カンヌ映画祭 2018について、答えが知りたい10の疑問

#MeTooやNetflix、ラース・フォン・トリアーなど、どうなる今年の映画祭
作成者: Phil de Semlyen および Dave Calhoun |
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第71回カンヌ国際映画祭が、恒例の華やかなレッドカーペットと素晴しい映画作品と共に幕を開けた。男性に偏ったコンペティション部門の出品作には「#MeToo」の影が差し、新ルールによりNetflix作品はコンペティション部門に参加不可ということが発表され物議を醸すラース・フォン・トリアーが最新作を携えて参加する。彼の記者会見が満席になることは必至だ。カンヌ国際映画祭には、まだ答えのないたくさんの疑問が渦巻いている。手始めに次の10の疑問から始めよう。

1

ラース・フォン・トリアーは行儀よく振舞うか

デンマーク人のラース・フォン・トリアーは、2011年のカンヌ映画祭に『メランコリア』を出品した際に口を滑らせた。記者会見で自分はナチスだという「冗談」を言い、カンヌ映画祭への出入りが禁止されたのだ。トリアーは今年、連続殺人犯のスリラー作品『The House That Jack Built』と戻ってくる。復帰は部分的なもので、作品は、アウト・オブ・コンペティション部門で上映される。コンペティション部門で最高賞のパルムドールを競う資格はないということだ。

2

女性映画監督が重要な賞を獲得するか

「#MeToo」と「#TimesUp」が話題の年に映画祭では、コンペティション部門で競う全21作品のうち、女性監督は3人だけだ。ビーチタオルをかぶって居眠りしていて、時代の変化に対応していないのではないかと反感を買っている。映画祭側は、質の維持と形だけの平等主義を否定することが目的だと反論した。しかし、全9人の審査員の中にキルスティン・ダンストとケイト・ブランシェット、クリステン・スチュワート、レア・セドゥ、歌手カジャ・ニンの5人が名を連ねており、審査員には女性を重視する様子が見られる。女性監督ナディーン・ラバキーの『Capharnaüm』が、パルムドールを受賞することに、1、2ユーロ賭けておく価値はあるかもしれない。

※カンヌ国際映画祭唯一の女性パルムドール受賞者は、ジェーン・カンピオン。1993年に『ピアノ・レッスン』で受賞している。

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3

ギャスパー・ノエの新作は注目を集めるのか、気分を悪くさせるのか

カンヌ映画祭の問題児レースで、ラース・フォン・トリアーにぴったり付いているのは、ギャスパー・ノエだ。アルゼンチンの異端児の、超至近距離のセックスシーンや3Dのペニスの1つや2つで演出できない脚本とは、これまで出会ったことがない。今年の出品作『Climax』も例外ではなさそうだ。ノエはカンヌ国際映画祭に何度も姿を見せてきた。彼の知を刺激する作品『エンター・ザ・ボイド』は2009年のコンペティション部門に出品され、失敗作『Love 3D』は2015年にミッドナイト上映された。今年は、50回目の節目を迎えるカンヌの非公式部門の監督週間を、独自の「プライベートなベッドルーム」へと変貌(へんぼう)させる。ただ、この映画が地元の児童館で上映されるようなことはまずありえないだろう。

4

レッドカーペットでセルフィーを撮ったら退場?

カンヌ国際映画祭は、世界中からやって来た傲慢(ごうまん)な映画監督たちと若いモデルが肩をこすり合わせるので有名なレッドカーペットで、セルフィーの撮影を禁止すると発表した。映画祭の代表ティエリー・フレモーは「セルフィーでは、みんな不細工に見える」と言い、「レッドカーペットの流れをさえぎる」というもっともな主張をしている。映画祭の参加者には、もしルールを破った場合には作品上映への出席を禁じると念押しするために、リーフレットまで配られた。もちろんこの話はここで終わりではない。カンヌ国際映画祭のセキュリティは容赦がなく、高圧的なことで知られている。故郷のおばあちゃんに見せるためにさっと写真を撮ろうとすれば、泣きわめきながらレッドカーペットから引きずり出されるのは避けられないだろう。

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5

Netflixは登場するのか

答えは「ノー」だ。ストリーミングサービスの大手Netflixは、カンヌ国際映画祭側がフランスの厳格な作品公開モデルを遵守し、Netflixの映画作品をフランスで劇場公開するようにと要求したことを受けて、ノミネート作品を引き上げた。Netflixが出品を予定していた、アルフォンソ・キュアロンの最新作『ローマ』とポール・グリーングラスの連続殺人犯をめぐるドラマ映画『ノルウェイ』が、観たかったのなら手遅れだ。カンヌ国際映画祭のマルシェと呼ばれる、映画プロデューサーが自分たちの作品を配給会社に販売する小さいショッピングモールも、Netflixが分厚い小切手帳を手に姿を見せることを望むだろう。

