インタビュー:アイ・ウェイウェイ

「自分がそれほど重要な人間だとは思っていません」

2011年に拘留が解かれて以来、芸術家の艾未未(アイ・ウェイウェイ/Ai Weiwei)は中国を離れることを禁じられている。しかしそれをもってしても、彼が世界で最も有名な芸術家であることは変えられない。ロンドンでの作品展を翌日に控え、タイムアウトは当局の監視、彼の成功、メディアへの頻繁な登場について、彼と対話を行った。

※2014年に行ったインタビューです(原文

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彼はこの写真によるシリーズ作品で、天安門広場だけにとどまらず、ホワイトハウスやエッフェル塔を含む世界中のランドマークや権力の存在に中指を突き立てている。

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これは彼の初期の作品の中で最も挑発的なもので、2000年の歴史を持つ壷が、彼の手からすべり落ち、地面で粉々になるのを写している。マイアミでは今年、ある芸術家が彼の壷を無断で私物化して地面に落とすことで抗議を行った。

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この展示は、5000人以上の子供たちが犠牲となった2008年の四川大地震の被災地から回収された鋼鉄の鉄骨150トンで構成されている。校舎の欠陥建築について彼が行った「民間調査」が、中国当局による拘留のきっかけとなった。

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彼がロンドンで大々的に紹介された際に行われた、テート・モダンのタービンホールに何百万個ものヒマワリの種のフェイク作品を敷き詰めた展示。ひまわりの種の模様は、一つ一つ手作業で描いた。

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この6つの展示物は、それぞれ棺桶のような箱型の外観をしている。小さな開口部を通して、彼が81日間の拘留期間を過ごした独房の情景を見ることができる。焦点が当たっているのは、制服姿の2人の守衛が横についた彼自身の模型だ。

タイムアウトが北京の彼を訪れた肌寒い朝、彼の灰色のレンガ造りのスタジオの外に警官の姿はなかった。これは注目に値する変化だ。ごく最近まで、北京郊外にある彼のスタジオの外には、私服の警官がいつも張り込んでいた。その存在は、敷地内を歩き回る猫や、屋敷の前にある自転車のカゴの中に彼が毎日置く花のように、常にそこにあった。花を置くという行動は、海外旅行をしたり、中国で作品展を行ったりする自由がないことを示す彼のささやかな抗議だった。彼はいまだにパスポートを所持していない。

しかし、当局が中国における彼の存在感を消そうと試みている一方で、彼は国際的なシーンで高い名声を保っている。ブルックリン美術館では2014年、彼の大規模な回顧展が行われた。また彼はソーシャルメディア上で絶えず活動を続けており、最近ではアメリカのライフスタイルの権威である実業家マーサ・スチュワートとの自撮り写真も公開した。タイムアウトは彼に、反体制派および高名な芸術家としての自身の役割にどう折り合いをつけているかと、この矛盾した状況がどのように最新作の糧となったかについて話を聞いた。

新しい作品展は、ガスマスクや手錠、自転車などの物に焦点を当てたものとなっていますが、それらの間にあるつながりは何ですか。

アイ:これらは、私の小さな世界に関連のあるモノです。例えば、『Forever』の自転車は、私が子供の頃に使っていたメーカーのものです。私の育った村には、ちゃんとした道路はなく、モノを運ぶ時はいつも自転車で持っていかなければなりませんでした。人々は自転車に親しみを持っているので、彫刻作品としてふさわしいと思ったのです。自転車は人体に合わせて設計されており、体の力で動かします。今ではそういうモノはほとんどなくなりました。

ロンドンを訪れることができる生活が恋しいですか。

はい。ロンドンは真に市民社会と呼べるものであり、中国では「市民社会」という言葉すら口にできません。彼らはそれを、ある種の汚い言葉のように考えているのです。現代のイギリスの文化は非常に洗練されています。私はイギリスで過ごした時間の一分一秒にいたるまで満喫しました。できることなら、いつかまた訪問できればと思います。特に拘留を解かれた後、ロンドンの人々や芸術界の人々がこれほど多大な支援をしてくださっているのを見て、本当に感動し、衝撃を受けました。彼らは、私の置かれた状況に公然と立ち向かい、言論の自由に対する支持を示しました。それを感じることができたからこそ、私は自分の置かれた個人的な状況に耐えることができたのだと思います。

現地に行くことができない時は、どのように作品展示を管理しているのですか。

私は最高の芸術家ではないかもしれませんが、遠隔芸術家としては本当に右に出るものはいないと思います。インターネット、Skype、ありとあらゆるコミュニケーション手段を利用しています。私はこれまで、何十もの作品展を現地に行くことなく開催してきました。現地に足を運ばなくても、主催者や来場者とコミュニケーションを取っているからです。

あなたに対する中国当局の態度には変化があったと思いますか。

彼らは私に対して前よりずっとオープンになり、はるかにリラックスした姿勢を取るようになってきました。外出しても尾行されなくなりましたし、もう外にも車は止まっていません。中国国内ならかなり自由に旅行できますし、「どこに行くんだ」と聞かれることもありません。彼らは私に、仕事をするにあたっても、こうしてあなたと話すことについても、最大限の自由を与えてくれていると言うべきでしょう。ですので、私に対して非常に友好的な態度を取ってくれていると判断しています。

