LGBT映画50

ベストLGBT映画 50選

監督、俳優、脚本家、アクティビストらが選ぶLGBT映画の名作

テキスト:
Time Out London editors
Time Out Tokyo Editors
Time Out Film
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レビュー:Cath Clarke、Dave Calhoun、Tom Huddleston、Ben Walters
 

The 50 best gay movies: the best in LGBT film-making』と題して、タイムアウトロンドンでLGBT映画のベスト50が紹介された。同ランキングは、LGBT文化のパイオニアであるグザヴィエ・ドラン、キンバリー・ピアース、ブルース・ラ・ブルース、トッド・ヘインズ、ジョン・ウォーターズらが挙げたベスト10をもとに作成された。

1位に選ばれたのは、カウボーイ同士の悲恋を描いた名作名作『ブロークバック・マウンテン』。そのほかにも、2013年にカンヌの最高賞パルムドールを獲得したことでも話題になった『アデル、ブルーは熱い色』、「ドロシーの友達?(彼はゲイ?)」という言葉も生み出したLGBT映画の古典『オズの魔法使』などがランクイン。LGBTとくくらずとも映画として素晴らしい作品が数多く選ばれているので、何を観るか迷った時の参考にしてほしい。

ブロークバック・マウンテン(2005)

1. ブロークバック・マウンテン(2005)

監督:アン・リー
出演:ヒース・レジャー、ジェイク・ギレンホール

予想通りの最優秀作品。アン・リー監督の素晴らしいドラマにより、『ブロークバック・マウンテン』は決定的にメインストリームへと躍り出た。登場人物は、キャンプの仲間やコミックリリーフではなく、たくましく保守的なロマンチックヒーローである。また、同作品はインディー映画ではなく、主要なスタジオで制作されたオスカー狙いのメロドラマである。愛情のこもった脚本、主役2人の美しい演技、ロッキー山脈の花崗岩の眺望を「パン」するジョン・フォードのスピリットを含んだリーによるチャネリング。この最高傑作は、不朽の名作になるだろう。ーTom Huddleston
ボーイズ・ドント・クライ(1999)

2. ボーイズ・ドント・クライ(1999)

監督:キンバリー・ピアース
出演:ヒラリー・スワンク、クロエ・セヴィニー

今でこそトランスジェンダーについてはスクリーン上でより上手に表現されるが、ヒラリー・スワンクが若いトランスジェンダーの男性ブランドン・ティーナの実話を演じ、2000年にオスカーを受賞した時には画期的なものだと感じられた。脚本家、監督のキンバリー・ピアースは、ブランドンの悲劇の物語を真正面から受け止めている。女性として生まれたことが明らかになり、ブランドンはネブラスカ州の故郷を離れざるを得なくなったが、ラナ(クロエ・セヴィニー)との愛情ある関係は後に恐怖と偏見のために恐ろしく素っ気なく切れてしまう。しかし、圧倒的な悲しみのなかにも、この作品は、強い共感で語られ、勇気を与える物語であり続けている。ーDave Calhoun
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ブエノスアイレス(1997)

3. ブエノスアイレス(1997)

監督:ウォン・カーウァイ
出演:レスリー・チャン、トニー・レオン

ウォン・カーウァイ監督による独特の陶酔に値するとの評判の作品。地球の裏側アルゼンチンをさまよう香港人カップル、直情的なホー(レスリー・チャン)と堅実なライ(トニー・チャン)。お互いを愛し続けることが不可能であると気づき、2人を定義するその関係を終わらせることが同じく不可能であることも理解する。強力な演技はウォンによる言葉の省略多用の構成と、撮影監督クリストファー・ドイルや制作デザイナーのウィリアム・チャンといったいつもの共同制作者の素晴らしい仕事により支えられている。1997年に制作されたこの作品は、香港の中国への返還の比喩であり、感動的で忘れることのできない実りなきロマンスである。ーBen Walters
マイ・プライベート・アイダホ(1991)

4. マイ・プライベート・アイダホ(1991)

監督:ガス・ヴァン・サント
出演:リヴァー・フェニックス、キアヌ・リーブス

何年にもわたり、「ゲイを演じる」ことは若い男性映画スターにとっては勇気ある行動と見られていた 『マイ・プライベート・アイダホ』はそのいい加減な仮定が間違っていると証明した映画である。リヴァー・フェニックスとキアヌ・リーブスはシアトルの路上をさまよう若い男娼のペアを演じ、当時の若者たちは熱狂し、2人のポスターを壁に飾った。ガス・ヴァン・サント監督の映画はいい意味で、夢のようで、野卑で、仰々しい。何よりも主役の2人が信じられないくらい美しいのだ。ーTom Huddleston
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オール・アバウト・マイ・マザー(1999)

5. オール・アバウト・マイ・マザー(1999)

監督:ペドロ・アルモドバル
出演:セシリア・ロス、マリサ・パレデス、ペネロペ・クルス

ペドロ・アルモドバル監督は1999年の主要作品である『オール・アバウト・マイ・マザー』で、世界の映画シーンで自身の立ち位置を確立した。フランコ政権後のスペイン映画界の変わり者の不良少年としてのみならず、深い感動を与える特徴あるドラマの巨匠という立場を得た。彼の映画はヒッチコック、サーク、ロルカ、テネシー・ウィリアムズ。そして、映画『イヴの総て』を自在に活用し「親であること」、「哀悼」、「芝居」、「エイズ」、「責任」をテーマに、壮大な物語を紡ぎ出す。メロドラマ、笑劇、寓話となれば、スキャンダラスな女々しい態度のかけらも不当に扱うことなく、巨匠バイオリニストのように観客の琴線を刺激するアルモドバルのまれな能力を確認できる。ーBen Walters
甘い抱擁(1968)

