デイタイムのミラーボール

摘発を経て業態を変更した青山蜂の現状を、店長 清水朗樹が語る

テキスト:
Kunihiro Miki
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今年1月28日、無許可でナイトクラブを営業したとして風営法違反の疑いで警視庁から摘発を受けた青山蜂。2016年の風営法改正でナイトカルチャー再興などが期待されていた中での摘発は、関係者に衝撃を与えた。

立地などの問題があるために、合法的にクラブ営業を行うための「特定遊興飲食店」への申請ができない同店は、営業形態を変更し3月10日に営業を再開した。現在は深夜イベントを廃し、すべてのイベントを23時30分までに終了させている。深夜は店を閉める代わりに、朝まで渋谷で遊んでいる客を狙った、早朝スタートの「アフターアワーズ」イベントも開催するようになった。

しかし、夜遊びの花形であるクラブが深夜営業をやめて、営業に支障はないのか。現店長の清水朗樹は、現在の同店の営業スタイルについて、ネガティブな面だけではないと語る。

「深夜帯は、終電を気にしないで極限まで楽しもう、という意識がお客さんにもDJにも生まれます。今回の業態変更でそういったことが無くなったのは正直痛いです。しかし、デイタイムになったことで、来てくれるお客さんの幅は広がりました。若い人や女性が増え、イベント自体も若いDJたちのパーティーが多くなりました」

青山蜂店長 清水朗樹

「特に女性は、オールナイトのイベントはハードルが高いと感じる場合が多いようで、デイイベントなら行けるという声はよく耳にします。あと、かつてクラブ遊びをしていた人も、結婚して家庭を持つとクラブカルチャーから遠ざかりがちですが、日中のイベントであれば遊びに行けるので嬉しいと言われますね。朝スタートのイベントも、蜂は朝になってもやってるだろうというイメージが昔からあったおかげで、結構(人は)集まるんですよ。ただ、全体的な集客の増減は、深夜帯にやっていたらもっと人が入ったであろうイベントもあれば、若いお客さんがびっくりするぐらい集まるものもあって、まだなんとも言えませんね」

10年続けば御の字な東京のクラブ業界で、23年間にわたって営業してきた同店には、多くのファンがいる。営業再開のために立ち上げられたクラウドファンディングでは、140万円を超える資金が集まった。11月22日(木)からは、同店の開店23周年を祝うアニバーサリーイベントが4日間にわたって開催され、豪華なDJやバンドが連日出演する。絶望感に襲われたという摘発から、店はどう立ち直ったのか。

「摘発当時、店長がその場にいなかったために、僕が現場での最高責任者だったんです。手錠をかけられた時には、もう終わった、という気持ちでした。以前から受けていた警察からの注意に対して、対策を施していたつもりでしたが、解決とはみなされなかった。同じスタイルを続ける限り、根本的な解決は法律的にできない状況だったんです。長年続けてきた営業スタイルを変えるのは、やはり勇気のいることでした。店を存続させるためにライブハウスっぽくするべきかという案もありました。でも、デイタイムになってもうちはクラブで、それが青山蜂だと思い、そこは変えませんでした」

「今、うちがやっていけているのは、蜂を愛して応援してくれる多くのDJさんやお客さんがあってこそです。若いDJたちのパーティーが増えたという話をしましたが、一方でいままで蜂でやってきてくれたDJさんたちの助けは本当に大きいです。歴史の重みを感じています。新しい店でこの状況だったら、無理だったはずです。この黄ばんだ壁に、色々な時間が染み込んでいるんですね……(笑)。今回のアニバーサリーイベントも、よくこんなに豪華なメンツが集まってくれたなと、ブッキングしながら驚いています」

法規制に関する事象が取り沙汰される一方で、そもそも、クラブ全盛だった1990年〜2000年代と現在では、クラブで遊ぶ人口やカルチャーが担う役割も変化している。数百、数千人規模の大箱クラブは流行の海外アーティストを招へいするなど、時代に合わせたコンテンツを用意できるが、独自のスタイルを貫く青山蜂のような小箱クラブは、時代の変化との間で揺れている。清水が目指す青山蜂のこれからとは。

「普段触れることができない音楽に出会えて、そこに人がいてお酒があって、グルーヴが生まれる、というのがクラブだと思っています。根本的なところでは、カラオケに行くことと同じものを求めているのではないでしょうか。デイタイムになって敷居が下がった側面があるのなら、クラブカルチャーというものをより多くの人に知ってもらえたらと思います。うちは音楽のジャンルもお客さんも、本当に多様。色々な意味で自由な空間、という部分は大切にして、多くの人が持つクラブ=ナンパ・EDMというイメージも、変えていければ良いですね」

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テキスト:三木邦洋
写真:豊嶋希沙

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