ハンドドリップで淹れた日本茶を提供する東京茶寮、三軒茶屋に誕生

テキスト:
Shiori Kotaki
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ここ数年、コーヒータウンと呼ばれるエリアまでもが登場し、大きな注目を集めているコーヒー。この盛り上がりによってコーヒーという飲み物は大きな脚光を浴び、我々にとって「美味しいコーヒーを簡単に、気軽に飲める」ということは当たり前のこととなった。しかし、2017年はこの流れが大きく変わるかもしれない。それは、ある店の登場によって今年は日本茶が注目されるのではないかという予感がしているからだ。その店とは、2017年1月、三軒茶屋駅南口から徒歩7分ほどのところにオープンした東京茶寮。ここは、なんとハンドドリップで淹れた日本茶を提供するという、なんともユニークな店なのだ。ハンドドリップで淹れた日本茶とは一体どのようような店なのか、タイムアウト東京編集部は実際に店を訪ねてハンドドリップで淹れられた日本茶を体験してきた。

あえて不要なものをそぎ落とした空間には、程よい緊張感が漂う。茶を淹れてくれるホスト、そして日本茶とじっくり向き合うには適した空間といえよう

茶室の新たな再構築をイメージしたというシンプルで洗練された空間で嗜めるメニューは、7種類の茶葉のなかから2つ好みのものを選んで飲み比べられる『飲み比べセット』(菓子付き/1,300円)のみ。メニュー表には、それぞれの茶葉の特色が簡単に分かるよう、甘みから渋み(上から下)、香りから旨味(左から右)と記された分布図の上に茶葉名が置かれているので、日本茶にあまり馴染みがない人でも、問題なく好みの日本茶を選ぶことが可能だ。

タイムアウト東京編集部が訪ねた際に用意されていた茶葉は、ほとんどがシングルオリジンで産地は静岡県、福岡県、鹿児島県の3県であった。この日は、『はるもえぎ』、『宵の七曜星』、『やぶきた やめ』の3種類をチョイス(通常は1人2種類まで)。そしていざ、コーヒーショップで聞き慣れたハンドドリップという方法で日本茶を淹れてもらった。

使用されているドリップ器具は、日本茶を専用に淹れるものとして独自に開発したものだという。日本茶を入れる際には、蒸らすという行為がとても大切になるため、茶葉の上に湯を注いでからベストな蒸らし時間とされる1分20秒間、そのままの状態でキープできるような構造となっているそうだ。湯を注いだ瞬間は、一番茶葉の良い香りを感じることができるので、心を落ち着かせて茶葉とじっくり向き合ってみてほしい。

湯を注いでから1分20秒後、一煎目となる日本茶が我々の目の前にやってきた。まず驚いたのは、茶の色や茶葉の開き方などが、3種類それぞれにまったく異なるということ。そして、もちろん味わいも完全に別物であった。 

左から、現在はごくわずかしか生産されていないという貴重な『はるもえぎ』。その味わいを和栗にたとえられるほど、強い甘みが特徴の煎茶だ。柔らかい甘さが舌に残るのが印象的であった。そして、真ん中の『宵の七曜星』は、このなかで唯一の浅蒸し茶だ。浅蒸しの茶葉は、茶葉本来が持つ味わいが強まると言われており、ほかと比べて茶葉自体も大きい。また、味わいはすっきりとしていて、硬めの紅茶のようである。最後に一番右の『やぶきた やめ』は、一番スタンダードな日本茶。旨味が強いのが特徴で、我々が一番慣れ親しんでいる味だ。そのせいか、このなかで一番ほっとできる味わいであった。

70℃で入れられた一煎目に続いて、次は80℃の湯で二煎目を淹れてくれた。湯の温度を上げることによってカフェインやカテキンが抽出されるため、いずれも一煎目より渋みが出ていた。また、色の違いも写真を見てもらえれば一目瞭然だろう。そして、最後の三煎目は茶葉の上に炒った玄米を乗せて玄米茶として提供された。より香りが感じられることや、違いが分かるという理由で最後は玄米茶が用いられているそうだ。日本茶の飲み比べは、同じ茶葉であるにもかかわらず、一煎目、二煎目、三煎目と、徐々に表情を変えていく日本茶を目や舌で楽しめるほか、2つの茶葉を飲み比べることによって、それぞれの違いも同時に楽しめるので、贅沢でとても面白い体験であった。 

また、1つ選ぶことのできる菓子は、ほうじ茶のブラマンジェや、抹茶餡やリンゴ餡のおはぎ、ドライフルーツを使用した羊羹のようなスイーツなど、いずれも和菓子に寄り過ぎていない独創的なものが用意されている。ハンドドリップで淹れるというユニークさやスタイリッシュな店内に加え、菓子も良い意味でかしこまり過ぎていないので、若い人や煎茶に馴染みがない人であっても親しみやすく、気軽に日本茶を楽しむことができるだろう。

『ドライフルーツ寄せ』は、ドライフルーツを用いた羊羹のようなスイーツ

先日、ふと訪ねてみた日本茶専門店の店主から「喫茶店に行っても、カフェに行っても日本茶って飲めないでしょ?だから私は、出かけたらお寿司屋さんに行って、卵でもつまみながらお茶を飲むの」なんて言葉を聞いたが、日本茶を気軽に楽しめる店が少ない現在、東京茶寮はきっと今年大きな注目を集めることだろう。ハンドドリップで淹れた日本茶を嗜むということは、日本茶を長年愛している人にとっても斬新な体験であると思うので、カフェや喫茶店、そして茶席とはまた違った時間の流れ方や空気感を体感するべく、少しでも興味を持った人はぜひ一度足を運んでみてほしい。

東京茶寮の詳しい情報はこちら  

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