インタビュー:DJ Nobu

ヨーロッパの最前線で得たものを国内のシーンへ

作成者: Kunihiro Miki |
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インタビュー:三木邦洋
写真:Yumiya Saiki

今や世界でも指折りのテクノDJのひとりとなったDJ Nobuの夏は、今年も多忙を極めた。日本でのパーティやレイヴの合間を縫うように、数々のヨーロッパのフェスティバルへ、時にはヘッドライナーとして出演している。フランスの『The Peacock Society』やベルギーの『Crossroads』、そしてエレクトロニックミュージックのフェスティバルの最高峰であるスペインの『Sónar Festival』やオランダの『Dekmantel Festival』など、錚々たるイベントが彼をメインアクトとして呼び寄せる。9月には4度目となるアメリカツアーも成功させた。

このインタビューが行われたのは、『Sónar Festival』から凱旋し、彼が8年連続で出演してる長野のフェスティバル『rural』でのプレイを終えた翌日だ。最前線を駆ける彼の言葉から滲(にじ)み出るのは、日本のクラブシーンへの深い愛ゆえの苦悶。そして、グローバルな活躍から得た経験と知見を国内に還元し、新たなシーンのあり方を模索する姿勢だった。

—『rural』は今年、Resident Advisorの「Top 10 July 2018 Festivals」で3位につけ、開催10年目にして初めてチケットがソールドアウトしました。『rural』の優れている点はどこにあると思いますか。

今や、世界からも注目されるフェスティバルになりましたよね。ラインナップに関しても、年々実験を繰り返して、彼らの視点で理想を目指していますね。継続は力なりです。お客さんが増えて、雰囲気も変わってきました。完璧ではないと思いますが年々、洗練されていっていると思います。もちろん、過去には失敗もあったけど、毎年成長が見られるというのは良いことだと思います。

—昔と比べて改善された点は、具体的には何がありますか。

僕が初めてやった時(2011年)は、ゴミ箱も設置されていないし、DJブースのなかの体感温度が40度以上あったり、色々至らない部分があったんだけど(笑)。それは指摘して、翌年からは改善されてました。

—初めて出演した時は良い環境とは言えない現場だったにも関わらず、翌年のオファーも受けたのはなぜですか。

主催者のみなさんの熱意が感じられたからですね。それに、僕にとって出ることに意味のあるフェスだと思っているから。スケジュールの都合でオファーを断ってしまうイベントもあるなかで、『rural』に出演し続けているのは、彼らが僕にちゃんと課題をくれるし僕も成長できるから。様々な一面を見せられるプレイができるからだね。成長のきっかけを与えてくれる、良い関係性を築けているしruralには感謝しています。

—NOBUさんは現在、毎月のように海外で公演を行っていますが、ここ最近で印象的だったパーティーはありますか。 

スイスのバーゼルにあるエリーシア(Elysia)は、めちゃくちゃ音が良かった。びっくりしたね。出音の方向性が日本の良い箱と近い感覚で作りあげている感じでしたね。あとはやっぱり、バシアーニ(Bassiani)※。あそこのエネルギーの凄まじさは、世界的にも稀有ですね。日本だったら200〜300人くらいしか集まらないようなパーティーに簡単に1500人くらいが集まる。朝8時でも熱狂は止まらないんです。バシアーニのレーベルから日本人DJのコンピレーションも出しましたし、良い繋がりの状態なのかなと思います。先日の武装警官が介入した事件※も世界中のDJがメッセージを送ったり多くのDJたちから愛されているなと思います。

※バシアーニ:ジョージア国の首都トビリシにあるクラブ。サッカースタジアムの地下を改装し2014年にオープンした。

※武装警官が介入した事件:2018年5月12日、バシアーニは警察の強制捜査を受け、クラブの創設者2名を含む約60人が逮捕された。摘発の背景となった市内でのドラッグによる死亡事件がバシアーニとは無関係なものであったことから、市内では抗議デモが起こり、ジョージアの内務大臣が謝罪の声明を発表するに至った。

 

日本の音楽メディアには無視されちゃってるけれど

—現在、パーティーやフェスでのプレイは月に何本ほどやっているのですか。

海外も含めて、意識的に6〜8本ほどに留めています。プレイの質を保つためです。

—6月にバルセロナで開催された『Sónar Festival』では、ベン・クロック(Ben Klock)※ とのB2B(バックトゥバック)※ がありましたが、いかがでしたか。

やりきりましたよ。めちゃくちゃ緊張しました。20代の時に初めてベルリンやロンドンのフェスやクラブに遊びに行った時も衝撃でしたが、30代になってから初めて海外でテクノの洗礼を食らったのが、DJとしてマルセル・デットマン(Marcel Dettmann)のベルクハイン※ でのリリースパーティーに参加した時だった。その時にベン・クロックとも出会って、ベルリンで大きな衝撃を受けた。

それが2010年ごろの話で、それから8年が経って、肩を並べられたのは嬉しいし、海外で頑張ってきたことが実を結んだのかなという実感はあります。ヨーロッパではこのB2Bをセンセーショナルに扱ってくれました。日本ではあまり注目されていないようでメディアには無視されちゃってるけれど。

※ベン・クロック:ベルリンのテクノシーンを代表するDJ。ベルクハインのオープン当初からレジデントを務める。
※B2B:2人のDJが交代で曲を掛け合う、DJのプレイスタイル。
※ベルクハイン:旧東ドイツの発電所を改装したベルリンにあるクラブ。

—同じく『Sónar Festival』に出演していた坂本龍一とAlva Notoのパフォーマンスはご覧になりましたか?

