2010年代に公開されたLGBT映画5選

ヴィヴィアン佐藤が選ぶ、5つのLGBT映画

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テキスト:ヴィヴィアン佐藤
 

2010年代、世界と日本で話題になった経験と回想をめぐる5編のLGBT映像叙事詩。私たちは過去に縛られては生きていけないが、過去を何度も回想し救済してあげること。過去は完全に終了してしまったことではなく、未来と同様に現在にも含まれていて、何度も物語し直す必要がある。そのことではじめて「いま」を生きることができる。現代性に溢れた5編のLGBT映画を見つめることで、私たち自身の物語を語り直すことができるはず。それが未来の生きやすい社会へのバトンとなるはずである。

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わたしはロランス(2012年)

 監督:グザヴィエ・ドラン

映画を第7芸術、つまり、建築と絵画、彫刻、音楽、舞踊、文学のすべてが混ざりあった「7番目の芸術」と意識しているドラン。本人もゲイを公言しており、描かれる世界はすべてLGBT周辺である。しかし、それを越えた同時代的な芸術論と社会論に切り込んだ作品を発表している。代表作『わたしはロランス』では、モントリオールを舞台に、性に対する違和感を抱く35歳のロランスが、様々な困難に直面する姿を描く。苦悩し、性を超越し、女性の元恋人との12年にわたる輪廻(りんね)的な回想録だ。ファッション性と高い芸術性、同時代性を併せ持っている。ドランは、カンヌ映画祭で審査員を務めるほど現代映画業界では最重要人物でもある。

キャロル(2015年) 

監督:トッド・ヘインズ監督

夫や恋人という異性のパートナーがいる、キャロル(ケイト・ブランシェット)とテレーズ(ルーニー・マーラ)による愛の逃避行を描いた物語。原作は『太陽がいっぱい』のパトリシア・ハイスミスの『The Preice of Salt』。物語や結末といったナラティブ性や感情移入の次元ではなく、名匠ヘインズはあくまでも耽美(たんび)的情景や、運命的瞬間を眩暈(めまい)を起こすほど精緻(せいち)な描写に成功している。幸福や美しさの真髄とは、瞬間瞬間の永遠性と回想性に宿る。永遠回帰し続けるイメージは圧巻。

GF*BF(2014年)

監督:ヤン・ヤーチェ

ゲイとストレート男性、ストレート女性との27年にわたる三角関係の物語。1985年、戒厳令下の台湾高雄での高校時代。1990年の民主化一歩手前の学生運動真っただ中の台北。1997年、民主化が進み、互いが社会人となりそれぞれの道を歩み出した時代。そして2012年、すべてを回想し、物語を浮上させる。社会の取り締まりが厳しい時代こそ自由を謳歌し、民主化が進めば進むほど閉塞していく現実。あまりにも哀しい運命をもつ3つの星を描く。サウダーヂ(郷愁)という感情が成り立つのはアジアの中では台湾だけだろう。

恋するリベラーチェ(2013年)

監督:スティーブン・ソダーバーグ

マイケル・ジャクソンやレディー・ガガよりはるか以前に、音楽をショウビズと捉えていた先駆者がいた。リベラーチェは、1950年〜1980年に活躍したアメリカのゲイのピアニスト。エイズで亡くなるまでの最後の10年を、マイケル・ダグラス(リベラーチェ)が熱演。派手なコスチュームと演出過多なステージには、高級車や噴水まで登場。映画は元恋人(マット・デイモン)の回想録を基にしており、セレブリティの常軌を逸したプライベートまでが克明に描かれている。リベラーチェが、エルビス・プレスリーやエルトン・ジョンに与えた影響は絶大。

無伴奏(2015年)

監督:矢崎仁司

直木賞作家の小池真理子による、自伝的小説を原作とした作品。学生運動が吹き荒れる1969年を背景に、斎藤工と池松壮亮、成海璃子が、仙台のクラシック喫茶「無伴奏」で出会い交錯する三角関係を熱演する。メインとサブ、主旋律と伴奏。世界には様々な価値観が併走している。小池の主観で描かれている物語ゆえ、このような仕上がりになってはいるが、どんな時代や場所でも起こっている多感期の経験だ。成海が何よりも透明で、素直に見つめている姿が初々しい。

ヴィヴィアン佐藤

美術家、文筆家、非建築家、ドラァグクイーン、プロモーター。ジャンルを横断していき独自の見解でアート、建築、映画、都市を分析。バンタンデザイン研究所で教べんをもつ。青森県アートと地域の町興しアドバイザー。尾道観光大使。サンミュージック提携タレント。

今年は、東京レインボープライドに参加する?しない?

  • LGBT
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性の多様性や、性的マイノリティ(LGBT)の人々への理解を深めるイベント『東京レインボープライド』が4月28日(土)〜5月6日(日)に行われる。毎年、LGBT当事者からノンケ(異性愛者)、親子連れなど幅広い人々が参加し、すっかり恒例のイベントとなった。昨年には参加者が10万人を突破し、規模は年々拡大、企業の参加も増えてきた。LGBTの聖地・新宿二丁目の人々は、どんな思いでこのイベントを見つめているのだろう。夜の二丁目で聞いた。 

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