lgbt father

父が2人 日本とスウェーデンのLGBT家族

代理母出産で子どもを迎える男性カップルの実情を知る

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Text by カイザー雪

日本人でゲイ男性のみっつん。35歳の彼は、40歳のスウェーデン人のリカと2008年に東京で出会い、3年間の交際を経てスウェーデンで結婚をした。そしてロンドンを生活の拠点にして、2人は子どもを持つことにした。現在その準備に励んでいる。

「親になる自信なんて誰にもないわよ。それはゲイもストレートも同じじゃない?」

「リカと結婚してから、次のステップとして子どもを自然と意識するようになりました。特に彼に姪ができてから、お互いどんどん子どもが欲しくなりました」。そんな気持ちを話すみっつんは、子ども好きでも最初は親になれる自信があまりなかったという。そんなとき、子どもを持つストレートの女性の友人の一言が背中を押してくれた。「親になる自信なんて誰にもないわよ。私だってなかった。誰だって親になるというのは初めての経験なのだから。それはゲイもストレートも同じじゃない?」

その言葉で肩の荷が下り、子どもを持つ方法を少しずつ調べ始めた。同じ境遇にいる仲間と出会うためにもその道のりを綴ったブログを開設し、自身の経験や家族を作りたいLGBTたちに役立つ情報も発信している。彼の周りにLGBT家族は少なかったというが、最近では徐々に増えてきて、今が過渡期だと感じている。著名人の間でも、トム・フォードやリッキー・マーティン、エルトン・ジョン、パトリック・ニール・ハリスをはじめ、数年前よりゲイカップルの子育てが急増している。

不妊治療の一環として、アメリカで代理母を探す

「ゲイ男性が子どもを持ちたい場合、様々な方法がありますが、主に代理母出産と養子縁組があります。ただ後者の場合は、イギリスではセクシュアリティに関係なく条件がとても厳しいので、前者に決めました」。代理母出産とは、妊娠できない人が、代わりの女性に妊娠と出産を依頼することであり、不妊治療の一環として良く使われている。そのため、最近多くのゲイカップルも活用する方法のひとつだ。

代理母を探すのは、金銭や時間の面でも一筋縄ではいかない。イギリスでは、商業的な代理母出産やエージェンシーは法的に認められておらず、双方の権利が保証されないことが多い。そのため、彼らは海外で探すことにした。現在、代理母出産に関して世界で最も法的制度が整っているのは、アメリカ(一部の州)だとされている。「調査した結果、アメリカでの代理母出産は、代理母が十分な補償を受け、そして適切な健康管理とともに適切な同意が行われており、女性が搾取されるということを心配しなくて良かったので、他の国と比べ費用は高額でしたが東海岸のエージェンシーを選びました。この分野においてそのエージェンシーは経験豊富で、書類やビザなどの手続きのサポートもしっかりやってくれて安心です」。

代理母出産の話はせず、まずは相性を確認

みっつんたちが選んだエージェンシーでの代理母探しは、まずは互いの子どもの育て方などに関して、希望や考え方をアンケートに記入する。同じ価値観の代理母をエージェントが見つけると、見合い同様に紹介し、双方が一度スカイプで対面する仕組みになっている。「その時点ではお互いの名前や連絡先は教えられなくて、スカイプのアカウント名のみ知らされるのです。最初は1時間ほど会話をするのですが、具体的な代理母出産については話さないよう指導されます。決められていることなので、そのときは友だちとのような普段の会話をします。代理母とマッチングしてからは、約1年間連絡を取り合う間柄になるので、相性をまず確認するためです」。 

スカイプ後、双方の想いが成立すれば、代理母出産への過程が始まる。弁護士を介して、産んだ後のことについて、交渉期間に入る。みっつんの場合は、代理母は親権放棄を約束し、その後の交流についても合意している。「出産後、年に一度ほど連絡を取り合う遠い親戚のような存在を目指しています。彼女は僕たちにとって、大切な体を貸して子どもを産んでくれる、天使のような存在。感謝しきれないです」。エージェンシーのすすめで、現在はほぼ毎週連絡を取り合っており、一度渡米して会ったこともある。

スウェーデンでは、LGBTの親は学校でもオープンにできる。それが普通

来年予定の出産の後、みっつんとリカは1年の育児休暇の間、スウェーデンで生活することを考えている。同国では、「LGBTの親は学校でも完全にオープンにできます。私の妹や両親も新しい家族を迎えるのをとても楽しみにしています。向こうではそれが普通です」と、リカは話す。

その後は、子どもをどこで教育させたいかをふたりは考えていく。「もちろん、日本も視野に入れています。国内で育てる場合は、学校や周りにカミングアウトしていくつもりです。簡単にはいかないかもしれませんが、受け入れてくれる学校が見つかるまで探します」。リカも日本で暮らした数年間、勤務先でもカミングアウトしていたが、一度も嫌な経験をしたことがなく、彼も子どもを日本で育てるのに前向きだ。みっつんの言うように、「まずは、世界でこういう人がいるよ、ということを知ってもらうのが大切。海外のことだけじゃないと、日本の読者に知ってもらいたいです!」。

Photograph by Cody T. Williams

テキスト/カイザー雪(Yuki Keiser)

スイスのジュネーブ国立大学文学部卒業後、奨学金プログラムで東京大学大学院に2年間留学。その後、10年間東京でヨーロッパのファッションブランドのエリアマネージャーやPRを務め、2013年に渡米。現在は、日本のインポート会社の通訳アドバイザーを務める傍ら、サンフランシスコのIT企業などの顧客に、日本文化のコンサルティングや東京のトラベルキュレーター、日本語と日本のカルチャー、フランス語の教師を務めている。

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