6. 甘い抱擁(1968)

監督:ロバート・アルドリッチ
出演:ベリル・リード、スザンナ・ヨーク、コーラル・ブラウン

1962年にグランギニョールキャンプ映画の古典『何がジェーンに起ったか?』を制作した6年後に、ロバート・アルドリッチ監督はレズビアンサイコドラマの非凡な作品で戻ってきた。ベリル・リードの役は、テレビのメロドラマでは甘美なシスター・ジョージとして知られ、愛されていた女優。しかし、実生活では、タクシー内でみだらな行為に病みつきになる修道女という酔っぱらいのモンスターのジューンとして、シーンを圧倒する。彼女の行動は、従順なチャイルディ(スザンナ・ヨーク)との関係も脅かすのだが、それでもリードに共感を覚えることができる。映画には伝説的なロンドンのレズビアンクラブ、ゲートウェイでの撮影シーンも含まれている。ーBen Walters
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ぼくのバラ色の人生(1997)

7. ぼくのバラ色の人生(1997)

監督:アラン・ベルリネール
出演:ミシェール・ラロック、ジャン=フィリップ・エコフェ、エレーヌ・ヴァンサン

幼いリュドヴィクの両親は、自身の子どもをバービー人形を抱く困った男の子だと思っている。しかし、リュドヴィクは単に自分が女の子だと感じていた。子どものトランスアイデンティティは今でも論議の対象であり、ベルギー人監督アラン・ベルリネールの1997年のこの作品は、映画の核心にその問題を据えようとする初期の大胆な企てだった。ジョルジュ・デュ・フレネがリュドヴィク役として、中核となる美しい演技を行っている。不遜なユーモアは喜びであり、違いを恐れる世界で幸福を追求する子どもの、強く共感できる作品だ。この甘美で優しい物語はアメリカではR指定されている。ーBen Walters
ミルク(2008)

8. ミルク(2008)

監督:ガス・ヴァン・サント
出演:ショーン・ペン、エミール・ハーシュ、ジョシュ・ブローリン

アメリカで初めてゲイであることを明らかにしたうえで当選した、サンフランシスコの改革的政治家ハーヴェイ・ミルクの伝記映画。同作でガス・ヴァン・サント監督はオスカーを受賞した。この作品では、監督の立ち位置は幻想的な『マイ・プライベート・アイダホ』ではなく、複合型映画施設に親和的な『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』の領域にある。しかし、それは素材に適したものだ。堅実で保守的な映画で、オスカーを受賞したショーン・ペンの演技を中心に、ニューヨークでの素晴らしい時期からカリフォルニアで同性愛者の権利のためにロビー活動を行った時期にいたるハーヴェイ・ミルクを追跡する。結果は画期的であるとはまず言えないが、甘美で、愉快で、心豊かな作品である。ーTom Huddleston
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とても素敵なこと 初恋のフェアリーテール(1996)

9. とても素敵なこと 初恋のフェアリーテール(1996)

監督:ヘッティ・マクドナルド
出演:グレン・ベリー、リンダ・ヘンリー、ベン・ダニエルズ

イギリスの脚本家ジョナサン・ハーヴェイの1993年の脚本を映画化した、南ロンドンの公営住宅団地のアウトサイダー同士のセクシュアリティと友情を描いた感動的な作品。労働者階級の2人の白人男子生徒、ジェイミー(グレン・ベリー)とステ(スコット・ニール)が一体になっていこうとする不確実な状況を甘美に描く。目を引く2人のロマンスは、実際にそれが発生したときに、周囲の人たちの人生よりも複雑ではないことを明らかにする。思いやりのある都市ファンタジー作品。ーDave Calhoun
オルランド(1992)

10. オルランド(1992)

監督:サリー・ポッター
出演:ティルダ・スウィントン、ビリー・ゼイン、クエンティン・クリスプ

ヴァージニア・ウルフの小説を翻案した『オルランド』は、キャスティングだけでも注目すべきものがある。ダブレットとタイツに身を包んでも、オートバイに乗っても、等しくルックスの映える、ジェンダーを入れ替える不死身の貴族役のティルダ・スウィントン。80代のエリザベス1世役のクエンティン・クリスプ。素晴らしい!我らがヒーローの不倫相手としてのビリー・ゼイン。うーん……。うっとりするほど美しく、品よく控えめで、静かに批判的で、同性愛者の意志の力についてのメッセージにておいて革命的である。また、ジミー・サマービルによる音楽面での貢献も素晴らしかった。ーBen Walters
マイ・ビューティフル・ランドレット(1985)

11. マイ・ビューティフル・ランドレット(1985)

監督:スティーヴン・フリアーズ
出演:ダニエル・デイ=ルイス、ゴードン・ウォーネック

ハニフ・クレイシの脚本では、セクシュアリティは価値や態度の荒れ狂う衝突における1つの要素にすぎない。パキスタン系イギリス人のオマル(ゴードン・ウォーネック)は、叔父(サイード・ジャーフリー)の起業家的でサッチャー式の夢と、アルコール中毒の父(ローシャン・セート)のロマンチックで知的な野望との間に挟まれていた。ネオファシストのフーリガンになった旧友のジョニー(ダニエル・デイ=ルイス)への、予想外の恋は、オマルの改装したコインランドリーの奥でのセックスにいたる。ーDave Calhoun
ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ(2001)

12. ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ(2001)

監督:ジョン・キャメロン・ミッチェル
出演:ジョン・キャメロン・ミッチェル、スティーヴン・トラスク、マイケル・ピット

ブロードウェイで評判になる以前から水面下で大きな反響を呼んでいた。また、脚本家、監督、スターであるジョン・キャメロン・ミッチェルの輝かしい2001年のデビュー作である。ミッチェルの猛烈な演技と、スティーヴン・トラスクのセンセーショナルな曲を推進力にする、性的に逸脱した者へのほろ苦い叙情詩である。ヘドウィグは東ドイツに生まれ、アメリカ本土に置き去りにされた。そして、性転換手術の失敗と、一緒に作った音楽で昔の恋人がスターの座を手に入れたことによって2重に不当に扱われる。心が痛み、とげとげしく感じられるこの映画は、その主題ともども1回限りである。ーBen Walters
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プリシラ(1994)

13. プリシラ(1994)

監督:ステファン・エリオット
出演:テレンス・スタンプ、ヒューゴ・ウィーヴィング、ガイ・ピアース

公開から20年以上が経過したが、1994年当時と変わらず騒々しく陽気な作品だ。ドラァグクイーン2人と、性転換者女性1人をヒューゴ・ウィーヴィング、テレンス・スタンプ、ガイ・ピアースらスターたちが演じた。「プリシラ」と命名されたスクールバスで、オーストラリアのアウトバックをシドニーからアリススプリングスまで、ロードトリップを行う。旅行中、彼女たちはホモフォビア(同性愛嫌悪者)と出会い「エイズ野郎、あっち行け」とバスの側面に落書きされたり、見知らぬ人たちの優しさにも触れる。世界のメインストリームでの爆発的なヒットを飛ばした作品だ。ーCath Clarke
ウィークエンド(2011)

14. ウィークエンド(2011)

監督:アンドリュー・ヘイ
出演:クリス・ニュー、トム・カレン

重苦しい感覚を伴わないこのアンドリュー・ヘイ監督のドラマは、完全にその時代の映画だ。トーンは軽く、心遣いは深い。イギリスの都市で出会った2人の若い男性がごく短い期間の情熱的な情事を交わすなかで、人生へのアプローチの違いが浮かび上がってくる。1人は自身のセクシュアリティについてより正直であり、より快適だった。しかし、ヘイは単純にもう一方の魅力を設定することは避けた。2人のセックスには恥ずかしがったり、エロティックなところはなく、単に本物のように感じられる。そして、会話や交流は、簡潔で強烈な連結か何かのように感じられる。そうなってほしいと願うかもしれないが、けっしてそうはならないことを理解するだろう。ーDave Calhoun
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愛の唄(1950)

15. 愛の唄(1950)

監督:ジャン・ジュネ
出演:André Reybaz、Java, Coco Le

アウトローの詩人ジャン・ジュネは、様々な作風の風変わりな監督作品を残した。ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の『ケレル』やトッド・ヘインズ監督の『ポイズン』を見てほしい。映画『愛の唄』は、ジュネ本人の手による唯一の映画作品である。半時間もない短さのなかで分離された2人の囚人の愛と彼らの看守の嫉妬を探索しつつ、言葉なしで繰り広げられる。一連のエロチックなダンスとマスターベーションが特徴的だが、そのどちらも、一方の囚人が壁越しに相手の部屋に向かって吹くほらほどにも熱くならなかった。アメリカの最高裁判所は同作品をわいせつであると判決を下している。ーBen Walters
自由の代償(1975)

16. 自由の代償(1975)

監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
出演:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー、ペーター・シャテル、カールハインツ・ベーム

ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の『自由の代償』は、戦後のブルジョアの偽善を深く傷つけ、辛辣であり、道理にかなった屈辱であるのかもしれない。革命的なドイツ映画のアンファンテリブルは、労働者階級のゲイの少年役を演じた。少年は愛を求め、受容を切望し、そして、偶然にも、抜け目のない知人による無慈悲な搾取の鍵となる宝くじを当てる。この作品は階級意識の峻烈な事例であるとともに、人々が相手の幸福を意に介することなくセクシュアリティを共有できることを示す、心痛むリマインダーである。ーBen Walters
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めぐりあう時間たち(2002)

17. めぐりあう時間たち(2002)

監督:スティーブン・ダルドリー
出演:ニコール・キッドマン、ジュリアン・ムーア、メリル・ストリープ

ハリウッドが、複雑で魅力的な女性の登場人物を提示することはめったになかった。ピューリッツァー賞を受賞したマイケル・カニンガムの小説を原作とする『めぐりあう時間たち』は、3人の女性のある1日を描きだす。ニコール・キッドマン演じるヴァージニア・ウルフは、『ダロウェイ夫人』に取り組んでおり、自身が破綻に向かっていることを感じていた。ジュリアン・ムーア演じる1950年代のカリフォルニアのうつ状態の主婦は、向う見ずにも、隣に住んでいる女性にキスしてしまう。そして、現代に移りメリル・ストリープ演じるニューヨークの編集者が女性と生活をともにしながらも、エイズで死にかけている元恋人の世話をしている。ーCath Clarke
乙女の祈り(1994)

18. 乙女の祈り(1994)