6

カンヌ国際映画祭は出席できない友のために乾杯するだろうか

核協議問題には申し訳ないが、今週のイランに関するビッグニュースは、ジャファール・パナヒがカンヌ国際映画祭を出席できなさそうだということだ。パナヒはキャリアのほとんどを通じて、政府当局と厳しい闘いを続けてきた。最新作『Three Faces』を監督自ら紹介するのを妨げるために、彼の渡航が禁止されるのはほとんど確実だ。ロシア人映画監督のキリル・セレブレンニコフも、モスクワでの自宅軟禁という形で、同様の境遇に追い込まれている。彼の作品『Leto』(写真)は、パルムドールを争うためにノミネートされている。この2人の監督は、ある種の政府が、映画監督や芸術表現に相変わらずひどい敵意を持ち続けているという教訓を与えてくれる。

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7

スパイク・リーは、逃したパルムドールをついに手にすることができるのか

1989年、若きスパイク・リーは、カンヌ国際映画祭の審査委員長だったヴィム・ヴェンダースと審査員たちに激怒していた。彼の作品『ドゥ・ザ・ライト・シング』ではなく、スティーブン・ソダーバーグの『セックスと嘘とビデオテープ』にパルムドール賞を与えたからだ。「リーは野球のバットを持って路地で待ち伏せしてやると言ったんだ」とヴェンダースは語った。今回、リーは『BlacKkKlansman』を携えてカンヌに戻って来た。パルムドールに挑戦するのは、1991年の『ジャングル・フィーバー』以来のこと。本作が、ヴェンダースの新作ドキュメンタリーと同じ日に上映されるのは、ただの偶然だろうか?それとも、カンヌ映画祭はまた騒ぎを起こそうとしているのだろうか?

8

テリー・ギリアムは、『ドンキホーテを殺した男』を公開することができるのか

テリー・ギリアムが嵐や病気など制作現場を襲った史上最悪の運の中、コメディ映画『ドンキホーテを殺した男』をスペインで撮ろうという最初の試みを諦めてから18年がたった。やっと本作は、カンヌ映画祭のクロージング作品として公開される。最初の撮影でジョニー・デップと今は亡きジャン・ロシュフォールが演じる予定だった役は、アダム・ドライバーとジョナサン・プライスに代わった。しかし、障害がなかったわけではない。不満を抱えたプロデューサーの1人が土壇場で訴訟を起こし、映画祭の出品作から作品を外すように脅したのだ。幸いなことに、パリの裁判所はギリアムの味方をしたが、監督自身は健康問題が理由で映画祭からは遠ざかったままかもしれない。

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9

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は重大事件となり得るのか

映画祭の開催地、クロワゼット大通りに顔を見せるのはアート系作品だけではない。映画祭の合間に、あまり見かけないハリウッドの大作映画がポップコーンを散らかすために登場することもある。数年前は『BFG: ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』だったが、今年は『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』だ。『スター・ウォーズ』シリーズの作品が上映されるのは初めてではない。『クローンの攻撃』と『シスの復讐』は、カンヌ国際映画祭でプレミア上映された。もちろん、ハン・ソロと相棒のチューイがケッセル・ランを12パーセク以下で飛ばしても、彼らがパルムドールをミレニアム・ファルコンのトロフィー棚に加えられる見込みはない。なぜなら、コンペティション部門にノミネートされていないからだ。

10

ハーヴェイ・ワインスタインがいなくて寂しいと思われるのか

もちろん、それはない。しかし、失脚した映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタインの影響は、2018年のカンヌ国際映画祭に大きくのしかかるだろう。彼は30年にわたって、映画祭で活躍する策士の大物だった。加えて、マイケル・ムーアやクエンティン・タランティーノを含むパルムドール受賞監督たちの支持者でもあった。カンヌ国際映画祭でワインスタインが違法行為を行なったという報道は、組織委員たちが自分自身の姿を見直すことにつながった。カンヌ映画祭は、サンダンス映画祭に倣(なら)って、参加者のために「セクハラ電話相談サービス」を用意した。カンヌでは、作品を評価するのであって、芸術家自身の評価はしないという信念を守り抜く傾向がある(ウッディ・アレンとロマン・ポランスキーはカンヌのお気に入りだ)。ワインスタイン事件で、そうした態度を考え直すことになるだろうか。

『犬ヶ島』の公開を待っているなら……

映画, アニメーション

インタビュー:ウェス・アンダーソン

ウェス・アンダーソンは唯一無二の映画監督だ。スタイルの巨匠、風変わりのチャンピオン、特定の色彩をこよなく愛する人というイメージだろうか。最新作『犬ヶ島』は、『ファンタスティック Mr. FOX』に次ぐ2本目のアニメーション作品。日本を舞台に、犬のインフルエンザが発生後、島に追放されて来た犬たちの物語だ。アンダーソン作品に期待される視覚的な要素があり、その根底には寛容の大切さという強いテーマも流れている。そして、俳優ハ―ベイ・カイテルの吠え声も。ロンドンでの公開前にアンダーソンに電話インタビューを行った。アンダーソンはとても魅力的で、文学的表現や皮肉っぽい観察、そして思慮深さに満ちていた。 原文はこちら

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