、陸路での旅行が一般的だった。そして今、数十年ぶりに飛行機を使わない「フライトフリー」の旅が見直され、かつてないほど華やかになっている。格安の高速列車や新しいフェリー航路、電気自動車を楽しむロードトリップなど、2023年は空の旅の代替となる新たな旅のスタイルが大きく注目を集めそうだ。

では、なぜ陸路や水路の旅が「復活」したのだろうか。それは、地球を守るためだ。鉄道やフェリーは、再生可能エネルギーであろうと化石燃料であろうと、乗客1人当たりの二酸化炭素排出量は飛行機よりはるかに少ない。さらに、再生可能エネルギーで駆動する電気自動車は、気候変動に配慮したまったく新しいドライブ旅行の世界を切り開いてくれる。

企業や政府、旅行者はどこへでも飛行機で行くことが理想的ではないことを、これまで以上に意識するようになっている。そして現在、いくつかの本格的な代替案が出始めているのだ。

飛行機を使わない旅は環境に優しいだけでなく、多くの場合、費用も安く済む。中距離の移動であれば、自動車(必要であればフェリーも)で移動した方が、格安航空券よりも乗客1人当たりのコストがずっと安くなる傾向にある。電気自動車はガソリン車やディーゼル車に比べてレンタル料が少し高いが、ランニングコストははるかに安い。

そして、鉄道。世界のどこでも常に最も手頃な旅行方法というわけではないかもしれない。ただ、2022年に見られた安価な(あるいは無料の)キャンペーンや施策は、2023年まで継続される見込みだ。

例えば、スペインの鉄道無料化制度は2023年12月まで延長される予定。ドイツは2022年夏の「9ユーロパス」の成功を受け、ほぼ同額の割引制度を新たに開始した。よりローカルなところでは、イタリア北部のフリウリ・ベネチア・ジュリア州が観光客向けに鉄道割引を実施している。公共交通を利用することの利点に政府や自治体が着目することが増え、今年もこのような取り組みが数多く実施されることを期待したい。

そしてまた、こうした交通手段では、飛行機の旅とは違ったロマンも感じられる。空港でのイライラや、窮屈でうるさい飛行機に詰め込まれ見るべきものから遠く離れた場所に着陸するようなことは、もうない。その代わりに満喫できるのがパノラマビューやローカルフード、そして魅力的な「寄り道」だろう。見知らぬ街の真ん中で違う路線へ乗り換えたり、道中で目に入った気になるものを見に行く思いつきのドライブをすることも可能になる。飛行機を使わない旅は、目的地だけでなく、旅そのものを楽しむことができるわけだ。

2023年に飛行機を使わない旅をするもう一つの大きな理由がある。それは、利用できるサービスがますます充実し、便利で手頃になったということ。2023年、飛行機旅行の習慣を払拭(ふっしょく)するような鉄道、フェリー、自動車などの新しい動きのいくつかを紹介する。

鉄道

飛行機に代わる競争力のあるものにするために、各国は鉄道をより良く、すてきに、速くするだけでなく(例:フランスの新型TGV)、より安くすることにも挑戦している。

スペインやドイツは割引制度を導入。スペイン1カ国だけ見ても、マドリードからバルセロナ、バレンシア、セビリア、ムルシアへの手頃な高速列車が新設され、人々は恩恵を受けている。

ここ数年、本格的な「夜行列車ルネッサンス」が起こっており、2023年にはさらに多くのルートが新設される。新たに寝台列車で移動できるようになるのはコペンハーゲン~ハンブルク、アムステルダム~オーストリア・アルプス、オランダ~南フランスなど、書ききれないほどある。今こそ、クラフトワークの出番だ。つまり「ヨーロッパ特急 2.0」の時なのだ。

これまで線路がなかった場所に、まったく新しく鉄道が建設される動きもある。例えば、メキシコ・ユカタン半島の「トレン・マヤ」プロジェクトでは、広大な都市や人気のビーチリゾートが古代マヤ遺跡と結ばれる。パレンケのマヤ遺跡とカンクンのビーチリゾートを結ぶ最初の路線は、2023年末に開通する見込みだという。

そして、列車を体験そのものにする旅もある。既存のたくさんの鉄道も素晴らしい景色と壮大な旅を提供してくれるが、それらを別次元に引き上げてくれるのが、豪華列車による贅沢な旅だろう。オリエント急行「ラ・ドルチェ・ヴィータ」は2023年にイタリアで開業する予定。2025年には「ノスタルジー・イスタンブール・オリエント急行」の開業も控えている。

フェリー

ヨーロッパではすでにあちこちをフェリーで移動できるが、さらに多くのフェリー航路の開設が予定されている。今年はアイルランドとフランスを結ぶ新しい航路(鉄道とのジョイントチケットもあり)が登場。さらに、スコットランドとベルギーを結ぶ新航路ができるともいわれている。また、イギリスとフランスの間では、ゼロエミッションの風力発電フェリーの実験も行われている。

一方、クロアチアではフェリーの環境対策が進んでいる。同国のフェリー会社Jadroplovは、2024年までに電気フェリーを就航させる計画を発表。これにより環境負荷を少なくしながら、アドリア海のビーチスポット間のアイランドホップが可能になる。また、環境への悪影響が少ないだけでなく、より速くなり、所要時間が30分短縮されるという。

船旅の体験に勝るものはない。長距離航路であれば、料金やクラスのオプションも豊富に用意されている。短所は船酔いのリスクがあることかもしれないが、(電気)自動車で移動できるという長所にも注目したい。というわけで……。

自動車

電気自動車は、ドライブ旅行をより環境に優しいものにするだけでなく、その定義を変えつつある。充電のための一時停車が必要なため、知らない場所をゆっくり、のんびりと旅するには理想的な方法といえる。

さらに、節約にもなる。電気自動車の充電はガソリンやディーゼルよりも常に安く、国によっては半額以下になることも珍しくない。さらに、アイスランド、ノルウェー、ウルグアイ、コスタリカのように、ほぼ全てのエネルギーが再生可能エネルギーで賄われている国を訪れるなら、環境への影響の少なさは桁外れとなる。

インフラがすでに整っている国もあるが、電気自動車の未来はこれから。2023年にはかつてないほど、この移動手段が普及することになるだろう。

見落としがちだが、自転車や徒歩という古典的な「スロートラベル」の選択肢も、大きく復活しつつある。

ハイテク時代ゆえ、ナビゲーションサービスの「Komoot」や「Eurobike」のように、徒歩や自転車での旅を容易にするアプリやウェブサービスが大量に登場していることも理由の一つだろう。

ハイキングやサイクリングによる観光をますます積極的に受け入れている国も増えている。ルーマニアの1400キロメートルある新しいVia Transilvanicaトレイル、スイスのジュラ山脈とベルンを通る新しいViaBernaルート、カナダのプリンスエドワード島の400キロメートルを超えるアイランドウォーク、イギリスの15の国立公園を通る約3800キロメートルのハイキングトレイルを見てほしい。美しいと思わないだろうか。

こうして見てきたように、より安く、より環境に優しい、より没入感のある陸路の旅は、本当におすすめだ。2023年は、面倒で不快な飛行機での旅をやめて、自由な旅に出かけよう。 

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