監督:ピーター・ジャクソン
出演:メラニー・リンスキー、ケイト・ウィンスレット

ピーター・ジャクソン監督による、思春期の少女2人を鮮やかに描きだした作品。1940年代のニュージーランドを舞台に、実際に起きた事件に基づいて構成されている。ジュリエット(ケイト・ウィンスレット)とポーリン(メラニー・リンスキー)が出会い、友人愛に陥り、男性映画スターに夢中になる。だんだんと華美になるファンタジーの世界を構築し、最終的には殺人を計画し、実行することとなる。ーTom Huddleston
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真夜中のパーティ(1970)

19. 真夜中のパーティ(1970)

監督:ウィリアム・フリードキン
出演:ケネス・ネルソン、ピーター・ホワイト、レオナルド・フレイ

ウィリアム・フリードキン監督は、映画『クルージング』で激しい怒りを引き起こす10年前に、ニューヨークの友人グループの肖像を描いた。誕生日パーティーを舞台にしたこの作品は、ゲイの生活を彼ら自身の言葉で扱った、最初の作品の1つである。そこには、大量の飲酒、人間関係の緊張、ずたずたに傷ついた自己再結合がある。マート・クロウリーは自身のヒットした演劇を脚本化したのだが、舞台から移植されたいくつかの衝撃的な演技と、現在ではマンハッタン最古のゲイバーとなっているジュリアスでの場面は注目に値する。ーBen Walters
パレードへようこそ(2014)

20. パレードへようこそ(2014)

監督:マシュー・ワーカス
出演:ビル・ナイ、イメルダ・スタウントン、ドミニク・ウェスト

感動的なイギリスのコメディ映画『パレードへようこそ』は、『フル・モンティ』や『ブラス!』など広い意味での社会派コメディと同じトレンドのなかで生まれた。マシュー・ワーカス監督と脚本家のステファン・ベレズフォードは、1980年代半ば、ウェールズの村でストライキをする鉱山労働者とロンドンのゲイ権利活動家グループの、めったに見られない同盟を思い出させてくれた。ゲイの関係やセックスについて笑い、冗談を言い、泣く能力において、一方のグループの闘争を他方の闘争と同一視できる能力において、その時代のものであるように感じられる。これはポピュリストの輝かしい映画であると同時に、悲しく感動的である。ーDave Calhoun
キッズ・オールライト(2010)

21. キッズ・オールライト(2010)

監督:リサ・チョロデンコ
出演:アネット・ベニング、ジュリアン・ムーア、ミア・ワシコウスカ

結婚して何年も経ち、子供を育てるために創造的な野心を犠牲にしてきたことに憤慨しているジュールズ(ジュリアン・ムーア)は、男性と衝動的でランダムな情事を重ねる。ほかの結婚後中期に破綻する内容の映画との違いは、ジュールズの結婚相手が女性であることと、男がたまたま子供の生物学的な精子ドナーとしての父だったことだ。長期的な人間関係に入り込んでくる腐敗に関しては、『キッズ・オールライト』ほど賢明でウィットに富んだ映画は少ない。ーCath Clarke
モーリス (1987)

22. モーリス (1987)

監督:ジェームズ・アイヴォリー
出演:ジェームズ・ウィルビー、ヒュー・グラント

1987年のマーチャント・アイボリー監督の映画は、著者の死の翌年(1971年)に出版された、E・M・フォースターの小説をもとにしている。物語はケンブリッジの2人の学生、モーリス(ジェームズ・ウィルビー)とクライヴ(ヒュー・グラント)の恋愛を描き、その恋愛はそれぞれが大学を卒業した後により複雑になっていく。クライヴが結婚し、政治家を目指すのに対し、ますます悩みを抱えるモーリスは自分の感情を捨て去ることを拒否し、猟場番人(ルパート・グレイヴス)との危険な情事に踏み出す。胸の張り裂ける物語だが、たとえどれだけ孤独でも、階級格差を超えた同性の恋愛関係における幸福を示唆するエンディングを提示する点でラディカルでもある。ーDave Calhoun
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スコピオ・ライジング(1963)

23. スコピオ・ライジング(1963)

監督:ケネス・アンガー
出演:ブルース・バイロン、ジョニー・サビエンザ、フランク・カリーフィ

ケネス・アンガーによる1963年の作品。イエスの物語と1950年代のバイク乗りの文化をミックスし、映画音楽に既存のポップソングを使用した初めての映画だ。自動車事故を物神崇拝することで、デヴィッド・クローネンバーグの『クラッシュ』が産み出されるのを予想した。ウィットを効かせて観察、編集された倒錯した夢のスクラップブックだ。この作品は別の初めても達成している。カリフォルニア州最高裁判所が、性的にきわどい内容にもかかわらず「わいせつとは見なされない」という判決を下したことだ。ーBen Walters
トランスアメリカ(2005)

24. トランスアメリカ(2005)

監督:ダンカン・タッカー
出演:フェリシティ・ハフマン、ケヴィン・ゼガーズ

トランスエクスペリエンスとかかわる初期の主流スタジオによる映画のひとつが同作品だ。自分が彼女の息子であることを知らないティーンエージャーの不良と旅行するトランスジェンダーの女性であるブリー役を、フェリシティ・ハフマンが演じる。ロードムービーの常套手段が、慣れない主題のメインストリームによる受容を促進する格好の乗り物であることが証明された。ただし、裏側では、映画製作会社がトランスジェンダーの俳優を主役に起用しなかったことは主題を軽んじていることの証である、という非難の嵐があった。ーBen Walters
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Go!Go!チアーズ(1999)

