インタビュー:EGO-WRAPPIN'

刺激し合い補い合うことで積み上げた20年
作成者: Kunihiro Miki |
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インタビュー:三木邦洋
撮影:谷川慶典

2016年に結成20周年を迎えたEGO-WRAPPIN'(エゴ・ラッピン)。息切れすることもなく、常にフレッシュなイメージを振りまきながら駆け抜けるには、20年という時間は決して短いものではない。しかし彼らは、少なくとも端から見れば、軽やかにマイペースにそれをやってのけた。玄人好みなサウンドの反面、お茶の間にも親しまれる絶妙な立ち位置も、ある意味理想的だ。今年の夏、同じく20歳となった『フジロック』のホワイトステージで、ファンと一見客が入り混じる満員の会場を沸かせる彼らのパフォーマンスを観ながら、改めて、なぜ彼らだけがこの境地に辿り着けたのか、知りたくなった。本インタビューでは、中納良恵(ボーカル)と森雅樹 (ギター)、刺激し合い補い合う2人の関係を紐解くことができた。

音楽にムードって結構大事や〜みたいな

ー結成20周年を迎えましたが、エゴ・ラッピンの音楽を言葉で表すのはいまだに難しいです。海外で自己紹介するときなど、自分たちの音楽をどう説明していますか。

森:んんー……。むずいなむずいな。 

中納:むずいな。けっこうジャズとかロックとか……悩むな。

ーヨーロッパのフェスティバルに出られたときに、どういう反応がありました?

中納:ブリリアント、みたいな。輝いてるのかな。ジャンルっていうと難しいですね。

ー何かに似ているね、という感想はありましたか。

中納:パリでやったときに、リタ・ミツコっていうバンドを引き合いに出されたな。

森:そうやな。

ーリタ・ミツコ。日本人の名前みたいですね。

森:パリのバンドで。1980年代に活躍してたのかな。めっちゃかっこいいんですよ。それに例えられて、めっちゃうれしかったですね。こんなんに似てるんだ!っていう。すごいスタイリッシュだし、世界観がとにかくある。


ーやっぱり世界観があるというところは伝わるんですね。

森:彼らはジャンルとか越えている感じがある。

中納:ちょっとシャンソン風でもあるもんな。フランスのトラディショナルな感じも含みつつ。

ーなるほど。

森:トラディショナルとアバンギャルドのいいバランス感というか。センスいい感じですね。

ーエゴ・ラッピンの音楽的な変遷についてお聞きしたいのですが、一番最初のアルバム『Blue Speaker』はオルタナティブ感もありバレアリックな感じもありな作風でしたが、その後の作品から、スカとかロックステディのリズムが大きく入ってきくる。バンドのパブリックイメージとしてもそこはいまだに印象深く残っているところだと思うのですが、そのへんのスタイルというのはいまだに作曲のベースになっているのでしょうか。

中納:森くん好きよなぁロックステディとか。初期はもっとロックやったよなあ?『Blue Speaker』の時とかは。

森:当時はオルタナっぽかった。スカとかは、ベースになっているというよりは、通過点だね。 

中納:でも好きやよね。

森:好き、大好き。

ーバンドメンバーの方たちっていうのは、プレイ的にはやっぱりそのへんが得意な方が揃っているんですか。

中納:いや、逆ですね。

森:そうですね。ロックステディの雰囲気は、僕のカラーが強いのかもしれない。僕が、こんな感じのものをやりたいんだ、みたいな。で、対応してもらう、そんな感じですね。だから、定義としてのそういうスカやロックステディというのももちろん演奏スタイルのマナーとしてあるけど、それ以外の部分なのかな。ムードみたいなもの。そこに魅力を感じていたりするわけですよね、僕は。ただワンドロップでレゲエだ、っていうのも多分あるけど、その裏にひそむ人の息づかいだったりとか、佇まいでもいいし、雰囲気に惹かれた。

ーなるほど。

森:スカとかロックステディって、やっぱ少し男性目線が強い、勇ましい感じやし、ちょっと甘いというか色っぽいところもあるし。そこに惹かれましたね、ムード。音楽にムードって結構大事や〜みたいな。ムード好きやわ〜みたいな。それまではオルタナっぽい歪んだギターを弾いてましたけど、彼らは粗い音ではなくてすごく温かい音っていうか。美しい音楽やなと思って。

中納:スタイリッシュよな!

