伝統工芸の魅力を伝えた「CRAFT CROSSINGS in TOKYO」をレポート

テキスト:
Shiori Kotaki
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In association with 東京都伝統的工芸品月間推進協議会事務局

伝統工芸の普及を目的としたイベント『第34回 伝統的工芸品月間国民会議全国大会 東京大会(CRAFT CROSSINGS in TOKYO)』が、11月3日から6日にかけて東京 丸の内にて開催された。毎年、11月の伝統的工芸品月間に合わせて行なわれている一大イベントだ。34回目となった今回は、初めて東京を舞台にイベントが開催された。会場は、東京国際フォーラム、東京ビル TOKIA、JPタワー KITTE、丸ビルの4ヶ所。日本各地の職人が一堂に集い、各会場ごとにテーマを設けながら伝統工芸の魅力を伝えた。ここでは、最終日に足を運んだタイムアウト東京編集部が注目した工芸品や展示、催しをいくつかピックアップしながら、イベントの様子をレポートする。

東京国際フォーラム会場
東京国際フォーラムのホールB7には、全国の工芸品を見て、触って、購入することのできるマーケットが登場。職人や出展者らがブースに立っていたので、工芸品の背景や作り方、歴史などの貴重な話も聞くことができた。特に印象的だったのが、越前打刃物と堺打刃物の話だ。知識が薄い者からすると、どちらも立派な刃物で見た目以外に大きな違いが分からないが、堺打刃物は商品の90パーセントが料亭などの職人向け。越前打刃物は積極的に海外に進出し、カトラリーなども作っているのだそう。また、出刃包丁が始まりだった堺打刃物に比べ、越前打刃物は草刈り鎌からスタートしたという話も驚きであった。

越前打刃物
堺打刃物

そのほかにも、会場には東京の伝統工芸品と全国の伝統工芸品をあわせて約100の出店があり、活気あふれる空間となっていた。

細やかな手仕事が光る甲州手彫印章
気が遠くなるほどの針数によって生まれた輝きが美しい江戸刺繍
下書きをせず、いとも簡単に職人が文字を書いている姿が印象的だった江戸手描提灯
和製銀器の重厚な輝きで、抜群の存在感を放っていた東京銀器

東京銀器の商品は、クリエイターとコラボレーションした展示スペースにも登場した。

東京銀器とジュエリーとインテリアを扱うブランド『e.m.』のコラボ作品

ホールB5では、伝統工芸士による実演コーナーや、実際に工芸品を作ることのできる体験型ワークショップを開催。実演コーナーでは職人の技を間近で見ることができたので、これまた刺激的な空間となっていた。 

実演の様子
体験型ワークショップの様子

東京ビル TOKIA会場
東京ビル TOKIA会場では、「衣」「食」「住」「楽」の4つのコーナーを設置し、江戸後期の暮らしを表現した。なかでも興味深かったのが「住」のコーナー。特に、現代のリビングや玄関、寝室、書斎に伝統工芸品を取り入れたインテリアコーディネートの展示では伝統工芸品が現代のライフスタイルにナチュラルに溶け込む様子が伺え、「いつかはこんな粋な空間を持ちたい」と夢が膨らむばかりであった。

インテリアコーディネートの展示
「住」のコーナーでは、江戸商人の家も再現された
東京ビル TOKIAにも実演コーナーが登場
東京チンドン倶楽部の3人も会場に華を添えた

JPタワー KITTE会場
JPタワー KITTE会場では、伝統工芸の凄(すご)みに迫る実感ゾーンと、テクノロジーで技術を分解する科学ゾーンの2つに分け、職人が持つ高度な技を伝える展示が行われた。未来ゾーンに展示されていたウェアラブルセンサーは、関西大学と帝人が開発したもの。日本の伝統工芸である組紐(くみひも)の技術を用いたことで、「伸び縮み」「曲げ伸ばし」「ねじり」といった動きのセンシングを1本の紐で可能にしたのだという。組紐の結びの手法を利用したデザインも可愛らしく、ファッション性にも長けている。

職人の勘を科学の力で可視化することにチャレンジした科学ゾーン。例えば江戸甲冑(かっちゅう)は、約200個の鋲(びょう)と12種類の緒紐、約2120枚の小札、5種類の革を使って作られているのだという。それぞれの部品が分解された状態の江戸甲冑を見る機会はこれまでなかったので、新鮮な展示であった。

まさに丸の内が伝統工芸に染まった4日間。伝統工芸が好きな人にとっては夢のような空間で、あまり馴染みがなかった人にとっては新しい出会いの場となったはずだ。伝統工芸品は年々製造が減少傾向にあり、現在も厳しい状況であるのは確かである。しかし、職人の技や商品に気軽に触れられるイベントは、若い世代が伝統工芸を知る良いきっかけにもなっていくだろう。次回の開催情報などについてはまだアナウンスされていないが、伝統工芸の素晴らしさを発信する同大会に今後も期待したい。

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