25. Go!Go!チアーズ(1999)

監督: ジェイミー・バビット
出演:ナターシャ・リオン、クレア・デュヴァル、ミシェル・ウィリアムズ

ジョン・ウォーターズがティーンエージャーに映画『暴力脱獄』を真似るようにと監督していると想像してみるといい。そうすれば、「同性愛者は出て行けの祈り」に対するこの天才的な諷刺作品の大まかな捉え方ができる。ナターシャ・リオン演じるポンポンプリンセスが、少しばかりその気があると両親や友人に疑いをもたれ、再教育施設に送られる。ミシェル・ウィリアムズ、メラニー・リンスキー、ジュリー・デルピー、そして、「異性愛者は素晴らしい」と書かれたTシャツを着たキャンプカウンセラーのル・ポール。配役は完璧だ。また、色の使い方が目を疲弊させる作品である。まだ見ていないのなら、最高に笑える夜を期待してほしい。ーTom Huddleston
バウンド(1996)

26. バウンド(1996)

監督:アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー
出演:ジェニファー・ティリー、ジーナ・ガーション、ジョー・パントリアーノ

映画『バウンド』は公開時に、LGBTコミュニティの一部のセクターから非難された。レズビアンの関係に焦点を当てた映画でありながら、2人の男性の映画おたくが監督した。伝統的な犯罪映画をゲイの関係を利用して、その他大勢と分離して目立たせるショック戦術として利用された、ポストタランティーノの皮肉ブームの産物であると。しかし、ラリー・ウォシャウスキーがジェンダーを転換してラナになったとき、映画のジェンダーポリティックスが再評価された。今では、『バウンド』は真価を認められている。静かで破壊的な、きわめつけの面白いスリラー映画である。ーTom Huddleston
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ベニスに死す(1971)

27. ベニスに死す(1971)

監督:ルキノ・ヴィスコンティ
出演:ダーク・ボガード、ビョルン・アンドレセン、シルヴァーナ・マンガーノ

イタリア出身の映画監督ルキノ・ヴィスコンティはトーマス・マンの1912年の小説を1971年に映画化した。第一次世界大戦前のヴェネツィアのリドの設定をそのまま保ちながらも、作家ではなく、作曲家を作品の軸とした。作曲家は問題を抱え、体調の良くないグスタフ (ダーク・ボガード)であり、この老いゆく男は次第に若いブロンドの男性宿泊客にのぼせるようになっていった。マンのより哲学的な問いは、手に入れることのできない美と若さを切望する1人の男の晩年の、見栄えが良く、趣のある典型を提示するために、内容の乏しいものにされている。ヴィスコンティの映画には疑いなく底の浅いものがあるが、その中核にある悲しみと失われた機会についてはまったく間違っていない。ーDave Calhoun
フィラデルフィア(1993)

28. フィラデルフィア(1993)

監督:ジョナサン・デミ
出演:トム・ハンクス、デンゼル・ワシントン

当時まだ多くの人が、HIVに感染することを恐れて、ゲイの人たちに触れることを恐れていたが、この映画は人々のハートとマインドを変えた。ナイスワーナーと監督のジョナサン・デミは、主流派の聴衆に向けて映画を制作したいと望んでいた。エイズの診断を受けて、ゲイであることを理由に解雇された、弁護士の物語は、感動的な法廷ドラマとして演じられた。トム・ハンクスは、オスカーの主演男優賞を受賞した。ーCath Clarke
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ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972)

29. ペトラ・フォン・カントの苦い涙(1972)

監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー
出演:マーギット・カーステンゼン、ハンナ・シグラ、カトリン・シャーケ

ドイツ人映画監督ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーは、世界的に有名なファッションデザイナー、ペトラ・フォン・カント(マーギット・カーステンゼン)のフラットに観客を閉じ込める。ファッションデザイナーの仕事の真実は、ペトラがベッドでくつろいでいる間にすべての仕事を行うアシスタント(イルム・ヘルマン)による仕事なのだが、この関係は双方にとってうまくいっていた。ペトラが若いモデル、カリンに夢中になるまでは。全員とびきりの美人の女性キャストと、有刺鉄線の対話「私の心はそれがずっと突き刺さっていたかのようにズキズキ痛む」が見ものである。ーCath Clarke
The Terence Davies Trilogy(1983)

30. The Terence Davies Trilogy(1983)

監督:テレンス・デイヴィス
出演:テリー・オー・サリバン、ウィルフライド・ブランベル

タイトルが示すように、この作品は短編映画の3部作である。アーティストの若年期、中年期、老年期の3つの肖像が描かれている。デイヴィスは自分自身の経験を描くことを恐れたことはなかった。最初の2つの主要映画は彼の子ども時代についての作品であり、この「3部作」も例外ではなかった。1976年の『チルドレン』でデイヴィスの分身であるロバート・タッカーの学生時代を追い、1980年代の『聖母子』では宗教とセクシュアリティに取り組み、1983年の悲痛な『死と変容』では人生の最後までを描いた。デイヴィスは観客に彼の人生を垣間見せており、確かに内省的であるが、けっして自堕落ではなかった。ーTom Huddleston
ピンク・フラミンゴ(1972)

31. ピンク・フラミンゴ(1972)

