カニエ新譜が聴けないから、作った。海外メディアが飛びついた痛快作

テキスト:
Time Out Tokyo Editors
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「好きなアーティストの新譜が聴けないなら、自分で作る」。京都に拠点を置く音楽プロデューサーであり、カニエ・ウエストの熱烈なファンのTOYOMUが、カニエ・ウェストの新アルバム『The Life of Pablo』の内容を妄想して制作した作品『印象III : なんとなく、パブロ』を『Bandcamp』からリリースしたところ、『FACT Magazine』や『Pitchfork』、『billboard』といった海外の有名音楽メディアがこれを取り上げ、大きな話題を呼んでいる。

カニエ・ウェストのこの新アルバムはリリース当初、ジェイ・Zが運営する定額制音楽配信サービス『TIDAL』から独占配信された。同サービスは、日本での対応が行なわれていないため、ファンたちは聴くことができなかったのである(しかし、4月初旬にカニエは方針を変え、範囲を広げたデジタルリリースを行っている)。この状況にフラストレーションを覚えたTOYOMUは、各収録曲のサンプリングソースを『WhoSampled』で、歌詞のテキストデータを『Genius』で、といった具合にフリーのオンラインサービスを駆使して、想像オマージュアルバム『印象III : なんとなく、パブロ』を完成させてしまった。

歌やラップは音声読み上げソフトに歌詞を流し込み、音声データを作成したということだが、その着想から制作方法までのすべてが痛快で独創的である。素材をエディットするそのアルゴリズムは、TOYOMU自身に蓄積したカニエの音楽の解釈になるわけだ。まるで、3Dプリンターが物の所有のあり方自体が覆る未来を予言するように、この作品はテクノロジーやネットインフラによって音楽の楽しみ方や作品のあり方が一変する未来の青写真のようだ。ちなみに、『SoundCloud』に上がっている彼の最新作は宇多田ヒカルの『Sakura Drops』のリミックス。精力的に音楽活動を行っていく予定であるという彼の、今後の動向に注視したい。

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