Photo:Keisuke Tanigawa

二極化していることが怖いと思う

ー2004年のアルバム『merry merry』からはそうしたオーガニックなサウンドからもまた路線が変わっていくわけですけれど、改めて、エゴ・ラッピンの特異なところって、本物志向の先というか、特定のリズムやハーモニーを徹底的に突き詰めるスタイルではないけれど、でも常に色々な世界中の音楽を取り入れいて、というバランスが繊細で。

森:多分、よっちゃんとやってるから、限界がないように思えてくるのかな。例えば、男の気の合う仲間と集まってスカやろうぜ〜みたいな、そういうコンセプトでやれることも楽しいと思うし、僕はそういうバンドも好きだし。でも、よっちゃんとやってるとそういうわけにはいかないんですよ。可能性に目を向けざるを得ないというか。まあ他力本願なんですけど(笑)。

ーでもそれが多分、20年間でバンドが大きく、広がり続けた要因なのかもしれませんね。普通だったら軸がぶれてしまってもおかしくないことをやってるのに、まったくぶれないのはなぜなのか、という。そのバランス感覚はどこから来るものなのでしょう。

中納:でもまぁ自由にとらえてるよな。

森:そう、なんか結構大きく、音楽をおっきくみてますね。多分2人でやる時は、もうちょっと大きい視野で見てやりたいなって。

中納:やっぱり、お客さんに対して開けた考えを持っているのは森くんだと思うし。

ーそうなんですか。それは、楽しませてなんぼみたいな?

中納:というか、バランスとかそういう客観視する視点を持っているのは森くんだと思う。私は割と自分ができる範囲を探すんですけど、それが良いとか悪いとかっていうのはちょっとわからないんですよね。そういうところに光を、よっちゃんこっちちゃう〜?みたいな。そういうのはありますね。

ーじゃあ森さんは音楽的な冒険を試みるのと同時に、ポップな感覚というか。

中納:はい、ポップだと思います。基本的に。

森:そのいいバランスでいきたいっていうのはあります。自分の分かる感じにならんと納得できひんかな。そうなったらやっぱりポップになっていくんかな。 

ーなるほど。新しいアーティストの情報とかは、どう仕入れてるんですか。

森:若い子に聞いたり……。

中納:ははは(笑)。

森:The Internetとか教えてもらった。

ーThe Internetは『フジロック』ではご覧になりました?

中納:フジではみられへんかった。

森:きてるな〜こいつらきてるな〜って!あと、ハイエタス・カイヨーテとか。きとるね〜、きとるきとるって。

ー中納さんは、データで音楽を買われたりしますか。

中納:データでは買わない。もっぱらCD。パソコンで音楽聴かないし。

ー聴かないようにしている?

中納:それもあるかもわからないですね。でも家であんまり聴かへんから。車で聴くことが多い。やっぱりパソコンってロー(低音)がもう全然ないから。

森:そうそう、パソコンで聴かれへんもん、音楽。だって聴こえている音と聴こえていない音ありますやん絶対。それはちょっともったいないかなって思っちゃうんですよね。

ー作品をアナログレコードでもリリースするのはなぜですか。

森:やっぱり僕らの音楽ってやっぱりアナログで聴いてもらう方がいいと思いますけどね。単純に。ジャケットもかわいいし。

中納:せやな、ブックレットとか。レコードが削れたりとか針が飛ぶとか。愛着がわきますよね。やっぱり体動かした方がいいんですよね。起き上がってレコードを置く、とか、プレイボタン押す、裏返す、とか。

そういうことっていうのは、今の感じ。昔はそんなん思わんかったけど今改めて大事やなって思いますよね。やっぱデータの世の中になっている中で、余計に。聴き方なんて自由でいいと思うんですけど、提案という意味も込めている部分はあるのかな。

ーなるほど。

森:かっこいいし。レコードって。

ー話題が変わりますが、20年前と今とでお二人を取り囲む環境はかなり変化したと思うのですが、今、活動する上でなにか何かフラストレーションが溜まることってありますか。

中納:あまりの早さについていけない。

一同:(笑)

中納:光の早さ!(笑)肉体がついていかないっていう。普段の生活で。 

ー休日はどんなことをされてるんですか。

森:めっちゃ平凡すよ。言えないっすよ平凡すぎて。家でCD聴いたり。

ー『ポケモンGo』はやらない?

中納・森:やらないですね。 

中納:あれ、私ほんまに怖いと思うんですけどね。

ーあの光景がですか?