監督:ジョン・ウォーターズ
出演:ディヴァイン、デヴィッド・ローチャリー 、メアリー・ヴィヴィアン・ピアース

性的マイノリティーを扱う映画は見る人に共感や理解、時として哀れみさえも求める。しかし、ジョン・ウォーターズの悪趣味な世界観から言うと、グロテスクな世界を大いに楽しんでいる「変わり者」に比べると、非同性愛者の方が臆病で、無理に社会に適合していて哀れだというのだ。この感性を極めた作品は、もちろん1972年の『ピンク・フラミンゴ』であろう。本作で巨漢のドラァグクイーン、ディヴァイン は「世界で一番下品な人間」の座を保守する。セックス、ドラッグ、殺人、共食い、名声。そして極めつけのラストシーンだ。ーBen Walters
エドワードII(1991)

32. エドワードII(1991)

監督:デレク・ジャーマン
出演:スティーブン・ウォーディントン、アンドリュー・ティアナン、ティルダ・スウィントン

1593年にクリストファー・マーロウが発表した、原作『エドワード2世』をもとにした作品。エドワード2世と嫌われ者のピアーズ・ギャヴィストン(アンドリュー・ティエルナン) との性的な関係(当時の文学としては珍しいゲイロマンス)を調べ、デレク・ジャーマン監督は今も昔も存在する体制勢力を非難する。ジャーマンの関心は過去の歴史ではなく現在なのだが、時代を通して、同性愛嫌悪に強力かつ巧みにスポットライトを当てている。ーDave Calhoun
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サテリコン(1969)

33. サテリコン(1969)

監督:フェデリコ・フェリーニ
出演:マーティン・ポッター、 ハイラム・ケラー、 マックス・ボーン

「制作にあたって、火星人の習慣、風習のドキュメンタリー制作をしているかのように、古代ローマについて調査している」と、フェデリコ・フェリーニは語っている。本作は1世紀に書かれて以来いまだに読まれている、ペトロニウスによる古代ローマの風刺に富んだフィクションの一部がベースになっている。幕開けは、2人の青年エンコルピオ(マーチン・ポッター)とアシルト(ヒラム・ケラー)が美しい男の子(マックス・ボーン)を巡って口論するところから始まる。そして、快楽を追求して堕落に堕落を重ね……。ーCath Clarke
狼たちの午後(1975)

34. 狼たちの午後(1975)

監督:シドニー・ルメット
出演:アル・パチーノ、ジョン・カザール、クリス・サランドン

1975年、アル・パチーノがシドニー・ルメット監督の人質事件についての映画で、主演を演じたのは予想外だった。なぜなら、この映画は自分の恋人の性別適合手術の費用を得るためにチェイスマンハッタン銀行を襲った、若いニューヨーカーの実話がもとになっているからだ。同作品でパチーノは「真実を包み隠さず誇りに思う」ヒーローを演じている。性的マイノリティーのデリケートな側面を大胆かつバランスよく描写している。5年後アル・パチーノは、さらに複雑な結末の『クルージング』に出演し、この路線を進んでいる。ーTom Huddleston
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ピンクナルシス(1971)

35. ピンクナルシス(1971)

監督:ジェームズ・ビドグッド
出演:ボビー・ケンダル

「密室で行う」というのが性的マイノリティーにとっての日常であったし、LGBTをテーマとする映画制作もそうであった。1960年代、ジェームズ・ビドグッド監督はニューヨークのアパートの一室で、若く美しいボビー・ケンダルをフィーチャーした作品を制作した。セクシーなマタドール、ベリーダンサー、スレイブボーイの装いで、予算をかけずに豪華な一連のファンタジアを8mmで撮影した。アイドル的でエロチックなイメージがひとつになり、豪華で想像をかきたてる同作品は『ピンクナルシス』として匿名でリリースされた。俗っぽい純真さを備えつつ、見る人をドキドキさせるこの作品は、ピエール・エ・ジルなどのフランスのアーティストに影響を与えた。ーBen Walters
マイ・ブラザー・ザ・デビル(2012)

36. マイ・ブラザー・ザ・デビル(2012)

監督:サリー・エル・ホセイニ
出演:ジェームズ・フロイド、ファディ―・エルサイド

『マイ・ブラザー・ザ・デビル』はおそらくゲイのアラブ人ギャングが主役となった初めての映画であろう。ロンドンの暗黒街でドラッグを売り歩く子どもを扱った作品が数多く発表されている時期に、この低予算ドラマがリリースされた。ディレクターのサリー・エル・ホサイニ は「銃と男」のジャンルは避け、偏見とアイデンティティーを追い求めた。東ロンドンに住む、エジプト移民の家庭に生まれた2兄弟、ラシッド(ジェームス・フロイド)とモー(ファディ―・エルサイド)が登場する。ディーラーとして下っ端のラシッドにはゲイであるという大きな秘密があった。家族、宗教、性の問題で彼が葛藤を抱く様が生々しく伝わる。ーCath Clarke
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ロングタイム・コンパニオン(1990)

37. ロングタイム・コンパニオン(1990)

監督:ノーマン・ルネ
出演:キャンベル・スコット、ブルース・デイヴィソン、ダーモット・マローニー

1980年代の終わりになると、ハリウッドの主流映画はエイズ危機問題に取り組む構えができ、ノーマン・ルネ監督が1989年に発表した『ロングタイム・コンパニオン』がその走りとなった。『ニューヨーク・タイムズ』の死亡告知ページにある、亡くなった人のパートナーの婉曲表現からその名をとった本作は、裕福なカップル、シーン(マーク・ラモス)とディビッド(ブルース・デイヴィソン)を取り巻く友人や家族(キャンベル・スコット、ダーモット・マローニー、メアリー・ルイーズ・パーカーなど)の約10年間を描く。エイズの危機とは無縁だった人々に現実を知らしめた作品だ。ーBen Walters
By Hook or By Crook(2001)