当局はあなたの芸術を規制しようとしましたか。

いいえ。彼らはその点についてはずっと、非常に明確にしていました。ですが私は、彼らが本当に結果に満足しているとは思っていません。 彼らは私の芸術に何らかの意味や、裏に流れる陰謀があるに違いないと考えています。

あなたの作品と、行っている活動は別のものであると考えていますか。

いいえ。私の活動は実のところ、私の芸術や私の本質的な権利のためだけのものなのです。それらの権利を守るために、私は「活動家」と呼ばれるものになったのです。その2つを切り離すことは不可能です。芸術は守られなければなりませんし、言論の自由も守られなければなりません。私は芸術を通して主張を行っており、主張を通して芸術を生み出しているのかもしれません。

あなたが高名な芸術家・活動家であることで、あなたと同じ主張を持たない芸術家が見劣りしてしまう可能性については気にかけていますか。

私は、この世界は競争でできていると思います。自由を得ることにさえも、競争はあります。ある主張の裏に思想があるのであれば、誰もその主張を見劣りさせることなどできないと思います。私は長い間、自分が国際的な有名人だということすら知りませんでした。有名になった数年間はここ(自分のスタジオ)にいて、世界を訪れてはいませんでしたから。当局にも言いましたが、私の人気をここ数年間で前よりもずっと高めたのは当局ですよ。

中国での人気も高まったと思いますか。

以前よりもずっと。主に、外の情報を得ることができ、インターネットを使用できる人々から人気ですね。若い人たちの方が多いと思います。彼らはただただ、なぜ私がこのように処罰されなければならないのか理解できないのです。多くの人々は、この国には(変革の)可能性はないと考えていますが、私は少し甘い考えを持っているんです。夜には非常に絶望的で失望した気分になりますが、朝になるとまた心機一転するのです。

今では、携帯カバーや傘などアイ・ウェイウェイグッズを購入できるようになりました。あなたの写真の商業化についてどう感じますか。

そこに象徴的な意味があるのであれば、人々が私の写真を使用することに何の異存もありません。もちろんゴミやクズのようにできの悪いものは嫌ですが、私の立場では、たとえコントロールしたいと願っても、それはできませんから。

あなたは大きなスタジオを運営しており、作品の多くは職人たちに外注されたものです。あなたの芸術が個人的なものでなくなってきていることを気にしていますか。

いいえ。私は、自分の作品ができる限り個人的なものでなくなることを願っています。自分がそれほど重要な人間だとは思っていないからです。私は最初に始めた人間であり、指導し、アイディアを統制している人間ですが、私の作品であるかどうかはどうでもいいと思っています。人々は、芸術とは何かについて幻想を抱きすぎています。芸術とは、アイディアであり、決断であり、表現であり、コミュニケーションです。私は表現とコミュニケーションにとても優れているのです。私にとって完璧な手本となる存在は、アンディ・ウォーホルです。

あなたの作品がコミュニケーションにまつわるものであるなら、あなたが行っているインターネットでの活動は、あなたの芸術の延長、またはあなたの芸術を代替できるものであると思いますか。

実のところ、インターネットが私の芸術の延長なのではなく、私の芸術がインターネットの延長なのです。もしインターネットがなければ、現在のアイ・ウェイウェイは存在しません。私は純然たるインターネットの産物です。

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そのほかのインタビュー

インタビュー:村上隆

「日本人には私のアートは理解できない」。この村上隆の発言は、近頃終了したばかりの展覧会『村上隆の五百羅漢図展』で、4ヶ月あまりの開催期間中に30万人以上の来場者を惹きつけたことから考えると、少しばかりショッキングである。しかし、こういったショッキングな発言は、横浜美術館でその膨大なアートコレクションの展覧会を現在行っている伝説的なスーパーフラットアーティスト、村上隆には何ら新しいことではない。

私達は中野にあるBar Zingaroで村上と話をし、中野ブロードウェイでギャラリーやカフェを開いたこと、なぜ欧米の人が彼の作品に対して日本人とは違う見方をするのか、なぜ彼は自分のひげを収集するのかといったことについて話をした。

By Time Out Tokyo Editors

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ドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA』が公開中だ。坂本龍一が2012年に行った岩手県陸前高田市でのコンサートから始まり、2017年4月に発売されることになる最新アルバム『async』の完成に至るまでの約5年間を追った作品である。 東日本大震災にまつわるシーンでは、官邸前のデモでのスピーチや、防護服に身を包んでの被災地視察、津波をかぶったグランドピアノをつま弾く姿など、行動的な坂本の姿が映される。その後、カメラは、2014年に発覚した中咽(いん)頭がんによる闘病生活を経て、黙々と音楽制作と向き合う音楽家としての坂本を静かに見つめる。 映画は、5年間という時間の中で坂本個人に起こった変化のひとつひとつに焦点を集中させることなく、淡々とその姿を追い、言葉を拾いながら、時代の移り変わりや音楽の本質といった普遍的なテーマを浮かび上がらせる。坂本龍一という人物を通して、人類の業や未来について、深く考えさせられる1本だ。今回のインタビューでは、劇中の随所で坂本が発した印象的なセリフについてその真意を尋ねるとともに、アルバムに込められた「async」=非同期というテーマをひも解く鍵を探った。

By Kunihiro Miki
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インタビュー:バリー・ジェンキンス

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By Michael Glover Smith

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