中納:はい。

ーですよね。

中納:でもそういう反応の人と、いやまったく(怖いと思わない)!という人の差があまりにも激しすぎて、なんかそれすらもどういうことなのかなって考えるし。あと、黒と白の間っていうのがどんどん排除されているような気がして。なんかそれも怖い。

ーグレーがない。

中納:そう、グレーがない。グレーはグレーでいいじゃないですか。なんかどんどんこう、二極化していることも怖いと思うし……。非常に。アナログかデジタルかっていうのもね、どっちかになっていることとか。

ー実際はそんな人いないのにってことですよね。

中納:そうそうそう。

ーエゴ・ラッピンの音楽っていうのは、ある意味、非常にグレーの音楽というか。

中納:そうですか?そういってもらえるとなんか。 

森:でもまあそうですね。いろんなターニングポイントがあって、オルタナ、ロックステディ、アメリカのトラディショナルな音楽をやったりジャズをやったりフォークやったり。そこからが始まりやっていう感じもあるんですよね。

ーなるほど。20周年記念の大きなイベントとして、11月5日(土)の台湾でのワンマンライブ、そして11月27日(日)の日本武道館公演があり、いずれもソールドアウトとのことですが、台湾のほうは1000人クラスの会場が売り切れというのはすごいですね。

中納:台湾では今、日本のシティポップみたいなのが、めっちゃ流行ってるみたいね。

森:EPOとか。

中納:EPOとか。大瀧詠一さんとか。外国の人からみたら、新鮮に聴こえるのかもわからんね。

森:大上留利子さんなんかも海外での人気はすごいですもんね。レコード買いにくるとか。

ー海外の一部のクラブシーンでも和モノが流行っているらしいですね。

森:うん。で、ジャズとか美空ひばりとかあのへんのサウンドも好きなんですよやっぱり。笠置シヅ子とか。 

ーなるほど。中納さんは今年、NHKのドラマや『フジロック』のG&Gオーケストラで笠置シヅ子の『買い物ブギー』を歌っていらっしゃいましたし、外国人が聴けば、エゴ・ラッピンの歌やサウンドは日本のクラシカルなポップスの雰囲気も纏っているのかもしれませんね。
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絶対ええから、私の倍音を聴け!

ー個人的にエゴ・ラッピンの音楽に変化を感じたのは、直近のアルバム『Steal a person’s heart』の1曲目『水中の光』を聴いたときなのですが、これは中納さんがソロ活動を経たことが大きいのでしょうか。

中納:それよりも、地震が大きかったんじゃないですかね。3.11の。私らは戦争を知らんから、でもあれは戦争くらいの勢いの分裂あったし、悲惨さもあったから強烈でしたよね。あれは忘れたらあかんなっていまだに思うし。私は楽器ではなくて歌を歌って体を使ってるから、そういう見えない世界みたいなものがすごく気になるんですよね。まあそういうのもあって、ちょっと大人になった(笑)。

ー変化を顕著に感じたのが歌詞でした。言葉遊び的な要素が減って、すごくストレートになったというか。大人になったというのは、地震を体験して、シュールなものにリアリティを感じられないような感覚が芽生えたということですか。

中納:でもね、好きは好きなんですよ。結局、シュールで毒づいてるものは好きなんです、好みとして。でもなんか、みんなに言えることですけど、昔には戻られへんから、でも今は昔ではわからんことやし、それを素直に受け止めようっていう思いはありますね。今こう思うからしゃーないっていうこととか。 

あとはそうですね、ちょっと着地させたくない……。昔は着地してたんですけど、それよりもその愛みたいなものとか。

森:愛ですわ。愛が、愛がちょっと出たんですよね。

中納:素直に出せるようになった。(笑)

ー『水中の光』を初めて聴いたときは感動しました。

森:僕も感動しました! 

中納:吹き返しのとき、ちょっと潤目になっとったもんな。(笑)

ー中納さんはカバー曲の仕事も多いですが、それらはどういった意識でやってらっしゃるんですか。


中納:あー、そんなに意識とかは……。私自身が、ひねくれすぎてて困ることがあって(笑)。もっともっと素直になれたら良いんですけど。

森:そうなってくるとカバーってよっちゃんにとって窮屈ちゃうかなって思う時があるんすよね。ある程度もう決まってるラインを崩すにしてもどのくらい自分の癖つけるんかとか、悩むじゃないですか。歌に自由を求めていたら、こう歌ってくれみたいなのとか窮屈ちゃう。よっちゃんがやるんだったら歌えるけど、歌えるからこその悩みってあるんちゃうかなって。

ー小手先でやりたくないけど……という。

森:そうそう。

中納:んー、確かにそうはなりたくないなって思う。

森:でもよっちゃんの歌声を色々な人に開放することで、涙をこぼす人も多分いると思うし、それくらいの声の持ち主やと思うから、開放するのは僕は良いことやと思うんですけどね。

中納:そういうのは利用していったれっていうのはあります。CMの仕事とかも、私の倍音がお茶の間に流れるっていう。そういうところで利用したれ!と。(自分の歌声で)埋め尽くしたいっていうのはありますね。絶対ええから、みたいな。

一同:(笑)

森:絶対ええから!