38. By Hook or By Crook(2001)

監督:ハリエット・ダッジ、シラス・ホワード
出演:ハリエット・ダッジ、シラス・ホワード

2001年のハリエット・ダッジとシラス・ホワードのデビューはサンダンス映画祭で波紋を呼んだ。同性愛者の生活でも間違いなく無視されてきた、ある種の経験を世に知らしめたのである。ホワードは女性から男性への性転換者シャイを、ダッジはレズビアンの男役、バレンタインを演じた。この「異常な2人」はともに親子関係に関する困難な問題に取り組み、協力することで大きな可能性が生まれることを観る人に教えた。ーBen Walters
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Parting Glances (1986)

39. Parting Glances (1986)

監督:ビル・シャーウッド
出演:ジョン・ボルガー、リチャード・ガナング、スティーヴ・ブシェミ、

1984年に撮影されたビル・シャーウッド監督作。彼が37歳でエイズにより亡くなる前に完成した唯一の作品で、エイズに真っ向から向き合った最初の映画のひとつだ。24時間、ロバート(ジョン・ボルガー)とミカエル(リチャード・ガナング)との関係を集中して撮影するが、ミカエルの昔の恋人で病気のニック(スティーヴ・ブシェミ)もまた中心人物である。同作品はユーモアに富み、反逆精神で盛り上がる、下町のニューヨークを描いている。ーBen Walters
オズの魔法使(1939)

40. オズの魔法使(1939)

監督:ヴィクター・フレミング
出演:ジュディ・ガーランド、レイ・ボルジャー、ジャック・ヘイリー

表面的には明確にはLGBTを主題としていない。田舎娘のドロシー(ジュディー・ガーランド)が嵐の中で、魔法の国に運ばれるシンプルなファンタジーだ。なぜ『オズの魔法使』はLGBTの古典となり、「ドロシーの友達?(彼はゲイ?)」という用語すら生まれたのだろうか。文化理論学者はこの謎を解き明かすため、何時間も議論を交わした。ある学者は単純にキャンプのせいではないかと唱え、別の学者はより深く掘り進めてカンザスのモノクロの場面を抑圧や同性愛嫌悪にまで結びつけ、オズの色とエネルギー自体が、「同性愛であることを告白し誇りに思う」ことを表現しているとした。いずれの理由にせよ、なぜか納得がいくものだ。ーDave Calhoun
ハイ・アート(1998)

41. ハイ・アート(1998)

監督:リサ・チョロデンコ
出演:ラダ・ミッチェル、アリー・シーディ、パトリシア・クラークソン

ニューヨークのアートシーンを愛する人には、写真家ナン・ゴールディンの人生や作品を扱ったクールなロマンス作品を観ることを勧めたい。大きな屋根裏部屋、小さなコーヒーカップ、タイトな黒のタートルネック。野心あるシド(ラダ・ミッチェル)が写真雑誌の仕事につき、昔の生活や昔の恋人が少し退屈だったことに気付いたように、何かに気付くだろう。そして、有名な写真家ルーシー(アリー・シーディ)との友情は、思いもよらない展開へとつながっていく。ーTom Huddleston
真夜中のカーボーイ(1969)

42. 真夜中のカーボーイ(1969)

監督:ジョン・シュレシンジャー
出演:ジョン・ヴォイト、ダスティン・ホフマン、シルヴィア・マイルズ

『真夜中のカーボーイ』のパワフルで心を揺さぶるシーンは、社会性に欠ける少年(ボブ・バラバン)がタイムズスクエアで男娼のジョー(ジョン・ヴォイト)を引っかける場面である。2人はみすぼらしい映画館に入り、後ろの席で少年はジョーとオーラルセックスをする。その後少年は金がないことを告白する。痛々しいほどに彼の孤独と羞恥が伝わってくる悲しいシーンだ。同作品は、ジョー(ジョン・ヴォイト)とラッツォ(ダスティン・ホフマン)の純愛ストーリー。そして、監督ジョン・シュレシンジャーの個人的な映画で、撮影中に同性愛を告白しようとしていた。ーCath Clarke
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パリ、夜は眠らない。(1990)

43. パリ、夜は眠らない。(1990)

監督:ジェニー・リビングストン
出演:ドリアン・コリー、ウィリー・ニンジャ、アンジー・エクストラバガンザ

ジェニー・リビングストン監督による1990年のニューヨークのドラァグ ボールカルチャーを映しだした作品。本作はLGBTのドキュメンタリーとして最も大きな影響をもたらした作品と言えるかもしれない。学生プロジェクトとして始まったこの作品は、アンダーグラウンドシーンを鋭い感性でとらえ、性的嗜好、性同一性、民族性、貧困で苦しむコミュニティの言葉を代弁し、彼らの救いとなった。ペッパー・ラベイジャ、ウィリー・ニンジャ、アンジー・エクストラバガンザといった大物へのインタビューでもわかるように、世界的流行にもなった。ボールルーム カルチャーはメインストリームであるポップカルチャーにも多くの面で影響を及ぼした。たとえばマドンナの『Vogue』や、 ル・ポールの『Drag Race』などだ。ーBen Walters
ストレンジャー・インサイド(2001)

44. ストレンジャー・インサイド(2001)