観ましたよ。超良かった…。野外の劇場みたいなところでやっていたんだけど、会場の作り方や音もすごく良くて。前日のB2Bを終えて緊張感から解放されてリラックスして観れたから、本当に最高でしたね。

—坂本さんと何か会話はされましたか?

僕は人見知りだから(笑)。特に会話はしてないです。行き帰りの飛行機では、後ろにメルツバウの秋田(昌美)さんが座ってたんだけど、緊張して寝られなかった。

—評価の話に戻りますが、NOBUさんしかり、坂本さんや秋田さんもしかり、ヨーロッパでの評価と日本での評価にギャップが生まれるのはなぜなんでしょうか。

国民の趣向性はもちろんのこと、やっぱり伝える側、メディアの問題はありますよね。いくらDJがアピールしても限界があるから。それを盛り立てて、サポートを担うべき音楽メディアが反応してくれないっていうのはね…。一般的に考えたら僕とベン・クロックとのB2Bが実現したのって、すごく夢があることだと思うんですよ。夢がなかったらスタイルや考え方も彼とは違うし断ってたかもしれません。しかしこれを知って、若いDJたちが勇気を持ってくれたらとも思うし。

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年功序列は必要ないですよ

—NOBUさんがTwitter上で、野外イベントのフロアにペットが連れ込まれていることを指摘したことで、国内の色々なイベントがペットが入れるエリアを限定するルールを設けました。反対に、昨年末はNOBUさんが主催するパーティー『GONG』の出演者のジェンダーバランスについて、サファイア・スロウズさんが指摘をしたこともありました。プレイヤー間で意識を高める動きが、テクノ界隈では出てきているように見えます。

日本は本当に遅れているんですよ。島国だからというのも要因の一つだし、変えていく必要があると思うんだけど、DJでもお客さんでも、変化することを怖がる人、こういった問題を冷笑している人は多い。ジェンダーやフェミニズムのことは、ベルリンにいると当たり前のものとして皮膚で感じるから、勉強するようになった。

社会ってパーティーにそのあり様が反映されると思うし、だから国ごとにパーティーの形がある。そういう話題を嫌がる人、怖がる人は日本に多いけれど、例えば「川崎バス闘争」みたいに、行動によって社会を変えた事実もあるわけで。各自が動かないと何も変わらないですよね。

 

—日本のクラブシーンが変わらなくてはいけない点は、ほかにもありますか。

年功序列だね。僕は34歳くらいまで大きいクラブのメインフロアに立たせてもらえなかった。最近は良くなってきていて、若い子にチャンスが広がってきているけど、まだそういう習慣は残っている。そういうものは必要ないですよ。

ヨーロッパはキャリアの長い短いは関係なく、才能があればいくらでも活躍できる。日本はまだ、若手っていうフィルターを通して彼らを見てしまうところがある。

—小箱クラブが摘発されている事に関しては、なにか思うことはありますか。

それに答えるのはすごく難しい。僕はこれらの摘発の件は何も行動できていないから何か言える立場ではありません。クラブに限らず、社会全体から自由が奪われていると感じる出来事がすごく多い。日々悶々としてる。東京オリンピック・パラリンピックの開催期間中はサマータイムを導入するとか、ネット通販を控えろ、とかね。バカみたいじゃん?最近の日本の現状はディストピアって言葉が浮かんできちゃう。

若い世代のDJたちのおかげでポジティブでいられる

—なるほど。今後の活動について教えていただけますか。

今は(自ら主催する)『GONG』や『Future Terror』をやるためのパワーを溜めているところ。忙しくてなかなかオーガナイザーができない。それとは別にやりたいと思っているのは、少規模のパーティーをやろうと思ってます。お客さんともっと距離が近くなり、純粋に楽しそうだなって。大きいパーティーをやるとどうしても疲弊します。それをずっとやり続けるのってすごく疲れる。理解し合えている人だけで小さいパーティーをやったら、すごく密度の濃い空間ができるんじゃないかなって。もう僕は一歩引いて楽をしたいですね。

—昨年の『Love Tokyo Awards』の授賞式では、「非常に厳しい状態だからこそ、音や人、その空間をいかしたコミュニケーションができる場というものを模索していきたい」と述べられていました。以降、なにかポジティブな変化は起こっているのでしょうか。

若い世代のDJたちは本当に頑張っていると思うし、彼ら自身がすごくポジティブだから、僕もポジティブでいられる。彼らが楽しそうにやっているのは、僕にもすごく良い影響を与えてくれる。彼たちの存在は素晴らしいと思う。彼らのためにも、我々おじさんが地雷撤去をして、地ならしをして(笑)。僕が主催するパーティーも、そういう(若手をフックアップする)機能を果たしてくれたら良いと思ってますよ。

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