中納:絶対ええから、私の倍音を聴け!と。 
Photo:Keisuke Tanigawa

美しいものはトゲがある、そんな音楽を

ー20年間で、お互いにこういうところが変わったというところ、または相変わらずだなあっていうことはありますか。

中納:相変わらずだなあばっかりじゃないですか(笑)。
 
ーお二人の生活のペースは近いんですか?
 
森:僕のほうが遅いんじゃないですか?

中納:うん、森くんのほうが遅いですよ。

森:ポイントがあると思うんですけどね。ここは早く行きたいとか。

中納:逆にそれがすごいなって思うんですよ。ここまで変わらん人もおるんやなって。

森:ちょっとくらい変わったでしょうよ。

中納:時代がここまで変わっていたりしているのに、そこまで変わらんか〜って。そこに安心するし。

ーうらやましかったり?

中納:うらやましいとかはないですけど。でも森くんやから。昔っから森くんやから。それってすごいと思うんですよね。よっぽどなんかこう、ちゃんと立ってんと、倒されたり泣かされたりするから。ゆっくりしてはるけどちゃんと立ってはる。ごっつ濁流の中でちゃんと立ってはる一本の木みたいな。逆にあたしの方が翻弄されています。私はまだ揺さぶられ、ぶれまくりちゃいますかね。

ー森さんからはそう見えますか?

森:ん〜でもまあそのへん女の子らしいかなって思うんですけど。きれいなものをみてきれいだなとか。やっぱりここアイスクリーム入れたいな〜とか。もうちょっとチョコレート欲しいなとか。

中納:ふふふ(笑)

森:そうかそうか〜って(笑)。聞いてあげたいな〜って思ったりとか、それちょっと難しいな〜って時もあったりとか。それは良いことやと思うんですけどね。逆に羨ましかったりするところもある。

ーわーっと突っ走れたり?

森:そうそうそう。それってやっぱり女性の特権というか。男がやるとちょっと生意気にみえるかなって。

ー最後にひとつ質問を。10年後の30周年のときには、どんな音楽、またはライブをやっていると思いますか。

森:10年後!まず生きてるかなあというところですけど(笑)。

中納:まあ、体力的にねえ。


森:そういう話ばっかりやないですか、体の話(笑)。体の話になってる!10年続けるためには!みたいな。

中納:でもオールスタンディングばっかりのライブハウスはやめて、もしかしたら席ありのライブが増えてるとかはあるかもわからないですね。

森:もうワールドツアーしてるかもしれないし。

中納:自家用ジェットで(笑)。何かがあって自家用ジェット買えるタイミングが10年の間にあるかもしれん。もう、ライブ始まって30分間寝てるかもしれないし。ブラジルの、アントニオ・カルロス・ジョビンみたいに。あれ!森くん寝てる!みたいな。

一同:(笑)

森:ヨダレ垂らしてね。

中納:ステージの上で寝んねんで!それを待つんやから。客が。

ー究極ですね!

中納:究極や。でも1音でも聞けるならってみんな大金はたいて来るわけでしょ?すごいですよね。

ーそういう、寝てもOKみたいな渋い境地に行くため今後どうしていこうかな、みたいな?

中納:なりたい!あたし。寝ててもOKみたいに。(笑)

ーそのためには何が必要なんでしょうか。

中納:なんなんですかね。もうやるしかない。

森:そやね。自分がかっこいいと思うもん世界に出していくしかないですよね。それを続けていく、それの積み重ねしかないんちゃいます?

ーお二人はとてもいい関係なんですね。本当に。

森:なかなかね。でも、あんまり一般リスナーにはそういうことはどうでもいいことなんちゃうかなと思うんですけどね。夢を、もっと夢がある方がいいかなって。

ーファンに夢を持たせてあげたいと?

森:そうっすね。なんかちょっと夢ある方がいいかなって。

ー続けること自体が夢をもたせることになるし、と。

中納:いままでの話も、続けてきたからこそっていうことがあるじゃないですか。途中でやめてたら、色々やりたかったんやなこの人たち、みたいなところで終わってるかもしれんし。

ーなるほど、わかりました。今日はありがとうございました。

森:美しいものはトゲがある! 

ーえ?

森:初めの質問の答え。美しいものはトゲがある、そんな音楽をやっていきたい。

 
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