監督:シェリル・デュニエ
出演:レイン・フェニックス、ダベニア・マクファデン、エラ・ジョイス

2001年、アメリカの放送局HBOのためにシェリル・デュニエ監督が撮影した『ストレンジャー・インサイド』は、イギリスの映画館でリリースされた。この作品は実際の囚人の助言を受け、取り上げられることの少ないアフリカ系アメリカ人のアイデンティティーを豊かに描き出している。受刑者の少女トレジャー(ヨロンダ・リー)は、産みの母親を探すため、成人の刑務所に移されるよう企む。しかし彼女が見たのは、攻撃、信仰、政治、序列の渦巻く恐ろしい世界だった。ーBen Walters
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テオレマ(1968)

45. テオレマ(1968)

監督:ピエル・パオロ・パゾリーニ
出演:テレンス・スタンプ、マッシモ・ジロッティ、シルヴァーナ・マンガーノ

タイトルが示す通り、ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の1968年の本作では形式的な厳粛さを試みている。また、同作品は過激なイタリア人監督にとってプロの俳優との初めての仕事であった。テレンス・スタンプ演じる人間離れした美しさを備えた男が、ブルジョワ家庭に不和をもたらす様を描く。得体の知れない性的魅力を備えた訪問者は、母親、父親、娘、息子、メイドと順に性交し、彼らの生活を一変させる。ーBen Walters
Pariah(2011)

46. Pariah(2011)

監督:ディー・リース
出演:アデペロ・オドゥイェ、キム・ワヤンズ、アアーシャ・デイビス

たくましい10代のアフリカ系アメリカ人レズビアン、アライク(アデペロ・オドゥイェ)の物語。彼女は家族とぶつかるような感情(アライクが男の下着をはきたがることに対する驚きの反応など)を抑えようとする。家庭内における宗教の影響も重要だ。制作責任者スパイク・リーのサポートを受け、ショートフィルムから展開した作品。ーBen Walters
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アデル、ブルーは熱い色(2013)

47. アデル、ブルーは熱い色(2013)

監督:アブデラティフ・ケシシュ
出演:アデル・エグザルホプロス、レア・セドゥ

心がうずく情熱的でヘビーなフランス映画。主演の2人は、脚本家であり監督のアブデラティフ・ケシシュとともに2013年、カンヌ映画祭の最高賞であるパルムドールを受賞した。女学生を演じるアデル・エグザルホプロスは、少し年上の美術学校の生徒、レア・セドゥと恋に落ちる。ケシシュは(共感しているのか、何か意図があるのか、と観る人の意見は別れるのだが)2人の関係のディテールや動きも丁寧に表現している。観る側がどのように解釈しようと、恋に落ちる2人の描写は素晴らしく、交際を始めるシーンはまるで時が止まってしまったかのようだ。ーDave Calhoun
ショー・ミー・ラヴ(1998)

48. ショー・ミー・ラヴ(1998)

監督:ルーカス・ムーディソン
出演:アレクサンドラ・ダールストレム、レベッカ・リリエベリ、エリカ・カールソン

スウェーデン人のルーカス・ムーディソン監督による心を溶かすロマンチックな傑作。心配症で不器用な少女アグネス(レベッカ・リリエベリ)が自信に満ちた扇動家と恋に落ち、その過程でどのように人生を送りたいのか、自立して生きていくのかを学ぶ古典的な物語だ。普通と異なるのは、アグネスの高校に通う反抗的な問題児、エリン(アレクサンドラ・ダールストレム)が、アグネスのロマンチックな感情を理解しにくいということだ。この映画を観ることは一方通行な体験というより、他の人間の人生を89分間体験するということに近い。映画『ショー・ミー・ラヴ』は、ティーンの人生、洞察を描いた、心温まるドラマの最高傑作のひとつに挙げられるだろう。ーTom Huddleston
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バッド・エデュケーション(2004)

49. バッド・エデュケーション(2004)

監督:ペドロ・アルモドバル
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、フェレ・マルティネス

ペドロ・アルモドバルは、現代で最も偉大な監督の1人で、『バッド・エデュケーション』はおそらく彼の撮った最も私的な映画だろう。1980年代のマドリードで、若い映画製作者エンリケ・ゴデッド(フェレ・マルティネス)は次の映画のための題材を探していた。ある日、オフィスに入ってきた男が、エンリケの昔の学友であり初恋の人、イグナシオ(ガエル・ガルシア・ベルナル)だと名乗った。彼の持ってきた脚本は、学校の神父が行った彼らへの虐待に対する復讐の物語だった。アルモドバルはキャンプからノワールまで、巨匠独特の味付けの作品を作り上げている。ーCath Clarke
噂の二人(1961)

50. 噂の二人(1961)

監督:ウィリアム・ワイラー
出演:オードリー・ヘプバーン、シャーリー・マクレーン、ジェームズ・ガーナー

脚本家のリリアン・ヘルマンの生活が根も葉もないゴシップによって破壊される様は、時代遅れで芝居がかったように見えるが今でも衝撃的だ。マクレーンとヘプバーンが、一流の女子校の経営者を演じている。彼女たちがキスしているのを見たという少女の主張により学校は閉鎖に追い込まれる。優美でグラマラスなヘプバーンは、男らしいボーイフレンド(ジェームズ・ガーナー)とともに映画の主役に抜擢されている。しかし、真に際立っているのはマクレーンであり、彼女の演じる強く若い独身女性は、心に秘めていたいくつかの事実に向き合わなければならなくなる。また、映画がほぼ女性だけで占められており(これは2015年現在であっても珍しい)、男性で1、2行以上の台詞があるのがガートナーだけというのも素晴らしい。ーTom Huddleston
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